南仏Albiという古都で「MORIBITO」初上映!
vol. 42 2023-11-22 0
11月15日に成田を発って、パリ経由でモンペリエ空港にやってきました。
迎えに来てくれたのは島内アゾラン咲子さんとパートナーのフレッド。公開して間もない去年の7月に南仏で上映したいと連絡をくださった方でした。
その時はまだ観てもいらっしゃらなくて、予告編とWEBサイトのみの情報でコンタクトを取ってくださったのですが、私も映画館対応や英語字幕作成に追われて、待ってもらうこと半年以上。今年になってからやり取りするようになり、フランス語字幕も自分で付け、フランスの文化庁(?)に配給資格まで申請し、それは大変な手続きを一つ一つ乗り越えて、ようやく今回の上映にこぎつけてくださったのでした。
最初に仏語訳が上がってきて感じたのは、なんとなくフランス語の方が英語より合っているんじゃないかということ。the Earth より la Terreという響きの方がしっくりきたこともあります。
この地域は日本を特別好きな方が多いらしく、昨年始まった「1週間日本オクシタニー祭」が今年は「2週間日本オクシタニー祭」になり、その一環として4つの劇場で上映してくださることに。もちろん、配給の咲子さんが頑張ってくださったおかげです。
16日は23日、24日の上映後トークの通訳をしてくださるめいこさんと打ち合わせ。パートナーのギー(彫刻家)が古い織物工場をリノベーション(すべてDIY!)したアトリエは凄すぎて、観て回るだけであっという間に時間が経過。1階はアーティストたちの貸しアトリエにしているそう。
この日、一緒に打ち合わせしたコリーヌは咲子さんも最近入った環境団体に所属していて、神宮外苑の再開発を真剣に心配してくれていました。フランスでは市民運動で様々なプロジェクトがストップすることが多いらしく、フランスから声をあげなくちゃ!と息巻く様子にとても励まされました。
日本祭のオープニングは17日。ペズナという街で市の文化担当者の方々と交流。
モンペリエで5万本の植樹(!)プロジェクトに関わっている彼曰く「市民が弱った木を心配して大丈夫なの? と聞いてくる。行政は市民の声があって動く」。さらには、「宮脇メソッドでやっているんだ!」と。
この夏、40℃近い暑さが続いたこの地域では雨が降らず、枯れかかっている植物に水をやるのも制限されていたとか。それにしても5万本の木をこれから植えるなんて! うらやましい気持ちとともに、「あきらめてはいけない」想いが猛然と湧き起こって来ました。
セレモニーの後は翻訳の最終チェックをしてくださったジュリーや広報宣伝を手伝ってくださったフローラン、ジェニーと食事。フィッシュマンズや園子温が好きと熱く語るフローランはお土産の出汁パックをとても喜んでくれました。
18日は咲子さんが主催するワークショップがあって再びペズナへ。土曜日の午前中はマルシェで人がいっぱい、食べものもいっぱい。時差ボケが吹っ飛ぶ嬉しさで、バゲットに生ハムを挟んで大満足。19日(初日!)の通訳を引き受けてくださったユウスケさん(在マルセイユ10年!)とも合流。
その後、車で2時間半の夕焼けドライブを経て中世の街並を残す古都Albiへ。
いよいよ19日、国外初上映の日を迎えました。
滞在先のサラスクの大家さん、和紙職人のブノワさんが刷ってくれたポスターはもちろん和紙。なんとも深い味わい、質感、色が魅力的で、なんと100年以上保つそう。
最初に来てくれたのは2017年にアイルランドに留学した時のクラスメート、ローラ。開始時刻まで15分を切ってからようやく何十人かのお客様が入ってくれました。中には友人の姪っ子、琳ちゃんが留学した時のホスト・マザーが総勢5人で来てくれて。
フランス語訳の『MORIBITO』を新鮮な気持ちで最後列で観て、終わるとすぐに監督挨拶。半分くらいの人は映画だけで帰ってしまいましたが、半分は残って、たどたどしいスピーチを静かに聞いてくださいました。
読むだけならなんとかなるかも、と思って予めフランス語訳をお願いしていたものの、学生時代に第二外国語でやって以来ほぼ40年ぶり。発音が難しすぎてたぶん半分くらいは理解してもらえなかった気がするものの、まあ、それはそれとして。
嬉しかったのは何人かの方が手を挙げて質問したり感想を述べたりしてくださったこと。
Q.矢野さんの講座はフランスでも開かれているのですか?
A. いいえ、まだです。是非、企画してください。
Q.この映画は世界(日本以外)で上映されているの?
A. これが初上映です!
Q.ムッシュウ矢野の環境再生の手法は日本政府に取り入れられていますか?
A. 国レベルではまだですが、自治体レベルでは興味を持ってくださるところも出てきています。
Q.映画をつくってくれてありがとう。著書はフランス語に翻訳されていますか?
A. まだなので、咲子に頼んでみてください。
Q.フランス国内のドキュメンタリー系の映画館でやったらいいと思う。他の国でも是非。
A. ありがとうございます。トライします。
中には「日本に行って、福聚寺や開かれている講座に行きたい!」といろいろメモして帰られた女性も。
お客様を送り出した後は、劇場スタッフのコリーヌさんが地元のワインをプレゼントしてくださいました。
ああ、なんとか終わった……。
映画になる過程でも本当にたくさんの方々の善意と協力とご支援で形になった『杜人』ですが、こうしてまた、たくさんの方々の「結」のおかげで『MORIBITO』になって、海を超えて羽ばたくことができました。
改めて「杜人プロジェクト」に関わってくださったおひとりおひとりに、感謝と敬意でいっぱいです。
ありがとうございます!!
(つづく)
2023.11.20 前田せつ子