技術監督・黒太剛亮『王子小劇場の思い出⑥〜美術図面!ありがとう編〜』照明図面つき
vol. 40 2020-04-18 0
いつもお世話になっております。
花まる学習会王子小劇場、技術監督の黒太剛亮です。
伊坂くんから、伊坂くんのお友達の歯医者さんがコラム面白いって言ってるよって教えてもらいました。歯医者さんありがとうございます。あなたのおかげで頑張れます。実は親知らずが一本残っているので、コロナが落ち着いたら行きたいです。
振り返りが2018年までやってきました。2017年の終わりに入籍して、2018年に結婚式を挙げたので現場数は減ったのですがその分プライベートの状況が大きく変わった年でした。ちなみに、最近僕のチームの黒猿に新しく入った緒方くんは2018年、佐野さんは2017年にどちらも王子小劇場で出会っています。今は育休中ですが、奥さんに出会ったのもこの劇場なので、もしかしたらうちは縁結び劇場なのかもしれないですね。
それでは今日も始めますね。(いつもどおりですが、図面が見づらかったらこちらからpdfで見てみてください。クラウドファウンディングが終わったら多分消します。)
・2018年1月 kazakami『カザカミ』
【画像/201801 kazakami「カザカミ」】
まずあれですね、図面の書き方がガラッと変わりましたね。レイアウトというか。これは確か劇場に入った照明さんの書き方がこんな感じで、かっこよ!と思って真似し始めたやつです。色んな人の図面を見ることが出来るのは劇場勤めならではの良いとこですね。あと仕込み方やらなんやら。劇場管理なんて引退間際のジジイの仕事だって言われてた頃もあったようですけど、若いからこそ勉強できることもいっぱいあって楽しいなぁと思います。この仕事を引き継げる誰か、ずっと探してます!!
地明かりをDotzparにして、グラデーションしつつ色が変わる、みたいなことがしたかったやつです。灯体の向きを全部揃えないと素子のズレが若干出るので要注意ですが、綺麗に出来て嬉しかったなー。この現場のペロペロは自分で考えた(現場で悩みつつ入れて決めたので図面に残ってない)んですけど、ツアー帰りで見に来た奥さんに「力強いペロペロ」って言われて若干凹みました。あと直前に劇団晴天の「果ての踊り子」という作品を見たんですけど、LICKT-ERの阿部さんの明かりがとても綺麗だったのでそれも真似してました(職員の大石くんの劇団です。盆が2つもあってすごかった。よかったら写真貼って!)。
ということなので貼ります!(大石)
真似してたのはフィルターの切り貼りです。阿部さんはそういう工夫がホントに上手だよなぁ…。ブッチ2台で前から奥にグラデーションで色が変わるようにフィルターを切り貼りしたんですけど、それがまぁ綺麗だったのでした。ステンドグラスみたいな切り貼りはしょっちゅうやってたんですけど、グラデーションを作るってのはあんまり考えたことなかったんですよね。そういう繊細な、かわいい色使いをずーっと使い続けて、最後に持ってるミニパー全部を#W(ナマ/フィルターを入れないこと)でドーンって叩きつける、というプランです。結局ね、#Wが一番きれいだよね、っていう話を打ち合わせでしてましたね。
kazakamiの木村恵美子さんは元々面識はなかったんですけど、契約の時に話しかけていたり、稽古場で出演者が「王子でやるなら黒太さんにお願いしてみなよ!」と言ってくれたりしたそうで(依田玲奈さんありがとね!)発注して頂くことになりました。元々ずっとやってた照明さんがいたのに僕がやることになり、しかもその照明さんが舞監を担当する、という非常に緊張するパターンだったんですが、竹屋光浩さん、仲良くしてくれてありがとうございました。あ、それ以来今も仲良いですよ。
・2018年4月 room42『渦中の花』
【画像/201804 room42 「渦中の花」】
room42、団体さん自体は初めましてでしたが、作演出は劇場職員でもある牡丹茶房の烏丸さんでした。作品自体もかなり牡丹茶房色が強かったので、初めましてなんだかいつも通りなんだか、という感じでしたね。
烏丸さんの作品は(牡丹茶房でもそうなんですけど)1つの美術であっちゃこっちゃ場所が変わるのでどうしても仕込みが増えて大変です。エリア分けもいっぱいあるし、何もない空間に突然車を出現させたりしなくちゃいけないんですよね。なので仕込み図にもスペシャルの名称がいっぱいあります。芝居にもいろいろあるので、「このシーンはまぁ何でもいいから明かりが変わればいいよね」ってなることも多々あるんですが、烏丸さんのは物語の進行上その場所がちゃんとイメージ出来ないといけないだろうってことが多くて。そして狭いエリアでやってる1シーンがその後に繋がる重要なシーンだったりして手が抜けなかったりします。そして影の多そうな、耽美なシーンが多いので、例えば地明かりのTOPだけでなんとかする、みたいなことよりもついかっこいい明かりを作りたくなります。劇場の機材数とか、持込の予算とか、仕込み時間とか色んな兼ね合いがあります。力の見せ所ですね。主に持込の予算が膨らんでしまって怒られるんですけど。ごにょごにょ。
