技術監督・黒太剛亮『王子小劇場の思い出⑦〜パーライトって何の略編〜』照明図面つき
vol. 45 2020-04-23 0
いつもお世話になっております。
花まる学習会王子小劇場、技術監督の黒太剛亮です。
仕事でやることないので、今まであんまり時間が無くて出来なかったことをのんびり出来ています。パンを手ごねで焼くのは割とずっと趣味みたいな感じでやってたんですが、最近は娘の離乳食用に食パンを焼いてます。あとやってみたかったうどんの手打ちも遂に手を出しました。料理は楽しいですね。元々ブラックな働き方をしている業種ですけど、これを期に働き方改革起きたりしないかなぁと思ってしまいました。
(いつもどおりですが、図面が見づらかったらこちらからpdfで見てみてください。クラウドファウンディングが終わったら多分消します。)
・2018年7月 中高生演劇サマースクール2018 集中コース発表公演『#真夏の共演者』
【画像/201807サマースクール2018こみ】
黒猿は僕(=旦那)がプランナーで、小見波(=奥さん)がオペレーター、というチームです。照明家にも色んな職能というか、得意不得意があります。僕は本番に付くのが苦手なんですよね。なんとなく年取れば取るほどそうなってきてるんですが、どんなに面白いお芝居でも、飽きちゃうんです。あと毎日同じ劇場に行くのもちょっと苦手だったり…。でも毎週稽古を見て図面を描き続けるのは得意です。というか照明の仕事の中で一番好きなのが打ち合わせと図面を描く作業です。反対に小見波は何度も同じ本番を見ながら、その日の違いを楽しんだりしているみたいです。
本来サマースクールは劇場の自主事業なので職員以外がスタッフで入ってるのはアレなんですが、小見波はサマースクール卒業生なので劇場とも縁深い人だったのでお願いして特別にオペレーターをやらせてもらっていました。
普段はプランナーをやりたいなんて絶対言わない小見波が突然この時はやりたいと言い出したのでびっくりしました。國井さえさんと話してやる気になったそうです。やらせてみたいと思ってたのに絶対嫌がるんだよなぁ…って考えていたころだったので本当に助かりました。今のところ、小見波がプランを描いたのはこれが最初で最後です。
舞台の使い方は例年通りの前後二面舞台。Backとか色物の仕込みがほぼ必ず対になって補色になっていたりして面白いですね。DotzParの仕込みとか、いっぱいスリングでバトン仮設してるとことか、この頃僕がよくやってたこともいっぱい描かれてて何を見てたのか、どういうのが綺麗だと思ってるのかよくわかっていいですね。
全然関係ないんですけど、主催事業の仕込みのたびに必ず機材NGが出るのはなぜなんでしょうね…。この時はソースフォーjr.のシャッターが動かなくなって深夜に分解する羽目になりました。うちの劇場の機材達ももうだいぶ古いのですが、劇場に入るスタッフの皆さん!おかしいなと思ったら報告してくださると助かります…!なんとなく誤魔化して使うことも多々あると思うのですが、そのまま放置して手遅れになると本当に面倒だし、お金も掛かるので…。このコラムに書いてどこまで届くのか全然分からないんですが、何卒、よろしく、お願いいたします。
・2019年2月 perrot『月に瞳のあこがれて』
【画像/20190218_perrot_LightingPlot_吊】
【画像/20190218_perrot_LightingPlot_置】
【画像/201902月に瞳のあこがれてエレベーション】
今回も美術家愛知康子さんのエレベーション付きです。すごいなぁ。そしてこれがちゃんとこの通り舞台に上がってくるのがすごいなぁと思います。美術がかっこいいとこっちもテンション上がりますよね。照らしがいがあります。
高い台組と低いエリアで向かいあって立つ、という構図が多かったので、台組に立つ役者さんのBack明かりをお客さんは横から見る、という図が多い作品でした。明かりを背負って立つというのはかっこいいですよね。美術の高低差も相まってとても効果的に使えました。DotzParを使いまわしできる台上からのBackとして仕込んだんですが、夜明けの表現までそれで出来たりして、楽しかったなぁ。
この作品はキャラクターに色設定があって、もちろん照明にも反映していました。メインになっているキャラクターの色味でシーンを作ってたんですが、日時の設定と色がごっちゃになるのは大変だったもののなんか王道のジャンプ漫画みたいで楽しかったですね。
