【活動紹介】浅野ひかりによるプレイベント
vol. 3 2022-02-07 0
おおみかアートプロジェクトのメインビジュアルにもなっている丸窓障子。今回の記事では、大みか町で初めて開催したアートイベントについて、詳しくご紹介していきます。
こちらは、浅野ひかり作《あの日見た景色》という借景を取り入れた立体作品で、2021年10月16日に開催した「第1回プレイベント」ではトラックに乗り、大みかの海岸を駆け巡るというゲリラパフォーマンスを披露しました。
突然の思い付き企画
昨年、私達は大みか町でのリサーチを続けると同時に、芸術祭の企画を説明しながら地域のプレイヤーも増やしてきました。その流れで、「アートプロジェクト」としての私たちの活動も具体化していきたいと思うようになり、芸術祭の開催に向けた実感も湧いてきました。
その時にはまだ多くの人を巻き込んでのイベントをいきなり企画できるほどの準備はありませんでしたが、地域の中にすでに協力者がいるということ、また、すでにメンバーの中に作家がいるということも強みとして活かせないかと考えていました。
そんな中、おおみかアートプロジェクトのメンバーの一人である浅野ひかりさんの作品の展示が取手市内で行われました。
展示の様子
取手市の「小堀の渡し」という場所で限定展示しています!作品のスケール感はこんな感じです〜 pic.twitter.com/lV7207nn5u
— 浅野ひかり (@aaasano00) September 12, 2021
この作品は解体が可能で、搬入時はバラバラのパーツをトラックに乗せて運び、現地で組み立てを行います。しかし、搬出する際には組み上がった作品をトラックの荷台にラッシングベルトで固定し、そのまま移動となりました。
そのとき、偶然にも、建具が街中を移動しているという、ちょっと不思議な光景が生まれていました。
作品をのせたトラックが走る 。この活動を予告なしに街中にアートが出現する「ゲリライベント」として、大みか町でやってみてはどうだろうか?
そんな突然の思い付きで、急遽企画が持ち上がりました。
その時の企画文がこちらです──
「地元のひとの中に何人かの協力者がみつかってきた今のタイミングで、大みかのひとたちと一緒に作るアートイベントの第一歩として、大みかのまち全体をフィールドとした1日かぎりのゲリライベントを企画します。
具体的には、浅野ひかりさんの作品「あの日見た景色」をお借りして、トラックで移動可能な形式に改変し、大みかの人達と作る新たなパフォーマンス作品として発表します。
大みか駅西口前の駐車場となっている土地には、現在許可なく建物を建設することはできませんが、トラックなら短期間滞在することができます。この駅前の駐車場を出発点に、今までの大みかの人たちとの会話のなかで見つけてきた「大みかマップ」の各地点を訪れて、風景を切り取ります。
大みかの人にとって日常的に見慣れた風景の中に見慣れないものが現れるという非日常を楽しんでもらうと同時に、島田さんたちにはゲリライベントを開催する協力者となることで、人々を巻き込むプレイヤーとしての楽しみも知ってもらいたい、そんな試みです。」
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いざ大みか町へ
浅野さんの協力もあり、企画が立ち上がった翌日には搬入の準備が始まり、1週間後の土曜日に決行することが決まりました。
島田さんにも今回の突然の企画にご協力いただき、ご自宅の庭で作品の設営を行わせていただきました。
こうして当日は住民に告知はしないまま、突然アートが大みかに出現したのです。
いつもの景色が非日常に
「走行場所が地域の人たちのコミュニケーションと共に、転々としていく感じ」
「借景を見るための装置でもありながら、地域の人たちとのコミュニケーションを誘発する」
この企画を説明したときに、浅野さんから出たイメージです。
トラックへの固定もワイヤーに変更し、目立ちにくくしました。おおみかアートプロジェクトのロゴを付けたトラックでいざ出発。
走行場所は、水木海岸〜久慈浜海岸や、古房地公園周辺や日立港など、海岸をメインに実施しました。
停車中、たまたま通りかかった大みか町の住民から「いつも見ている景色がアートを設置することで非日常に変わる」などの声も出て、その場で作品を通じたコミュニケーションもおきました。
浅野ひかりさんの作品「あの日見た景色」
河原子海岸〜日立港をフィールドにしたゲリライベント。見慣れた海岸を、借景として丸窓で切り取り新たな風景を作っていく試み。
通りがかった地元の人が口を挟んで、巡る場所や角度が決まる。作品をきっかけにコミュニケーションが生まれる瞬間を目撃した。 pic.twitter.com/Sx2kVGpYJz
— JUTARO (@sekiju13) October 16, 2021
作品はその後、島田さんの家に持ち帰り、そのまま庭で設置させていただくことが決まりました。現在も問題なく設置されています。
昨年10月から、地域のとある家の庭に設置させていただいていた作品の点検をしました。
防腐剤の効果ありで、ほぼ損傷なし!
これからの長期間の常設にも耐えられそうです。 #おおみかアートプロジェクト#星と海の芸術祭 pic.twitter.com/xMPfVo30Ab— おおみかアートプロジェクト【クラファン挑戦中】 (@HitachiOmika) February 6, 2022
作品解説
《あの日見た景色》(2021)
W2970×D2000×H2665(mm)
本作は障子のある丸窓から景色の一部を切り取り、その地域の特性や魅力をフォーカスするサイトスペシフィックな作品である。
遠くの美しい景色や寺院などの建造物を取り込んだ、「借景」という日本庭園の様式がある。この作品は移動式の借景であり、組み立て・解体を繰り返し行うことができる。特定の景色をフォーカスすることにより、背景として見えていた景色が一期一会の特別なものに変化したり、日常的に見えていた風景が非日常に変化することを狙いとしている。
浅野ひかり Hikari ASANO instagram
1996年 岩手県生まれ。アーティスト、デザイナー。
東京藝術大学美術学部 先端芸術表現科卒業。同大学院 GAP専攻在籍中。木材を用いて和室や建具などのインスタレーション作品を制作している。鑑賞者同士のコミュニケーションが生まれるような作品作りを目指している。平成藝術賞受賞。公益財団法人 富山文化財団奨学金 採択。小須戸ARTプロジェクト2021参加。