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アップデート記事② UNITED誕生秘話
vol. 2 2022-12-26 0
みなさんこんにちは。野村康生です。
すっかり年の瀬で日本は大雪のニュースでいっぱいですね。ニューヨークも昨日マイナス12度を越す寒波がやってきていよいよ今年も厳しい寒さの季節がやって参りました。みなさんはどの様なクリスマスをお過ごしになられましたでしょうか。
ちょっと最近はコロナだけでなくインフルエンザとRSウィルスも流行してトリプルパンデミックとも言われているニューヨークですが、私も先週から体調を崩してしまいました。冬のこの時期は来春に向けた準備期間、無理せず滋養を高めて英気を養う時間にしないとですね。
アップデート記事②は「PION UNITED（パイオンユナイテッド）」について、その誕生秘話をご紹介します。
この構想を作ってくれたのは以前からプライベートやお仕事でも交流させてもらっていたクリエイティブ業界の方々が集まって立ち上げたSandS（サンズ）さんです。
2020年は前回のアップデート記事でも紹介しましたように太陽系の惑星配置がとても特別なタイミングで重なる年といわれており、色々と世界の流れが変わる年ということを星読みの達人たちはずっと語っていました。私も何かそうした共通意識の元で作品を生み出していたように思います。と同時に世界中でそうした一歩を踏み出す人たちが出てくるだろうと、色々な分野の動向をウォッチしていました。
作家としてひとつ代名詞となる作品を生み出せたという達成感の裏で、個展を終えて迎えた2021年は実はかなり苦しい時期のはじまりでした。実際に目に見える評価をニューヨークや米国で残せたか？と問われると突破できなかった課題の方が大部分を占めていて、2月には新たに構えていたスタジオスペースも閉めざるを得ない状況でした。渡米して作家活動するために取得したビザの期限は3年。勝負をかけて臨んだ個展でしたが最後の3年目をほぼ白紙の状態で迎えることになったのでした。
必要最低限の制作道具以外は全て一旦手放し、小さなアパートの片隅で毎日ノートパソコンに向かって今できる活動を何かしら見出しながら、モチベーションを保とうと足掻く日々が続きます。
ただそうした現実の課題以上に精神を消耗したのはやはりそのパイオンそのものが提示した未来への道、いわゆる人類の認知や新たな概念の獲得、歴史やカルマに挑戦するという道を宇宙空間に出ることで実現させていくというあまりにも大きなテーマを前に、当時の自分はただただ恐れ慄いて見えないプレッシャーに押し潰されそうになっていたのです。
この期間、たくさんの方ともオンラインを通じて新たに交流させてもらったり、旧知の友達と近況を報告しあうような時間をたくさん持つようにしていました。特に2020年を境にこれまでの方向性から新たな一歩を踏み出した方々には、同じ時空間の変化を捉えている者として声をかけて言ったのですが、その一つがSandSさんでした。彼らも2020年の5月頃にその活動を開始していました。
もともとはロフトワークというクリエイティブ・カンパニーに所属していた同世代のメンバーが中心となって、会社でしてきたような大きなクライアントワークでは扱えないけれど、個人的には面白いと思うような活動を展開するために作った合同会社ということで、以前から交流を持っていた彼らに
「宇宙時代のアーティスト像」について一緒に考えませんか？
というメッセージを投げかけたのです。NYに拠点を移すタイミングで、もちろんマーケット的な意味でNYに拠点を持つことのメリットは大きかったのですが、もっと違うアプローチでの作家活動を展開する方向性も模索していました。特に大規模なプロジェクトベースの作品を主体にしたときに、どういうシステムを構築することが、継続的エコな活動になるのかを考えた時期でもあります。
ひとつのロールモデルは数十年かけて大きなインスタレーションを手掛けていたクリスト＆ジャン・クロード夫妻の活動です。
