《音の森 - 隣る・隔たる・交差する》作品解説
vol. 8 2026-07-02 0
こんばんは、足立美緒です。
今日は、プロジェクトのメイン動画のBGMとしても使用している、本作の核とも言える作品《音の森 - 隣る・隔たる・交差する》について少し詳しくお話ししたいと思います。
この作品は2023年の展示では、ホールで16台ものスピーカーに囲まれた特別な空間で、ホールの豊かな残響とともにお楽しみいただきました。ホールの響きと静かで広い空間でお楽しみいただく作品でした。ホワイエで展示した《そして木となり、鳥となり、川となり、街となる》とは対照的に、フィールドレコーディングを編集して重ねたり楽器の音を加えたりすることで、「森や街の音を聴くための音楽」として作った作品です。
プロジェクトのメイン動画のBGMとして使用している楽曲も《音の森 - 隣る・隔たる・交差する》の一部です!
《音の森 - 隣る・隔たる・交差する》は4つの楽曲から構成されています。
I 森へ、街へ
II 夏・嵐・流れ
III 川のほとりの午後
IV 夜のこだま
総尺32分、流山の一日をストーリーのように感じられるような4曲です。「32分」と聞くと少し長く感じるかもしれません。しかし、2023年の展示でも私の想像を超えて多くの方が長い時間じっくりと聴いてくださいました。先日の「OTOTEN2026」でも、立体音響の心地よさから「時間が溶ける」という、ありがたいご感想もいただきました。(詳しくはこちらのアップデート記事もご覧ください!)。
忙しく、視覚の情報が溢れる現代だからこそ、目を閉じて「音」だけに没入する時間は、贅沢な体験になるのではないでしょうか。
アーカイブブックに掲載している解説とはまた少し違う角度で、(音源やアーカイブブックを入手くださる皆様にとってネタバレに気をつけつつ)4つの楽曲についてご紹介します。
I 森へ、街へ
微かな風の音から始まり、朝の森の賑わいが聴こえてきます。同時に街の活気ある音も聴こえてきます。ピアノと龍笛、そしてストリングスによる音楽が、流山の自然と街それぞれの生命の営みを表現しています。ピアノと龍笛の演奏は、それぞれパフォーマンスにも出演いただいていた大町和海さんと清田裕美子さんです。
演奏:大町和海(ピアノ) 清田裕美子(龍笛) 録音:高柳欽也(ピアノ)
II 夏・嵐・流れ
私が流山の「市野谷の森」を初めて訪れたのは真夏でした。ヒグラシをはじめとするセミや森の深い緑などの生命のエネルギーを感じる夏ですが、近年は猛暑や豪雨も猛威を奮っています。「流山」という地名は、上州(群馬県)の赤城山から洪水によって土砂が流されてきたという伝承に由来すると言われてます。蝉時雨から激しい雨へ、そして水の流れへと音楽がとめどなく続きます。(そしてもう一つある「流れ」の音を使っています。ぜひ耳を澄ませてみてください。)自然の恵みと脅威といった両面が繋がったものとして、そのエネルギーを体験できるような楽曲を目指しました。特に8chキューブでの体験がおすすめです。
III 川のほとりの午後
流山は発展する街とともに、静かで美しい里山があります。そしてその地域は川とともにあります。この楽曲は主に流山おおたかの森駅の隣、流山セントラルパーク駅の西側に広がる古間木(ふるまぎ)や野々下(ののした)といった畑と林の広がる地域をモデルにしています。この地域を流れる坂川の周辺は、車や人々が行き交う場所でもあり、生活と自然が隣り合っています。その午後から日が暮れるまでを実際に過ごした体験をもとに、ピアノを中心とした静かな楽曲を作りました。主にこの地域で録音できた、特徴のある野鳥の声も聴こえます。他にも、流山市北部の利根運河周辺もまたのどかで美しく、アートブックではその風景写真もご覧いただけます。
演奏:大町和海(ピアノ) 録音:高柳欽也 音源提供:越山布美佳(口笛)
IV 夜のこだま
市野谷の森で朝から夜まで録音を行った日、日が暮れるにつれて、樹上に棲むアオマツムシの声が急激に音量を増していく時間に出会いました。森全体が響いているような様子は、人を寄せ付けない夜の森の神秘を感じさせます。遠くを走る電車の音や人々の気配も、昼とは違って聴こえます。森の闇の脅威と知られざる生命の世界を、打楽器を中心にした楽器の音も使って表現しました。森や草地の昆虫は、それぞれ様々にいて、名前がわからない種類も多いのですが、フィールドレコーディングを通してその多様さを実感しました。これは是非《そして木となり、鳥となり、川となり、街となる》フィールドレコーディング集でもご体験ください。
音源提供:清田裕美子(鞨鼓) 野川菜つみ(打楽器) 音源協力:音・音
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この『音の森』をお持ちのイヤホン・ヘッドホンでそのまま立体音響として楽しめる「HPLバイノーラル」でリターンにお付けしています。特別な機材は必要ありません。ぜひ流山の一日を皆様の生活の中でご体験ください。
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