「古民家に残る“暮らしの文化”」
vol. 7 2025-03-01 0
本日のテーマ:「古民家に残る“暮らしの文化”」
――――――――――――――――――
◆ 家のつくりに刻まれた文化の痕跡
私が古民家を研究する中で、最も面白いと感じたのは 「家そのものが文化を映し出している」 ということでした。
現代の住宅は、機能性やデザインの視点でつくられることが多いですが、昔の家には 「暮らしのあり方」や「人々の関係性」 が空間のつくりそのものに組み込まれていました。
例えば、福富町の古民家では 「湯殿(ゆどの)」 と呼ばれる、建物本体から少し離れた場所に トイレと2畳ほどの小部屋 が設けられていました。
これは、昔の家が 田の字型の造りでふすま続きになっていたため、室内にプライバシーがなかったことに起因しています。
湯殿は、夫婦の関係を築くための特別な空間 でもあり、夜になると男性が女性のもとへ訪れ、
その関係が婚姻へとつながる、今では考えられないような奥ゆかしい文化の名残を感じました。
また、客間の横の外部には 「手水鉢(ちょうじゅばち)」 と呼ばれる水鉢が置かれ、
来客が手を清めてから家に入る習慣がありました。
これは、茶道の精神に由来すると考えられ、単なる手洗いではなく、「身を低くし、心を整え、場を大切にする」 という日本文化が住宅の中に自然と息づいていたことを示しています。
――――――――――――――――――
◆ 土間に見る、環境との調和
もう一つ、私が強く感銘を受けたのは 土間の存在 です。
現代の家では、玄関からすぐに室内へ上がる構造が一般的ですが、昔の家では 「土間が家の中まで続く」 という造りが多く見られました。
近年になって、コンクリートで固めたものも多くみられますが、かつての土間は 「三和土(たたき)」 と呼ばれる工法でつくられていました。
これは 赤土に石灰やにがりを混ぜ、しっかりと叩き固めたもの で、湿気を調整しながら、埃が舞うのを防ぐ役割を持っていました。
この 地域の素材を活かした技術 が、当時の暮らしを支えていたことを考えると、
環境と調和しながら生きるという視点は、現代の建築にも活かせるのではないかと感じます。
さらに、土間が 「内と外を緩やかにつなぐ空間」 になっていたことも魅力的でした。
単なる作業場ではなく、人が自然と集まり、日常と非日常をつなぐ場所 でもあったのです。
――――――――――――――――――
◆ 「ハレ」と「ケ」が織りなす暮らしのリズム
古民家の空間には、日本人が大切にしてきた 「ハレ」と「ケ」の概念 が息づいていました。
例えば、南向きの縁側や玄関は 「ハレ」の空間。
ここは来客を迎えたり、特別な行事が行われる、開かれた場として機能していました。
一方で、家の奥には 「ケ」の空間 があり、台所や炊事場、寝室など、家族が日常生活を送る場所として位置づけられていました。
このように、家の中に 「ハレ:明るい部分」と「ケ:暗い部分」が計算されてつくられている のは、自然の光をうまく取り入れながら、生活のリズムを調整する知恵の一つだったのだと思います。
また、家全体が グラデーションのようにパブリックとプライベートを分けていた ことも印象的でした。
現代の住宅では「リビングはパブリック」「寝室はプライベート」と明確に分けられますが、古民家では 地域全体が家の一部のように繋がっていた のです。
それが、昔の 共同体意識 を生み出していたのかもしれません。
――――――――――――――――――
◆ 未来につなげる、古民家の知恵
こうした古民家のつくりを学ぶ中で、私は 家は単なる「住むための箱」ではない と強く感じました。
そこには、暮らしの文化 や 環境との調和、
そして 人と人の関係性を育むための工夫 が詰まっています。
今の時代に合う形で、こうした知恵を活かしながら、
地域の魅力を守り、新たな価値を生み出すことができたら と考えています。
――――――――――――――――――
現在の進捗
・支援金額:571,000円(57%達成)
・支援者数:48人
・終了まであと25日
このクラウドファンディングが、
「田舎との関わり方の選択肢」を広げるきっかけになれば嬉しいです。
――――――――――――――――――
昔の家に刻まれた暮らしの知恵は、今の私たちの暮らしにも生かせるヒントに満ちている。
さとまる不動産では、そんな価値を未来へとつなげる取り組みを進めていきます。