彼からはそのプロジェクトにかかる巨額の費用を美術館や政府や企業などから一切の援助を受けることなく、プロジェクトの完成を予想したドローイングやコラージュ作品など、クリストの手によるオリジナル・アート作品の販売でまかなっていたというのは驚きです。
SandSメンバーとの対話を重ねながら、自分自身がどういうイメージを持って作家活動を展開し、宇宙時代にどういう世界観を持って活動を続けていくのか、そこで見出せる成長戦略はどういったものであるかを掘り下げていったのです。
野村康生をめぐる対談1／野村康生×高井勇輝「アーティストとコレクターについて」(2021年10月8日公開)
現代美術作家の戦略づくり〜アート、きっと、ユナイテッド〜（2021年10月13日公開）
2015年に東京大学のカブリIPMUでアーティスト・イン・レジデンスをした際に感じていたひとつに「一人の天才が時代を作る時代は終わった」ということがあります。この話の詳細はまた別の機会で綴ってみようと思いますが、現代科学はチームで行う研究が主です。たまに数学者のワイルズのようにたった一人でフェルマーの最終定理を解くといった夢のあるエピソードも出てきますが、科学全体の描像ではありません。IPMUは数学と物理学、天文学の精鋭が一つの建物の中で分野横断型の交流をしながら未解決の根源的な宇宙の問いに答えていこうという意欲を持って意図的に設計された研究機関で建築自体がそれを体現する構造になっています。
当時主任研究者でおられた数学の河野 俊丈先生に伺った印象的な言葉があります。それは数学もアートと似てとても創造的な営みだと思うのですが、定理や公式にある偉大な数学者の名前が冠されることがありますが、数学者はそうしたものを目指したりしないのですか？という私の卑属な質問に（というのもアーティストと名乗る人種のほぼほぼが自己承認欲求や自己顕示欲、歴史に名を刻むということに初期衝動を持っている人たちの世界だと感じていたので。）
「定理の名前には意味はありません。いずれアノニマス化するものだと思います。」
つまりピタゴラスが発見していなくてもピタゴラスの定理はいずれ別の者の手によって発見（数学では創造ではなく発見と表現する感覚だそうです）されていたであろうし、その定理の名前を知らなくても「X^2＋Y^2=Z^2」は誰でも使える真理。その先生のお言葉になんとも深い感銘を受けたのを覚えています。
PIONで自己と他者が重なり合い、お互いを殺しあわずにメタ的なアイデンティティを共創する、というイメージを結んだ時、私の中では先生のおっしゃった「アノニマス化」という言葉が強く想起されていました。
宇宙時代に世界をみんなが共創している感覚。高次元という視座から個と個を重ね合わせる感覚は、同時に誰でも無い、なにものでもない者としてのアイデンティティを持つこと。
アーティストという自我が溶解しアノニマス化していく宇宙時代のアーティスト像、そんなイメージをSandSさん達とワークを通じて見出していったのです。
彼らの公式サイトにPION UNITEDにまつわるnote記事が5回に渡って紹介されていますので、ぜひご覧になって下さい。
野村康生をめぐる対談2／SandSクロストーク「ユナイテッドという在り方、そして純粋三次元思考とは」（2022年2月7日公開）
『純粋三次元思考本』刊行記念トークイベントレポート（2022年10月23日公開）
そしてその結果、彼らは自費を投じて「純粋三次元思考本」なるムック本まで出版されました。
この内容や構成に私は一切関わっていません。まさに「純粋三次元」というPIONが提示した宇宙時代の考え方がアノニマス化してそれを捉える個々人の中で芽を出し花開いていく、そんな展開のはじまりの瞬間になる記念碑的書籍です。
アクティビティがプロジェクトを生み、そのプロジェクトが新たなムーブメントへと発展する。
これが今回のクラウドファンディングでも体現していきたいPION UNITEDの循環するイメージです。
そしてこのイメージはSandS監修のもと進めてきたもう一つのプロジェクト。
近日公開になります私の公式ホームページのフルリニューアルでも展開されています。
ぜひそちらにもご期待ください！
つづく