この時は舞台上に鳥居をモチーフにした柱のようなものが数本立っていたので、それをかわしながら灯体を仕込むのが大変でした。柱の中が家、みたいな設定の時に上空からの明かりで柱の上側が光ってしまったら家の中に見えないですもんね。それ以外にはスペシャルが多いくらいで(いつもの牡丹茶房だなぁ…)という気持ちなのですが、仕込み図にはシレっと書いてあるんですけどこの時はギャラリーに赤い電球を60個くらい仕込んだのが(うちの仕込み要員達が)大変でした。割とギリギリで図面も書いてたので赤い電球を発注する、なんてのも間に合わず現場で元々持ってたクリア電球をひたすら赤マッキーで塗らせてました。その所為でうちの倉庫からは赤く塗られてしまった電球がいまだに出てきます。
・2018年6月 perrot『雲をたぐって天まで飛ばそう』
【画像/201806 perrot「雲をたぐって天まで飛ばそう」吊】
【画像/201806 perrot「雲をたぐって天まで飛ばそう」置】
【画像/「雲をたぐって天まで飛ばそう」エレベーション】
ついに、僕のコラムで美術さんのエレベーションを公開です!!!スーパー美術家愛知康子氏です!!!(ご本人に掲載の許可はもらっています)こうやって絵が描けるのは羨ましいですね。照明も、描こうと思えば描けるけど(手書きで描いてらっしゃる人もPCで描いてる人もいるんですけど)、そもそも僕は全然絵が上手ではないんですよね…。やすこの美術は大好きです。あと本人もとても好き。仲良くさせてもらってる美術家さんは何人かいるんですけど、美術打ち合わせに同席までさせてもらえる人はあんまり多くありません。そういえばこの美術打ち合わせの時には箱のサイズはもっとデカい方が楽しい!って言った気がします。実際大きくなりました。照明のことまで考えてくれたり、美術のことも一緒に考えさせてくれるのは本当に楽しい時間です。
この美術で目立つのはやっぱり浮いてる仕掛けの箱なんでしょうけど、僕が楽しかったのはストリングカーテンと文字パネルですね。あ、箱ももちろん楽しかったですよ。ストリングカーテンは開いたり閉じたりすることで透過率が全然変わってしまうので遊びがいがあってよかったですね。紗幕みたいだったり、ホリ幕みたいだったりしました。文字パネル、これストリングカーテンのタッパ調整と、上下まで一本モノのレールにするために存在してたんだと思うんですけど、これが楽しかったですねぇー。普段小劇場ばっかりやってるとあんまり文字幕って遭遇しないんですよね。見せたい灯体と見せたくない灯体がデザイン次第でちゃんと選べるのはとても楽しいし、明かりの幅が広がりますね。
この図面、実はクロムモリブデンの「たまには海が泳げ!」の照明をめちゃくちゃオマージュしてます。こちらは劇場職員としてお会いしましたが、床田さんはとてもいい人だったし、仕込み見てて面白いなぁと思ってたところで活動休止のことを聞いて、オマージュしてみようと思いました。僕なりの、アレです。まぁ仕込みとしてはっきり似てるのは床置きのLHQくらいなんですけど。前明かりの色の組み合わせ方とか、やったことない使い方だったので明かり作るの楽しかったです。
なんか今回パクった話ばっかりですね。一度いいなーって思ったものを同じ形で使ってみて、ひっくり返してみて、別のお気に入りと組み合わせてみて、だんだんと自分の武器にしていくのは楽しいことです。
最近、寝かしつけがうまく出来ています。抱っこで寝付くところまではうまく出来ていたんですけど、どうしても背中スイッチが反応してしまって…。ですがここのところ置くところまで出来るようになってきました。もし仕事が続いていたら寝かしつけは出来るようになっていなかったかもしれないです。劇場にいると大体22時までが仕事なので帰ってくる頃には寝ちゃってたでしょうから。そう思うと(それだけじゃないですけど、)複雑な気持ちになります。
いろんな人にいろんな形でお金はやっぱり必要です。クラウドファンディングのご協力をどうぞよろしくお願いします。
ではでは、また次回。あと2回くらいで終わりそうです。
花まる学習会王子小劇場 技術監督 黒太剛亮