ホラーを作るということ
vol. 2 2018-01-23 0
「ホラーが好きだ」「怪談が好きだ」「オカルトが好きだ」というと、半分くらいの方が「へー」と言い、そのさらに半分の方が「自分もなんですよー」と最近のメジャーな作品を上げ、そのさらに半分くらいの方が割とマイナーなものまで含めて自分が好きな作品について語り始めます。
そして、ごく一部の方に「じゃあ、怖いのが好きなんだ?」と聞かれるのです。
違うんです。
いえ、好きなんだけどちょっと意味合いが違うんです。
怖いって大まかに三種類あるんですよ。
「びっくりする系(お化け屋敷型)」と「死に直結する系」と「正体不明」
心霊とかオカルトとか、ジャパニーズホラーの源流は「正体不明」の恐怖にあります。もちろん、世界各地にありますよね。都市伝説系とかもそうです。あれは、正体がわからないから怖い。正体がわからないと、自分がどんな目にあうかも(死ぬかも)わからないからなお怖い。
私が好きなのは、主にこちらです。
今回のアップデートは、「隣人」を書くきっかけになった話をしましょう。いや、きっかけは別にあるんですが、「隣人」という作品を書くにあたってのきっかけという意味です。
この作品は、実際に存在した事故物件を題材とした話です。いわゆる、心理的瑕疵物件というやつですね。インターネットもなかった昔々の話なので今ほど情報がいきわたらなかった当時、心理的瑕疵物件はよそから来た人には平気で貸し出されてました。私がこの話を聞いたのは、そんな時代の話です。
ある部屋に、女の霊が出る。そんな話を、不動産屋の社長がしていました。だけど、違約金を払わせて出ていった後は普通にクリーニングを入れてすぐにほかの人に貸す。「金の卵だ」と彼は言ってました。
その時に私が思ったことが、「隣人」の核となっています。
「なぜ、その霊はその部屋に出るのだろう」
「本当に出るとしたら、何が目的だろう」
「この社長、屑だな」
古来より、日本の怪談話や都市伝説には「怨み」が関わっています。
特に女性の怨みは神話の時代より人を脅かします。
何がそうさせるのか。
ただの怒りで、人はそこまで怨めるものなのか。
死してなお魂が残るほど。
それが何かの形となって現れるほど。
そこには他の何かがあるかもしれない。
信じていたからこそ。
愛していたからこそ。
想いが大きければ大きいほど、遺る何かも大きくなるのでは。
「隣人」は、事故物件に込められた感情に焦点を当てた作品です。
怖いだけのクリーチャーでは物足りない方。
是非、本当の「人の怖さ」を味わってみませんか?