濱口 竜介監督より「鳴滝」にコメントをいただきました!
vol. 9 2021-04-27 0
「鳴滝」をご支援いただきました皆様へ
深田晃司監督と共に全国の小規模映画館支援のためのクラウドファンディング「ミニシアター・エイド基金」を立ち上げられた濱口竜介監督よりコメントをいただきましたのでご紹介します。先に深田晃司監督からコメントをいただいておりましたが、「鳴滝」にとりましては大変力強い励みとなります。「鳴滝」のためにご支援いただいた皆様と、深田監督、濱口監督のお二人に心より感謝いたします。
「見るための時間・空間を限定されない映画配信は、これからの鑑賞体験の主流となる。そのことは明らかだとしても、それを映画館での鑑賞体験を駆逐するものと見做すのは早計だろう。都市部に上映が限られがちだった映画が、時空間の限定を飛び越えてあらゆる地域へと届くことは、映画と観客の思いもかけない邂逅の可能性を高め、映画ファンを増やしていくだろうし、そのことは時空間が限定された映画館での鑑賞体験のかけがえのなさを、かえって強調してくれるはずだ。今後重要なのはその相補性を認識し、そこで人々や経済が循環する回路を開くことだ。
ただ、配信サイトで人々を戸惑わせるのは、タイトル数の奔流だろう。それがかえって見る気を阻喪させるという事態もある。英語圏にはMUBIやクライテリオン・チャンネルという素晴らしいキュレーション・サイトがあり、鑑賞意欲を減衰させることなく好循環させてくれている。日本映画のクラシックの配信にも力を入れるという「鳴滝」もまたその役割を担えるのではないか。そんな予感がある。特に日本のスタジオ映画の卓越性は、若い世代や遠く離れた地域の人々を驚かせるに十分なものだ。地球の裏側で吉田喜重と出会う若者を思えば胸が震える。その中から必ず、また新たな作り手も生まれてくる。期待とともに「鳴滝」誕生を見届け、その行く末を見守りたい。」
濱口竜介(映画監督)
『ハッピーアワー』で第68回ロカルノ国際映画祭国際コンペ部門最優秀女優賞(田中幸恵、菊池葉月、三原麻衣子、川村りら)、芸術選奨新人賞、第25回日本映画批評家大賞選考委員特別賞を受賞。『寝ても覚めても』第71回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品。『スパイの妻〈劇場版〉』の脚本執筆に野原位、黒沢清と共に関わり、第94回キネマ旬報ベストテン脚本賞を受賞。2021年『偶然と想像』第71回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品、審査員グランプリを受賞。