詩性
vol. 1 2021-04-17 0
手からビールの残り香のようなにおいがする。さっき除菌シートでデスクの埃を拭きとったせいだ。
窓の外で鳥が鳴いている。しかし1週間前くらいまで聞こえていたウグイスはぴたっと鳴きやんでしまった。季節の移ろうのを感じる。
『春琴抄 -ホワイトアウトする静謐-』の大阪公演の際に、天王寺の植木店で購入したサボテンはひさしぶりのつよい日差しを受けて生き生きとした碧色を僕にみせてくれる。
多肉植物を日光に透かすと、人間の手を透かしたときと同様に、中に管のようなものが通っていることがわかる。生命という装置だ。
次回公演『No. 1 Pure Pedigree』は、ぺぺぺの会のこれまでの研鑽の集大成です。
僕たちは結成以来、①観る-観られるの関係から脱すること、②ライブ(生)であることの追求、③遊ぶように演劇をつくること、の3つを標榜して演劇づくりをおこなってきました。
それで行き着いたのが「詩の演劇」です。
多くの人が上演台本をみて「これは詩だ!」とひと目でわかるようなテクストは、『夢の旧作』(2019/07-08)と、これから上演する『No. 1 Pure Pedigree』だと思います。でもどの作品にも詩性というものがきちんと具わっている。
では、その詩性とはいったい何なのか? を説明することは僕にはできない。詩性とは決して一義的なものではなくて、詩人ひとりひとりに多様に具わっているものだから。
その前提を踏まえたうえで、僕にとっての詩性をひと言で言い表してみると、「知覚する点の移ろいがもたらす断片の集積」です。
知覚という言葉は、五感を通して知り得た情報が知的に処理されることで覚えるもの、という意味で使用しています。
「知覚する点の移ろい」は「視点移動」と言ってしまえば単簡ではあるのですが、視覚に限定したくなかったため、知覚という言葉を選びました。
「点」は、日常に多く潜んでいます。〈僕〉も点だし、目の前にいる〈あなた〉も点です。
「最近つかれているなぁ。働き過ぎかなぁ」と〈僕〉を〈俯瞰する僕〉という存在も点です。鳥も点。サボテンも点。生命という装置、点。
これら知覚する点を移ろいながら断片を集積したものが詩性になり得る、と僕は考えています。
マサト ……なんだよ。
カイト やめるって本当か?
マサト 関係ないだろう。
カイト マサトはおそろしく本を読まない。ツトムが読んでいる本の題名だけをいつもチェックしていた。なぜ作家志望なのに本を読まないんだ?
マサト なぜ作家志望だと本を読まなければいけないんだ?
たとえばこちらはぺぺぺの会のさいしょの「ぺ」公演『一人称^自分』(2018/11)の上演台本からの抜粋。マサトとカイトが会話をしています。だけれども太字部分でカイトは唐突に「知覚する点」を移ろいます。
対象を俯瞰的に捉え、かつ、それがセリフとして発出されるのです。
また、『春琴抄 -ホワイトアウトする静謐-』(2021/03)では、
演者3 もしお師匠様に仕える機会を与えられなかったら、またもし何かにつけてお師匠様と同化しようとする狂おしい愛情がなかったなら、恐らく佐助は……「わたくしは平凡にこの世を去っていたのでしょう。」
演者3はあたりまえに演者3としてセリフを発するのですが、最後の鉤括弧中は佐助の知覚に移ろわなくてはなりません。
と、今日は詩性に焦点を絞って過去作品を振り返ってみました!
次からは作品ごとに、個別に振り返ってみるのもおもしろいかも。
(宮澤大和note:https://note.com/poppermy7/n/ne38b56766edb)
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ぺぺぺの会『No.1 Pure Pedigree』
【スケジュール】
5/1(土) 14:00/☆17:00/19:00
5/2(日) 14:00/☆17:00/19:00
5/3(月・祝) 14:00/19:00
5/4(火・祝) 14:00
※受付開始は、開演の30分前です。
☆の回は『春琴抄 -ホワイトアウトする静謐-』特別上演会です。2021年3月に上演した春琴抄を、No.1 Pure Pedigreeとセットでご観劇いただけます。
(14:00の『No.1 Pure Pedigree』の観劇後、同日の17:00の『春琴抄-ホワイトアウトする静謐-』をご観劇いただくか、17:00の『春琴抄-ホワイトアウトする静謐-』の観劇後、同日19:00の『No.1 Pure Pedigree』をご観劇いただけます。)
ご観劇の方は、『No.1 Pure Pedigree』とのセット券をご購入ください。
【会場】
北千住BUoY
Googleマップ: https://goo.gl/maps/3qZmb6BYVdVauWkg6
東京メトロ千代田線・日比谷線/JR常磐線/東武スカイツリーライン「北千住」駅出口1より徒歩6分、西口より徒歩8分
【チケット】
(予約・当日ともに)
一般・学生:3000円
高校生以下:無料(枚数限定)
春琴抄セット券:4500円
※春琴抄セット券は、同じ日の『No.1 Pure Pedigree』と『春琴抄 -ホワイトアウトする静謐-』がセットでご覧いただけるチケットです。
※現金またはPayPayでお支払いいただけます。
【作・演出】
宮澤大和
【出演】
石塚晴日
佐藤鈴奈
熊野美幸
(以上、ぺぺぺの会)
松浦みる(いいへんじ/青年団)
小澤南穂子(いいへんじ)
大矢紗瑛
谷川清夏
大木菜摘(魔法の竹馬ミナもやん)
梢栄(劇26.25団)
【詳細】
https://pepepepepe.amebaownd.com/posts/16275692
【公演詳細・感染症対策について】
感染症対策に最大限注意を払いながら、稽古・運営をして参ります。
詳しくは、こちらのページの下部をご覧ください。
https://pepepepepe.amebaownd.com/posts/16275692
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