『理想の世界』と『Riso』とPaniyoloくん
vol. 8 2022-09-26 0
『理想の世界』の挿入歌として使わせてもらっている『家族の字』の作曲者であるギタリストPaniyolo(パニヨロ)くんが、作品のインスパイアドソングとして新曲『Riso』を書き下ろしてくれました。
パニくんとは僕が2013年に企画した野外映画上映イベント(お寺の敷地内で『川の底からこんにちは』を観るというドープな企画w)でライブをしてくれたことがきっかけで、今となっては10年来の付き合いです。映像作品もたくさん一緒に作ってきました。
今回の作品は、言葉を持たない莉央ちゃんの世界をありのままに見つめたい、という気持ちが強く、編集を始めた当初はBGMを一切入れないつもりでした。が、中盤にある知美さん(お母さん)のインタビューがとても重みのある言葉で語られていて、その張り詰めた空気の中から「もう一度歩きだそう」と前を向き直す時に、伴走してくれる音楽を必要としている自分に気づき、あまり迷うことなくこの曲にたどり着きました。
『家族の字』は2015年にリリースされたアルバム『たまのこと』に収録された1曲
映像作品におけるBGMというのは取扱厳重注意で、ややもすると音楽が持つエモーションに映像を従属させてしまいがちです。まったく同じ内容の映像でも、悲しい音楽を載せれば悲しく見えるし、恐ろしい音楽を載せれば恐ろしく見えてしまうものです。最近はみんなiPhoneで撮ったムービーを編集してSNSにアップしてるからわかると思います。音で映像が単純化されちゃう。
単純にする(≒わかりやすくする)ことが必ずしも悪いということではありませんが、白と黒の間にあるグレイな感情を描くことを目指している自分がBGMをつける時は、言葉では説明ができないエモーションを喚起される音楽を選ぶようにしているし、オリジナル楽曲を作ってもらう時もなるべく「悲しい」「楽しい」といった感情を表す形容詞を使わずに、世界観やニュアンスを伝えています。
この『家族の字』という曲も、どこか懐かしいような温かい包容力があるんだけど、永遠には続かないような寂しさ、シビアさも感じられる、つかみどころのない印象を受けます。感傷的になりすぎない俯瞰的視点がありつつ、深い部分では心にそっと寄り添うような、今作で自分がこころがけたスタンスにピッタリ合ったトーンを持っていると思ってます。というか、今作はこの曲に支えられて作り上げたといっても過言ではありません。
そんなわけで、完成した映像をパニくんに喜んでもらえた時は安心したし、パニくんならきっとこの作品から色々なことを感じ取ってくれるだろうと思ったので、「それをまた音楽で表現してくれませんか?」と僕からお願いさせてもらいでできあがったのがこの『Riso』という曲です。
クラウドファンディングのリターンとして、パニくんのライブつきの上映会があります。そこで奏でられる『家族の字』や『Riso』の音色のことを思うと、今から本当に楽しみです。忘れられない夜になることでしょう。
これは2013年に僕が撮影したパニくん(w/ アニーさん)のクリスマスライブ
次のコレクター限定アップデートでは、『Riso』のミュージックビデオについて書きたいと思います。