「過疎」という言葉の生まれた街・島根県益田市に映画館を復活させ、
広い世界への入り口を作りたい！

【クラウドファンディング終了まで残り10日】

配信をご覧になってくださった方、応援コメントをくださった方、本当にありがとうございました。本当は2分くらいの動画にまとめて皆さんに見ていただこうと思っていたのですが、YouTubeの配信は12時間以上続けるとアーカイブに残らないという事を終わった後に知りました…楽しみにしてくださっていた方、申し訳ございません。せめてもの想いでその時の様子を文で伝えていこうと思います。

当日は隠岐の島から親友の拓也が応援に駆け付けてくれました。拓也が益田に降り立ったのは13時過ぎ。配信開始まで時間があったので映画館に直行するのもなと思い、街のお店を紹介しながら駅前のお寿司屋「みのり」さんに入りました。お会計の時に店員さんに映画館のチラシを渡したら凄く喜んでくださって、メラメラと気合いを貰いました。

折角なので、益田にある美術館・グラントワにも足を運んで、月に一度映画の上映会を行っている小ホールを見せてもらい、企画展「河井寬次郎と島根の民藝」にまで行きました。ここまではただの小旅行。これから地獄が待ち構えているのを知っている僕は、拓也が楽しげにしているのを見てちょっとほくそ笑んでいました。

16時には小野沢シネマに向かい、今日の一連の業務を伝えると拓也は言った「本気で言ってるのかい…？」拓也が言うのは至極真っ当なのだ。まず霧吹きで座席をビショビショにする、そこでリンサークリーナーという機械(リサと命名)を使って、水気を吸い取る事により、布の中に溜まった埃を吸い出すという作業。24時間は1440分。丁寧にやるとひとつの座席で20分はかかる。そのペースだと72席、二人合わせても144席しか終わらない計算なのだ。

全席を掃除するには、ひと席15分以内に終わらせなければならない。拓也は小野沢シネマを見回して「夫婦でやる規模のプロジェクトじゃないってー！！」と叫んだ。まさしくその通りなのである。僕ら夫婦は馬鹿なのだ。

そうこう言ってる間に配信の時間が来てしまった。とにかく一列やってみよう！と最速を目指して頑張った。だけど、かかった時間は1時間30分。霧吹きをしまくってリサに全体重をかけて座席に押し付ける。リサの吸い込み音がデカすぎて会話すらままならない。映像では大変さが伝わらないが、おじさん二人のお掃除風景がずっと配信されているというシュールな図が生まれた。二列目に差し掛かってひ弱な僕らの右手は既にイカれてくる。「お前マジふざけんなよー！！」って拓也が言い僕は爆笑していた。拓也には悪いけどこの苦労を乗り越えた先には、どんなドラマが待っているのだろうかとワクワクしていた。

開始から2時間、お友達の詩織さんが差し入れを持ってやってきてくれた。女神だ…僕たちには神々しく見えた。僕は差し入れ以外、食べちゃいけないという新ルールを加えており、うまい棒の差し入れが唯一の食べ物だった。そこに唐揚げを持ってきてくれたのだ。感謝で胸いっぱいになった。詩織さんは「一座席だけ掃除させて！」とやってくれたのだが一瞬で表情を曇らせた。それがまた面白さを醸し出していた。詩織さんが帰り、それから深夜12時まで僕と拓也の二人きりの作業が続いた。僕たちの脳裏には過った「このまま二人だけで朝を迎えるのだろう…」と。

「面白そうだから手伝うよ！」という物好きがいるのではないかとどこかで期待していたが、その期待は見事に崩れ落ちた。拓也との間に暗雲とした時間が流れていた。その時、扉は開かれた。グラントワの職員の福間さん、そして浜田市の映画好きの大学生ミツキが手伝いに来てくれたのだ。なんともドラマチックな展開だ。ミツキは電車で来たのでもう帰れないと言う。「小野沢シネマ！一泊！」という水曜どうでしょうのテロップが浮かんだ。福間さんにしばらく手伝って頂いた後は3人での作業に変わった。

正直に書くと、廃業して13年経った映画館でやる事は膨大である。何人来てもらっても困るという事は決してない状況。優先順位を考え今しか出来ないことをミツキには頼んだ。彼女の丁寧な仕事ぶりを是非見て頂きたい。映画への愛が確かにそこにはあった。ミツキは「和田さんを見てると自分は映画好きとか言えない」と言っていたが、僕はそうは思わない。映画のために、映画館のために、ここまで動いてくれるミツキは間違いなく映画好きだ。

そして午前3時、僕と拓也の手は真っ赤になっていた。拓也に関しては赤黒く変色していた。10時間以上作業を続けた僕らは力尽きて寝た。そしてただただ僕のだらしなく寝ている姿が生配信された。もう僕に捨てるものはなにもない。

2時間ほど仮眠をして作業を再開。残り七列。終わりが見えてきた。ミツキは15時までしかいられない。出来れば3人でゴールを迎えたい。俺と拓也は15時までに終わらせようと燃えた。無我夢中で頑張った。全身から悲鳴が上がり、手がもげそうだった。でもミツキがいてくれたお陰で不思議と辛くなかった。いろんな人の顔が浮かんだ。頑張れって声がどこからともなく聞こえてくる。ラスト一列。リサを座席に全力で押し付けたら遂にノズルが折れた。リサは24時間使われる代物ではない。折れたノズルをマスキングテープでぐるぐる巻きにして繋いでなんとか作業を続ける。そして15時ジャストに202座席を綺麗に出来たのだ。

16時には拓也は電車に乗って松江に戻らなければならない。ゆっくり話す間もなく、駅に向かう。そして案の定、僕が道を間違えた。駅まで走らなければ間に合わなくなった。24時間作業をさせて拓也を駅まで走らせている。それでも僕らは笑っている。最高の友人だ。拓也はギリギリで電車に乗り込み、別れを惜しむ間もなく電車は走り出した。なんと感謝を言えばいいのだろう。もしも拓也とミツキが困った時はいつでもリンサークリーナーを持って助けに行くよ。だから、大丈夫。この瞬間は永遠なんだ。拓也、ミツキ、本当にありがとう。これからも宜しく御願いします。

リンサークリーナーを貸してくれた益田タクシーの藤原さん、お菓子を差し入れてくれた方、ピザの配達をしてくださった和田店長、様子を見に来てくれた今井さん、本当にありがとうございました！！

クラウドファンディング終了まで残り僅か、最後の最後まで全力で駆け抜けます！！！！