【!終了まであと9日!】スタッフインタビュー / 録音+ミックス・イダン
vol. 8 2024-09-22 0
ご覧いただきありがとうございます!プロジェクト責任者のヘソです。クラウドファンディングも残すところあと9日。終了までたびたびお騒がせいたしますが、どうかお付き合いください。
改めてスタッフに話を聞くと「そんなこと思ってたんだ」という発見があります。これがとても面白くて病みつきなので、今回もスタッフインタビューをお届けさせてください!『オン・ア・ボート』の録音+ミックスを担当してくれたイダン メイソンに話を聞きました。
マイクを仕込むイダン・・・『オン・ア・ボート』の撮影現場にて
映像を作る時も見る時も、私にとって「音」は最も重要な要素です。
例えば殴り合いのシーンがあったとして、拳が頬に触れる音が「ピョコッ」であったら、どれだけ迫力あるヴィジュアルも可笑しく見えるでしょう。「ボコッ」と「ボゴッ」では殴る強さが違って感じられそうです。音の中身だけではなく距離や明瞭度も、シーンの意味を変えます。日常でも私たちは無意識に(そして意識的に)聞きたい音を選別して音量さえコントロールしているわけですから、音を録音し、選定し、調節することは、観客の主観をどの登場人物におくか(おかないか)さえ主導することだと思うんです。
そしてこれは『オン・ア・ボート』の中でたびたび起こることですが、「画面に映ってないもの」の存在を感じさせるのも音です。音によって空間の広がりやリアリティが生まれ、かつ物語自体も「描かれていないこと」への広がりを得ることができます。
『オン・ア・ボート』の撮影現場でも、私が最も頻繁に相談したのはイダンでした。イダンはとにかく言葉に嘘が無くて、アイデアを交換するのも一緒に悩み込むのも楽しい、素敵な人物です。
そんなイダンのインタビュー、はじまります!
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Q. 脚本の第一印象を教えてください!
初めて脚本を読んだ時、(その時点では)内容自体とは関係なく、ワクワクしました。というのも僕が読んだのは「英語翻訳版」だったのですが、読み進めていくにつれて翻訳が上手くいっていないと感じ始めたからです。(翻訳版の)脚本に描かれた内容はどこか意味を成していなくて(でも何が欠けているのか、すぐにはわからなくて)、幼い子どもが自分だけに「別バージョン」の物語を教えてくれているようで、ワクワクと可笑しさを感じました。読み終えるころには、(自分が読んだものとは)少し違う作品になるだろうなと思っていました。
やはり『オン・ア・ボート』のように、僕自身の育った文化とは違う、人間関係の抽象的な事柄を描く作品は「ニュアンス」が重要で、それを他言語に翻訳するのはとても難しいことなのです。でもオリジナルの日本語版を受け取って、僕の(日本人の)パートナーと要所要所を一緒に読んでいくと、点と点が繋がって物語を理解することができました。物語の重要な要素を、言葉や文化の壁を超えてどうにか理解したとき、僕はなんとしてもこのチームに参加したいと感じました。『オン・ア・ボート』が特別なのは、脚本が型にはまっていないところです。世の中の多くの脚本は「脚本の法則」にピッタリ当てはめようとしたものばかりですから。そんなことしないで、楽なやり方から抜け出せば、魔法は起きるのに!
Q. どのシーンが一番大変でしたか?
ある長回しのショットで、具体的には(ネタバレになるかな・・・?)主人公の友人・鈴木えだまめが主人公夫婦の会話に割って入るシーンです。会話が屋外から始まり、我らがダン(撮影監督)の操るカメラが後退するのに合わせてえだまめが屋内に入ってきて、あるものを手にとるためにイマジナリーラインを超えて、再び屋外に近いドアまで戻って会話を続けるという流れです。ちなみにイマジナリーラインを超えるのは、本来映画では観客を混乱させるので避けるべきですが、『オン・ア・ボート』では物語の中の大きな「変化」を観客に直感的に理解させるためにこの手法が使われています。
このシーンが難しいのは、カメラが部屋を360度全て見せるという点です。ケーブル類が見えてはいけないのはもちろんのこと、えだまめ以外の足音や人が動く音は聞こえてはならないし、尚且つ会話は明瞭に録音しなければなりません。私たちはチームで、10分かけて解決方法を見つけ出しました。それは(・・・おそらく何も知らない人が見れば可笑しく感じるでしょうが)技術チームがシンクロしてある種のバレエを踊るように動く、というものでした。
Q. お気に入りのシーンは?
個人的なお気に入りは「大きな包丁」にまつわるもので、とんでもなく大きくてイヤな音が立つシーンです。このシーンは僕にとって史上最高の映画のひとつである「市民ケーン」を思い起こさせてくれます。「市民ケーン」も映画の終盤に、人間の馬鹿馬鹿しさ、暴力性、原始性を現すシーンがあります。それは本当に力強いシーンなのですが、ただ「音」があるばかりで「言葉」は何も語られません。感情的になった人物が立てる「音」の迫力だけが、シーンを決定付けるのです。
(多くのフィルムメーカーがそう感じるように)「市民ケーン」を見るたびに「自分もこのシーンの撮影現場に居られればよかったのに」と思いますし、もう少し現実的なところでは「こんな感じの原始的なアクションを撮る映画に参加したい」と感じてきましたが、『オン・ア・ボート』は(もちろん「市民ケーン」の破壊シーンほど狂ってはいないですが)この欲求を満たしてくれました。そして『オン・ア・ボート』チームはその才能で、この「いろんなことに気を配らなければならない」シーンを実現させてくれました。
Q. 『オン・ア・ボート』で一番の思い出は?
思い出は『オン・ア・ボート』に参加した仲間たちです。
全ては幸運な偶然です。うってつけの人たちが、それぞれの人生のうってつけの時に、うってつけの環境で出会ったんです。本当に素晴らしかった。僕はこんなことがまた自分の人生に起こるとは思えません。同じようなことを体験したフィルムメーカーならわかってくれるでしょう。力強いクルーがいて、皆がそれぞれの仕事をシンクロしながらこなして、お互いがしていることを理解し合っていて・・・そして自分たちには無限の可能性があると感じられて・・・そうすれば、僕たちは宇宙船を組み上げて月に飛ぶこともできるんです。
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最後の質問への答えが本当に感動的で・・・(涙)。 本当に、月まで飛んでいけるような「全能感」を感じられたのは『オン・ア・ボート』のチームが私にとって初めてでした。もしかすると多くの映画監督たちは学生時代にこんな体験をしているのかもしれません。でもイダンの言うように「人生のうってつけの時に」「うってつけの人たち」と出会えたからこそ、素晴らしい撮影現場と素晴らしい作品が完成したのだと思います。
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今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
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そして・・・クラファン終了まであと9日!!!!!!!
現在84%達成!!目標金額まであと少しです・・・!!!
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ヘソ