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佐藤佐吉演劇祭2020中止・延期に際した支援プログラムをクラウドファンディングで実現!

佐藤佐吉演劇祭2020中止、延期に際し、
参加した若手劇団の未来を拓きたい

新型コロナウイルス感染拡大の状況を鑑み、「佐藤佐吉演劇祭2020」3週目以降の公演を中止、ならびに延期開催いたします。今回参加している若手劇団に対して、今回演目と次回公演に向けてのご支援を募ります!

FUNDED

このプロジェクトは、2020年4月30日23:59に終了しました。

コレクター
240
現在までに集まった金額
1,988,350
残り日数
0

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このプロジェクトは、2020年4月30日23:59に終了しました。

Presenter
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佐藤佐吉演劇祭は、東京都北区王子の「花まる学習会王子小劇場」を中心に、2年に1度開催している演劇祭です。本年度の『佐藤佐吉演劇祭2020』は、3会場、2020年2月18日(火)から3月31日(火)までの6週間に渡って開催予定でした。しかし2020年2月29日、新型コロナウイルス感染拡大の状況、日本政府からの要請や、なにより若手劇団のキャリアへの被害を第一に考え、演劇祭3週目以降の公演を中止、ならびに延期開催することに決定いたしました。詳しくは、こちらのステートメントをご参照くださいませ。https://en-geki.blogspot.com/2020/02/2020_29.html

「高田馬場で遭遇した変なおじさん」 〜王子小劇場と池亀三太〜

vol. 14 2020-03-23 0

ノンフィクション短編小説
「高田馬場で遭遇した変なおじさん」 〜王子小劇場と池亀三太〜

無理矢理押し上げられたまつ毛は決して滾る反骨精神の現れというわけではなかった。

2008年夏、高田馬場の劇場とも言えない小さな公演会場。
今は無きその公演会場の舞台袖で中途半端な女装をして開演を待っていた。
舞台袖にはなぜかベッドが置かれている。舞台セットの一部というわけではない。劇場入りをいたときからこのベッドは、ただでさえ狭い舞台袖の大部分を占めるようにして置いてあったのだ。
他にも暗闇に目を凝らせば、乱雑な洋服の山、食べかけの何か、コーヒーのあとがついたままのコップ、なくなりかけの大五郎4リットル、冷えた焼き芋、おじさん特有の匂い。
舞台袖で誰かが確実に生活をしている気配がある、そこはそんな異空間だった。


確かにそこで今朝まで誰かが寝ていた気配のするベッドに気を使い、身体を小さくして開演の合図を待っていた。
こうしていると、なんでこんな面倒くさいこと始めちゃったんだと演劇なんかを始めちゃったことそのものへの後悔が押し寄せてくる。

インターネットで募集した寄せ集めの初心者たちでぬるっと演劇を始めたが、たいして話題になるわけでもなく、お客さんの数が増えるわけでもなく、ただただ先の見えない暗いトンネルの中を無灯火で歩いているだけの感覚が2年以上も続いていた。
今回の公演も登場人物が女性3人の脚本を書いてはみたものの、キャストが女性2人しか集まらず、仕方なく自分自身が女性役として出演することになり、結果、開演1時間前に共演者の女性2人にビューラーなるものでまつ毛を無理矢理押し上げられゲラゲラと笑われるという屈辱を味わったのだった。

いつものように手応えもないまま終演し、パラパラとした寂しい拍手を背に見知らぬ誰かの生活の気配のする舞台袖へとはける。
達成感も充実感もないまま中途半端な女装を乱暴に剥ぎ取っていく。
共演者の女性2人は既に観客として呼んだバイト先の同僚や、学生時代の同級生なんかと楽しそうに談笑を始めている。さっきまで死んだような目でじーっと客席で押し黙っていた観客役の人たちが今は生気を取り戻しキャッキャッと共演者たちと話し込んでいることに無性に悲しくなった。しかし、そもそも共演者2人が知り合いを呼んでくれなかったら観客は0だったのだ。その事実に更に腹が立って、目の前の見知らぬ誰かのベッドを蹴り上げる。