そういえば、写実で作るか、抽象で作るか、という枠組みの中にアニメっぽい、とか映画っぽい、とかディズニーっぽい、という枕詞をつけて考えていることがあります。これは完全にアニメっぽい写実でしたね。現実、写実では絶対にありえないけど、そう信じてもらう写実のような明かりと言えばいいんでしょうか。
この舞台の形、僕は王子に入ると割とよくやるんですが、毎回前明かりの角度は悩みますね。吊りの距離感は前回のロデオと同じですが前回はバトン吊り、今回はギャラリーの手すり吊りですね。位置の違いとしては1mもないんですけど、全然違うんです。(なんかこの休館してる期間中にそういう実験的なデータとってみようかな…)この時は作品のイメージから出来る限り顔をフラットに取りたかったんですが、そうすると反対側からは眩しくなっちゃうんですよね。多少の眩しさには目をつぶった上で、それを少しでも軽減させるためにRosco119(拡散用のフィルター)を入れたのでした。
そして、全シーンで使ったわけではないんですけど、顔を取るためにずっと同じ前明かりを使い続けてしまうことになるのを防ぐのと、何ならそのシーンの美術的なイメージも込みで床にフットでハーフミラー電球を仕込みました。
LHQを仕込むより眩しくないし可愛くて良かったです。
・2019年7月 中高生演劇サマースクール2019 集中コース発表公演『#こうきょうがく』
【画像/20190726_SummerSchool_LightingPlot】
講師が池亀さんから笠浦さんに変わりました。本当は小見波にプランナー続投してもらおうと思ってたんですが、6月に娘が産まれたばかりだったので泣く泣く諦めました。笠浦さんと小見波は普段から仲も良いので是非タッグを組んでやってもらいたいですね。ちなみに娘は打ち上げに参加させてもらったりしました。娘がサマースクールに参加したりしたら親としては楽しいなぁ…。
地明かりの話。サイドの客席に対してはCLが無いですね。まぁこの投光距離でCL作ったらほぼTOPですけど。正面とバックのCLを落としとつなぎの2段作ってサイド面ではブッチにして、ギリギリの角度ですがFRでそのフォローをしている感じですね。台数の都合もありますが正面にはFRがありません。
ミラーボールが大きくなりましたね。今までは直径30cmで、この時から50cmのものになりました。しかも!今までは四角い鏡だったものが
丸鏡のミラーボールになりました!
丸鏡は最高ですね。まず見た目も可愛い。回ってなくても可愛いし、スタンバイで明かり点いてない状態で回ってる時も最高に可愛いです。しかもうちの子は丸鏡の隙間がラメみたいになってるので、回ってるミラーボール自体もキラキラしてて可愛いです。
DotzParを並べて仕込むのは好きです。そもそも見た目が割と一般灯体に近いので(点灯してなくてもミラーの都合レンズが白いのはしょうがないけど残念な点ですね)、その見た目で色が変わることが出来るのがまず便利だし、それが並んでキラキラ色が変わるのはとても好きです。
客電がフレネルですね!こだわりの客電ふたたび。いやもうこればっかりはホントにニッチな好みな気がしてるんですけど、いいですよね!バンチだとやっぱりサイズが大きすぎるし、バンドアはいまいち閉まりきらなかったりするし。
図面で下の方にある登山朝陽って明かりが好きでした。全部横玉で割と一点集中みたいなシュートだったと思います。全然関係ないですけどパーライト(PAR)がParabolic(パラボリック) Aluminum(アルミニウム) Refrector(リフレクター)の略だって知った時あまりのかっこよさに感動しましたね。ちなみに皆さん一番好きな見た目の灯体は何ですか?僕はやっぱりソースフォーかなぁ…。アクセサリがいっぱいあって変形マシンみたいなところも男子の心をくすぐりますよね。
そういえば図面にはボックスの中にスモークマシンが入ってるんですけど、実際には仕込みませんでした。打ち合わせ段階の案だったので書いてはあります。講師が変わって1年目だったのでこちらも試行錯誤しながら仕込みました。普段やみ・あがりシアターはやってるものの、なかなか同じようにスムーズにはいかないものですね。
このコラムでたまーに話題に出している娘っ子が、昨晩遂に立ち上がって2歩歩きました。早く一緒にお散歩したりできるようになるといいなぁ。
クラウドファンディングへのご協力を宜しくお願い致します。
花まる学習会王子小劇場 技術監督 黒太剛亮