全ての上映を終えました!
vol. 43 2023-11-25 0
11月24日、オープニング・レセプション(17日)があった街ペズナスで無事4回目(4館目)の上映を終えました。
4回の上映を振り返ります。19日に古都アルビで初日を迎えた後、22日はアレスという地方都市のシネコンで。
この日は日仏通訳が見つからず、英仏通訳のナタリーが来てくれました。それだけでもスリリングなのに、開始時刻5分前になってもお客様がゼロ。ディスカッションが飛んだら彼女に申し訳ない……と焦りながら待つこと数分。ようやくお客様の姿が見えたのは、なんと2分前でした。
毎日読む練習はしているものの、なかなか発音がうまくいかない仏語のスピーチは、1回目よりは伝わったかも……と会場の雰囲気から察せられました。
会場からの質問は、「空気と水の流れが大事というのはパーマカルチャーと同じだけど、矢野さんも影響を受けているの?」「私たちすぐできることは?」「いまはどんなプロジェクトに取り組んでいるの?」というものから、「製作費はどのくらい?」「彼は生きてるの?」という質問まで。とにかくたくさんの方から手が挙がり、日本だと時間を気にして締めそうなところを、誰も挙げなくなるまで待つところがとてもいいと思いました。劇場支配人も、「風の流れが大事、となんとなく思ってたけど、この映画で強く実感した。ポエティックでスピリチュアル。見えないものを見る姿勢がとても魅力的、杜人2を楽しみにしています」と。
終わった後、「凄くエネルギーを感じた。ムッシュウ矢野とあなたに。相乗効果で」と声をかけてくださった女性もいて、ああ、来た甲斐があった……と思いました。
終わってから車で滞在先に着いたのは深夜1時過ぎ。嫌な予感はしたものの、風邪をひいたらしく、翌朝は漢方薬とポロ葱とマッシュルームのスープを飲み、一日部屋で休んで、さらに解熱剤を飲んで、クレルモンレローでの上映に向かいました。
クレルモンレローは咲子さんの住む街、カネの隣町で、一番最初に上映を決めてくれた映画館。環境団体の方の協力もあるとかで、お客様が多いことを願って臨みました。
l
ひと足先に劇場に着いて待っててくださったのは、通訳のめいこさん。英仏の通訳さんは大変だったので顔を見ただけでホッとします。
そして、肝心のお客様は……。
こんな感じ。咲子さんと一緒に翻訳をしてくれたジュリーも来てくれて、心強い。
ところが、アフタートークでは、いきなり劇場支配人に「結局、何でこの映画を撮ったの?」と聞かれ、咄嗟に用意したスピーチを読むことも憚られ、「ムッシュウ矢野の自然を見る目、他の生きものと共存していくやり方を多くの人に伝えたくて」と答えたら、ディスカッションで「でも、この辺りは乾燥してて、とくに夏場は雨が降らないから、なかなか理解してもらえないんじゃない?」、「すっごく日本的なスピリットが詰まった映画だと思う。ヨーロッパではどうかな」などシニカル質問が相次ぎ、戸惑うというか、悲しくなりました。
それでも、最後に発言してくださった環境団体のオクシタニー州のプレジデントの方が「風土は異なっても彼がやっていることの本質は通底している。この数十年でどんなに昆虫や鳥が減ったか。私たちは彼らとの共存を本気で考えないと。たくさんのメッセージに溢れた映画」と仰ってくださって、ありがたかったです。
帰りがけに「感動した。ありがとう」と声をかけてくださる方も数人。環境団体の方と写真を撮って無事終了しました。この団体はフランス全土で活動していて、野鳥や昆虫、生物多様性を訴えていて、最近では近くの村で17本の木が伐られることに反対したそうです。
さて、いよいよ最終日。
体調は戻らないものの、ずっと部屋にいるのももったいないので、咲子さんに車で地中海を臨むセートという街に連れていってもらいました。
古い漁師町には、やっぱり猫がお似合い。暴風が吹き荒れる中、猫たちの集合住宅にあったかい気持ちになりました。
t
高台からの眺め。この十字架はたぶん海で亡くなった方のためのもの
さて、最終日の上映はペズナスの古い映画館で。ペズナス市には文化芸術の部署があって、一年中さまざまなイベントを企画しているそう。どの自治体にもあるわけではないけれど、この街はそれを大事にしているそうで、その部長さん(フレデリック)は上映前に夕飯をご馳走してくださいました。
体調のせいでたくさんは食べられないので、前菜も主菜も娘と半分ずつ。ワインもぐっと堪えて。
古い映画館には古い映写機が展示されていました
ここは200席を超える映画館。劇場にはすでにお客様が。
ふかふかの座面で半分眠りながら観て、いざ最後のスピーチ&ディスカッション。
少しずつ短くしながら練習した辿々しいスピーチを、みなさん真剣に聞いてくださって、フレデリックも「素晴らしい」と言ってくれて体調の悪さも忘れました。その後は好意的な質問が相次ぎ、肩の力がようやく抜けました。
「風水に彼は影響を受けているの?」という質問は2回目。風水が結構知られているのは発見でした。「他の国でも上映しているの?」という質問に「フランスが初めての国」と答えると、「もっと他の国でもやったほうがいい」と。
「私が一番感動したのは、彼がそこにある木の枝や石やブロックを全部使っていたこと」「大きな仕事をしてくれて、本当にありがとう。すごくインスピレーションを受けたし、感動した」「うちの庭で早速やってみたいと思う」など、環境、風土の違いを超えて伝わるものがあったこと、そして言語を超えて共感できたことが、しみじみ嬉しいフランスでの上映でした。
部屋に戻ると深夜0時半。これを書き終えて、いま3時半。明日、もとい今日夕方の飛行機で日本に戻ります。
2023.11.25 前田せつ子