そろそろ潮時だろうな。まあ、もともと演劇なんかやるつもりなかったし。

そこへ、受付スタッフの女の子がやってきて怯えた様子で声を掛けてきた。
「あのー、変なおじさんが挨拶したいって言ってるんですけど・・・」
僕が知っている「変なおじさん」は志村けんしかいないが、こんなところに本物の志村けんが来るはずはなく、受付の子の怯え具合からその変なおじさんは恐らく本物の変なおじさんのほうの変なおじさんなんだろうと察した。
嫌な予感しかしない。

あまりに無茶苦茶な演劇だったからクレーム的な何かなんだろうと覚悟をした。無茶苦茶であることは自覚をしていたが、とはいえどうすればその無茶苦茶さ加減を改善できるのか分からないので、分からないまま上演を続けるしかなかったのだ。
いつかちゃんとした大人に怒られるかもしれないと思っていたがそのいつかがきっと今日だったんだろう。ただ解せないのは、クレーム相手がちゃんとした大人ではなく変なおじさんであることだ。
一応、お客さんを「変なおじさん」呼ばわりしてしまった受付の子の名誉のために補足しておくと、その子はいわゆる「制作さん」と呼ばれる職業の方ではなく、出演者の1人が大学時代の後輩を強引に連れてきた「演劇って何?」な子で、その日遊び半分で来たらいきなり受付に立たされてしまった可哀想な子だった。
そんなただでさえ可哀想な子が変なおじさんに絡まれてしまう可哀想過ぎる事態に着替えも中途半端なままそそくさと受付のほうへと向かった。
受付の子がそっと指をさした先に、変なおじさんかどうかは分からないけど、確かに怪しいおじさんが立っていた。
受付の子が僕の耳元で「当日券で入って来たんですけど、やっぱり断ったほうがよかったですよね?ごめんなさい」と申し訳なさそうに謝る。
「こっちでなんとかするので大丈夫です」
そう言いつつ、なんとかってなんだよとも思いながらその怪しいおじさんの前に進み出た。

目の前に来てその怪しさの大部分を占める正体が、山に3年以上籠もってた以外の説明じゃなきゃ納得できないほどに立派に伸びた髭であることに気付いた。
大都会東京の、高田馬場という山手線の内側の地で、こんな仙人のような髭に出くわすなんて、受付の子も怯えるはずだ。
あと考えられることと言えば、もしかしたら舞台袖の住人かもしれないという可能性もある。それならいくつか納得はできるかもしれない。
意を決して恐る恐る声を掛ける。
「あのー、脚本と演出をしてました池亀です・・・」
すると、その怪しいおじさんは目の前にスッと名刺を差し出してきた。
仙人も名刺を持つ時代っ!と目を落とすと
『王子小劇場 芸術監督 玉山悟』の文字。
王子小劇場って、あの王子小劇場・・・?
『王子小劇場 芸術監督 玉山悟』を名乗る変なおじさんは少し早口で言った。

「うちの劇場で公演をやりませんか」

その後、僕は更なる路頭に迷い、ようやく王子小劇場での公演を実現できたのは2年後の2010年の夏だった。


(2010年7月上演「お肉体関係」@王子小劇場 チラシ画像)


(2010年7月上演「お肉体関係」@王子小劇場 舞台写真)

王子小劇場進出から更に2年後、佐藤佐吉演劇祭へと初参加させていただきました。


(初参加となった「佐藤佐吉演劇祭2012」 記者会見の様子)

2010年、完全に腐りまくって早々に夢破れて実家強制送還待ったなしであった僕をなんとか繋ぎ止めてくれたのが王子小劇場でした。
更に巡り巡って、2020年現在、王子小劇場の芸術監督を務めております。
人生なにがどう転ぶのか分からないですね。今でもたまに不思議な感覚になります。
今回の新型コロナウイルスの騒動だって数ヶ月前までは想像もしていませんでした。

劇場が劇場を利用していただいている団体と共に、この新型コロナウイルスとどう戦っていけるのか、まだまだ模索する日々が続いていますが、なんとか戦い抜いて次世代に繋ぎたいと強く思っています。


花まる学習会王子小劇場 芸術監督 池亀三太

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