#はらいその好きなところ(柳下恭平さん)
vol. 3 2020-06-16 0
はやいもので、クラウドファンディングもあと1週間。予想をはるかに上回る応援、本当にありがとうございます。
あと少しだけ応援してもらえればと思い、ファンのみなさんに#はらいその好きなところを、エッセイにして寄せてもらうシリーズをはじめました。
第二弾は、東京は神楽坂で、校閲会社「鷗来堂」と、書店「かもめブックス」を経営する柳下恭平さん。東京在住で、(平時は)首都圏-京阪神を行き来してはたらく柳下さん。忙しい出張の合間を縫って通うぐらい、はらいそsparkleのカレーが大好きなんです。
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望月ミネタロウさんが描いた『ちいさこべえ』という物語の中で、 僕が気に入っているセリフがあります。
それは、 「どんなに時代が変わっても人に大切なものは、人情と、意地だぜ。」 というもの。
読み返した時に首肯しきりの名文句。 身体の弱った先代が、 若くして大工の棟梁として立っていかなければいけない主人公に、 諭すように言うこのシーンが、僕はとても好きなんです。
登場人物はみんな頑固で損をしている連中ばかりで、 まったく、もう少し要領よく立ち回ればいいのにと、 じれったく感じてしまいます。
しかしそれでも、物語の冒頭のこの言葉が、 読むうちにじわりじわりと沁みてくる。 ああ、この世界で人情と意地を通すのは、なんてやっかいなんだろう!
話が変わるようで変わらなくて、やっぱり変わるんですが、 きちんと流行を受け止めてタピオカ屋を立ち上げて、 コロナの時期にそれをパッとマスク屋に切り替えた人たちを、 僕はすごいなって思っています。 それは商売人として正しい。
これは揶揄しているわけでなく、 別にタピオカ屋さんに人情や意地がないって話でもなく、 リサーチと資本の投入、それがビジネスだと思うからです。
ビジネスとは、きちんと管理された大人のやりかた。 大人は迷惑をかけないし、世界のほとんどを回している。
でも、ジョルくんのような、 人情と意地だけでその日を生きているような男は、 うまく言えないけれども、世界をよくしている気がするのです。
リサーチとか、回収とかを一切考えないオールイン。 伸るか反るかの裸の勝負。バカだなあ、愛せるなあ。
もう少し要領よくやればいいのにと思わなくもないけれど、 それができたら、あんなに手間をかけてカレーを作ってないだろうな。 ちょっと狂気すら感じてしまう、 知っている食材と知っているスパイスの、知らない組み合わせ。 それが食べられる世界は、きっといい世界。 それを囲む奴らが笑えるように、この世界はあってほしい。
だからジョルくんの友だちがみんな、 彼を応援している気持ちはわかるなあ。 みんなジョルくんのカレーが好きだもんね。
今は誰もが大変だけど、 このややこしい状況が収まったら、 また、肥後橋にカレーを食べに行こうと思います。
大阪でカレー屋さんをはしごして、 最後は肥後橋で飲んだり食べたりしよう。 はらいそスパークルは酒もアテもおいしいんだ。
どんなに時代が変わっても人に大切なものは、人情と、意地だぜ。
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柳下恭平 / Kyohei Yanashita
「鴎来堂」「かもめブックス」代表
1976年生まれ。さまざまな職種を経験、世界中を放浪したのちに、帰国後に出版社で働くことに。編集者から校閲者に転身する。28歳の時に校正・校閲を専門とする会社、株式会社鴎来堂(おうらいどう)を立ち上げる。2014年末には、神楽坂に書店「かもめブックス」を開店。ジョルのことが好き。