応援コメントが到着しました!⑭
vol. 18 2025-01-04 0
おかげさまで目標達成しましたが、クラウドファンディングは引き続き実施中ですので、応援コメントも続きます。
今回は、浜松市にある⽊下惠介記念館 戴 周杰(たい しゅうき)さんからいただきました。
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『異⼈たち』に会いに⾏った、5⽉のある午後
初めて静岡シネ・ギャラリーに映画を観に⾏ったのは、今年5⽉のある午後でした。アンドリュー・ヘイ監督の『異⼈たち』(2023年)という作品です。私が住んでいる浜松にも、ミニシアターの「シネマイーラ」やシネコンの「TOHOシネマズ浜松」など、複数の映画館が街中に点在しているので、普段はそちらで映画を観ています。『異⼈たち』がなぜか浜松街中の映画館では上映されなかったため、静岡市まで⾜を運ぶことになりました。
『異⼈たち』をどうしても観たかった理由は、原作の⼭⽥太⼀のためでした。ちょうどこの作品が⽇本で公開されたタイミングで、私は『ユリイカ』という⽂芸誌から依頼を受け、2023年に他界した脚本家・⼭⽥太⼀を記念する特集号に、彼とその師匠である⽊下惠介監督との関係について寄稿することになっていたのです。⼭⽥太⼀は、⽊下組の助監督として松⽵⼤船撮影所時代から修業を積み、その後、⽊下惠介と共にテレビドラマ業界に転⾝しました。脚本家としての才能を⽊下惠介に認められ、「⽊下惠介劇場」や「⽊下惠介アワー」などで脚本を担当し、独⽴後は『異⼈たちの夏』を発表し、彼の代表作の1つとして挙げられています。
コロナ禍の真っただ中の2020年4⽉、私は浜松に就職しました。「緊急事態宣⾔」や「まん延防⽌等重点措置」が繰り返され、県境を越えることが難しい⽇々が続いていました。その中で、静岡市へのちょっとした出かけが、気分転換の旅⾏のように感じられました。シネ・ギャラリーの存在は浜松に来る前から知っていましたが、物理的な距離や職場の勤務形態のため、気に⼊った作品が上映されている期間に間に合わないことが多く、実際に劇場を訪れる回数は少なかったのです。
しかし、シネ・ギャラリーは物理的には遠いかもしれませんが、⼼理的にはかなり近い存在です。⽊下惠介記念館も、シネ・ギャラリーも、全国のミニシアターや映像⽂化施設を⽀援する⽬的で設⽴された「コミュニティシネマセンター」の正会員であるため、毎年開催される「全国コミュニティシネマ会議」では、副⽀配⼈の川⼝さんとお会いしたり、また、当館の定例上映会のチラシを届けに⾏った際に、同じく副⽀配⼈の海野さんとお話ししたりして、そんな先輩⽅とのひとときは、私にとってとても幸せな時間でした。
デジタル時代の到来により、映画鑑賞の⼿段は私たちが思っていた以上に急速に進化しています。いつでも、どこでも、誰でも簡単に映画を観られる時代において、わざわざ映画館に⾜を運ぶ意義は何でしょうか。私はその疑問に常に悩まされてきました。 シネマイーラは152席の劇場を持ち、⽐較するとシネ・ギャラリーはかなり⼩さい劇場です。しかし、その分、観客との距離が近くなり、映画を観るという体験がより親密に感じられます。
『異⼈たち』を観た際の記憶は、時間が経つにつれて細部は薄れていきましたが、その⼩さなシアターで隣の隣(の隣?)に座っていた男性が、映画の中盤から終盤にかけてずっと泣いていた光景は、なぜか鮮明に思い出します。彼はおそらく静かに泣こうとしていたのでしょうが、そのしなやかで揺るぎない泣き声からは、彼⾃⾝のライフストーリーが垣間⾒えたような気がしました。 また、前の斜めの席に座っていた⼥性から、⽢い花の⾹りが漂ってきて、それが時々私を映画の世界と現実世界を繋げてくれました。その⾹りが⼀体その⼥性からだったのか、それとも作中の主⼈公からだったのか、もう分からなくなりました。
周りの観客の感情(または感覚)と共有できた瞬間、この⼩さな真っ暗の空間にいる私は、ようやくその悩まされていた疑問が解消されたような気がしました。
⽊下惠介記念館 担当キュレーター戴 周杰(たい しゅうき)
【施設情報】⽊下惠介記念館
住所/静岡県浜松市中央区栄町3−1
TEL/053-457-3450 営業時間/9:00~17:00
定休日/月曜(月曜が祝日の場合は翌日)、年末年始(12/29~1/3)、メンテナンス休館日公式サイト…https://keisukemuseum.org/
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⽊下惠介記念館の戴さんは爽やかで明るく(しかも、中国北京電影学院広告監督専攻卒の超インテリ)、お話しすると元気をもらえるような気がします。
「今度、何か一緒にやりたいですね」と話していたところでしたので、新しいプロジェクターを使って何か実現できるといいなと考えています。