烏丸② 「佐藤佐吉演劇祭マスコットキャラ『しばいむ』が出来るまで」
vol. 38 2020-04-16 0
こんにちは、劇場職員の烏丸棗です。
皆様、彼を覚えていますでしょうか。
佐藤佐吉演劇祭マスコットキャラ『しばいむ』のことを。
演劇祭が延期となり、しばいむは劇場の冷凍庫にてラップに包まれコールドスリープ状態に入りました。カッチカチです。また元気で柔らかな姿で皆さんとお会いできることを彼も願っているでしょう……。
というわけで、今回はしばいむが演劇祭マスコットキャラとして誕生するまでの話しをしたいと思います。
演劇祭を開催するにあたって、我々劇場職員は毎回様々な企画を考案します。演劇祭をより盛り上げるためのイベントを皆でホワイトボードを囲みながら一生懸命に考えるのです。
そんな中、誰が言ったのかも覚えていないのですが「マスコットキャラとかいたらいいよね」という意見が出ました。その意見はとくに却下されることもなく、しかし特に大切にされることもなくホワイトボードの隅っこに残り続け、私と守利さんが担当をすることに。
そう、私は言うなればしばいむの生みの親、しばいむの母なのです。
劇場のデザイン担当である守利さんはともかく、何故私がマスコットキャラの担当になったのか。実は私は劇場で使用する簡単なイラストをよく描いているのです。劇場の色んな企画でちょくちょく使われている職員の似顔絵なんかも、私が描いております。そんなわけで今回も、守利さんと力を合わせて私がマスコットキャラのイラストを描くことになったのでした。
他の企画よりもかなりゆるく転がり出したマスコット企画。それでもやるからには素敵なマスコットキャラを作ろうと私たちは話し合いました。
「どうする?」
「何か宇宙っぽく……」
「に〇いろジーンの〇―ンちゃん的なのはどう?イラストだけじゃなくて人形を作ってさ」
「出演団体にインタビューしたり、王子の街を歩いたりね」
世の中に存在する数多のゆるキャラたちの画像を調べながら生まれたのが、こちら。
〇アブダクションちゃん(仮)
〇うつろぶねちゃん(仮)
でした。可愛いですね。キャラクターは他にも色々作ったのですが(萌え萌えな女の子のキャラとかもいました)、特にアブダクションちゃんは有力候補で、それを象徴するかのように彼の顔には花まる学習会王子小劇場のロゴマークが刻み込まれています。職員会議でもアブダクションちゃんのデザインは好評、気に入った劇団を故郷の星へ拉致しがちという設定もややウケしました。しかし真面目にマスコットキャラを考える一方、私たちは“すぐふざけたくなる”という悪い癖を押さえきれずにいたのです……
〇しばいむの企画書
これが、しばいむの原型です。こちらの企画書を提出した時には皆が「???」となっていたのを覚えています。
「てかキャラクターとかいらんくない?職員がただスライム持ってたら面白くね?」
という思い付きだけで誕生したしばいむ。名前も芝居と掛かっているようで、あんまり掛かっていません。さらにこの頃のしばいむには顔の概念もなく、面白い劇団は捕食対象という尖った設定でした。私と守利さんは懸命にこのプロトタイプしばいむの面白みについて説明しましたが、「まあ、ちょっと面白いけどアブダクションちゃんが無難だよね……」という空気のまま結論を出さずにその日の会議は終了。最終的な決定は任せるね、と言いつつも皆アブダクションちゃんがマスコットキャラになるだろうと思っていたでしょう。
——しかし、マスコットキャラ担当者は、すでに結構しばいむを気に入っていました。
そして私たちは試行錯誤を繰り返し……
皆がそれぞれ担当している企画で忙しくなった頃に、しばいむはこっそりと演劇祭公式マスコットキャラとしてこの劇場に降臨したのでした……
「このキャラならイラスト担当必要ないやんけ」という野暮なことを言ってはいけません。イラストを描く必要がなくなったので、私は洗濯糊やら絵具やらを混ぜ合わせてせっせとしばいむを作りました。手違いで何度か牛の肝臓の如き失敗作も生み出しましたが、最後には無事可愛いマスコットキャラとしてしばいむは誕生し、この劇場事務所にやってきたのです。
しかし彼は、演劇が無いと生きていけない身。この大波乱の時期が終わるまでコールドスリープから目覚めることはできません。また元気いっぱいに劇団さんへインタビューをしたり、職員と遊べる日をしばいむも待っていることかと思います。その日までどうか皆さん、お元気で。クラウドファンディングへのご協力もまだまだお待ちしておりますので気に掛けていただけますと幸いです。それでは!烏丸棗でした。