写真家の清家正信さんより、映画のコメントが届きました!
vol. 96 2015-04-11 0
小学生の時に僕はタイムマシーンに乗って太古の時代を旅し、そこで出会った女性に恋をした。
実はタイムマシーンという映画を先生に引率されて見に行っただけだが、僕の記憶装置の中ではそんなふうに体験として刻まれている。
夢もまた同じく体験した事は事実に違いなく、それは切なくはかなく怖く美しくなぜだか現実よりは生っぽい。
映画「ねぼけ」を見るために、その日僕は雨混じりの霞がかった明治神宮の参道を何かに呼ばれるような不思議な感覚で会場に向かっていた。
いい映画というものは見る前からいつもこんなふうに演出されているようでもあり、こちら側の思い入れなのかもはや何か始まってるなっと気配を感じるものだ。
案の定この映画はそんな現実から夢の世界、いやむしろあの世の世界へ誘われるように、壱岐さんだけの独特のトーンの世界からシーンは始まる。
僕は三語郎とともに、まさに此岸と彼岸を行き来するように、真海という海に支えられ行く先のあてもなく漂い続ける。
三語郎の涙と僕の涙と夢と現実が溶け合わう頃、映画は確かな体験をさせてくれ終わって行く。
外に出ると参道の夕闇の森に真海がやさしく微笑んだ。
壱岐さん、なんという映画を作ってくれたのだろうと、また涙ぐんだ。
/清家正信 (写真家)