『殺し屋シュウヘイ』のこと
vol. 8 2020-02-23 0
3月6日(金)、アップリンク吉祥寺での映画『サクリファイス』の公開まであと12日となりました。DCP制作(エンドクレジットを作り直しました)(時と共に増えて行った名前)(それは、この作品が確かに皆さんと共に歩んで来たのだという証でもあります)や劇場パンフレットの制作作業も佳境を迎え、いよいよ慌ただしくなって参りましたが、こうした作業も皆様のご支援があったからこそ出来ていることです。改めて感謝申し上げます。本当にありがとうございました。宿命のように最も困難な時期での公開となりそうですが、色んなことを冷静に見極めながら、一つ一つ乗り越えて行きたいと思っています。撮影の時からずっとそうしてきました。その先で皆さんに会いできる未来があるのなら、それは幸せです。引き続きどうぞよろしくお願い致します。
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さて、クラウドファンディングのリターン特典の一つとして、本日より自分が以前監督した短編映画『殺し屋シュウヘイ』の配信をスタート致しました。(全員ではなく恐縮なのですが)対象コレクターの皆様にはメールにてリンクを送らせて頂きましたので、宜しければ是非ご覧ください。
2015年の12月30日と、2016年の1月11日の二日間で撮影しました。ロケ地は静岡県富士市。『サクリファイス』でも撮影した場所が幾つか出てきます。脚本はメモ書き程度しかなく、(自分としてはめずらしく)「こんな物語が撮りたい!」というよりは「この場所で撮りたい!」という思いがまずあってスタートした映画でした。「この場所」は、『殺し屋シュウヘイ』でも『サクリファイス』でも撮影を担当してくださっている柗下仁美さんと、物語を探して歩いている時に見つけたのでした。その時撮った写真を昔のスマホから発掘したので、こちらに掲載します。
全てはこの6枚の写真から始まりました。
堤防、工場裏、橋の上、グラウンド、、、「とにかくここで何かが起こる!」「誰かが、、死ぬ、、!」そう言うと、柗下さんは笑って頷いてくれました。
主演は、最も信頼している女優の一人である矢﨑初音さんにお願いしました。『サクリファイス』では沙織という役を演じてくださっています。場所と同時に、彼女のクローズアップが撮りたくて撮った映画でもありました。彼女が「神様」について語り始めると、雲の切れ間からすっと光が差し込むのでした。そのことに特に驚きはありませんでした。矢﨑さんだったらそういうことも起こり得るだろうな、そう思えました。
深夜の撮影を終え「今日はこれにて終了です。寒い中遅くまで本当にすみませんでした」と僕が言うと、「え、寝れるんですか?嬉しいです!」と微笑みかけてくるようなタフさも兼ね備えている方です(それに甘えていてはダメなのですが、、、)。強くて、優しくて。これからもずっと彼女と映画がつくれますようにと、この作品を見返すたび僕は祈らずにはいられないのです。
共演者は全員、普段はお芝居をやっていない方々です。こうへいくん、五味くん、飯塚くん。あの頃いつも一緒に居た。今はどこで何をしているのかあまりよく知らない。物語の核となる工場の煙突も、先日取り壊されてしまいました。でも、全てはこの映画の中に残っています。それで良いと思えます。
スタッフは基本的に僕と柗下さんの二人。でも、時々五味くんの友人たちが手伝いに来てくれました。監督だけど自分もちょっと出演していて、その時はお芝居以外のこと全部任せるしかなくて。海のシーン。ふと、振り返ると、みんながいました。柗下さん五味くん飯塚くんといったいつものメンバーは勿論、トモくんやひとみさんや横内くんもいて。誰もが自分のお芝居をじっと見つめていました。笑ったりせず、真剣に。
その時のこと、今でも言葉にできません。
ああ、なんて。なんて、、、。そう思ったことだけを覚えています。
殺される役でした。殴られて、頭から血を流して、気持ち良く死にました。かけたくなかったけど自分でカットをかけて、目を開けるとすごく眩しくて、口に砂がたくさん入ってて、横内くんがお茶を持ってきてくれたからすすいで、五味くん(なぜかちょっと泣いている)が血のりを拭いてくれて。柗下さんと矢﨑さんは良かったね、良かったねと笑っていました。
そんな、映画です。
小さな物語ですが、あなたの宝物を見せてと言われたらいつだってポケットからこの物語を差し出します。