メンバー竹内綾恵美が語るFoodCampの魅力と可能性
vol. 17 2020-02-27 0
こんにちは、FoodCampチームメンバーの竹内です。
実は、NOTE.comにて「なぜ、私が孫の手トラベルのFoodCampを推すか?」をこの数日間にわたり、綴っていました。最初はfacebookの個人的な投稿で終わっていたのですが、ある人のススメを受けて始めました。
最初はお客さんだった私が、なぜこれほどまでにFoodCampに熱くなるのか、不思議に思うかもしれません。FoodCampは、私のこれまでの人生とリンクする部分があり、かなり個人的なエピソードが満載ですが、それらがあったからこそFoodCampの価値や可能性を感じたのだと思います。
「最近、地元に帰っていないなぁ」とか、「何か地域のために関わりたいなぁ」と思うことがありましたら、共感していただけるのではないかと思います。稚拙な文章ですが、宜しくお願い致します。
<身近な人を幸せにしてくれたFoodCamp(最終話)>
NOTE.comマガジン~「なぜ、私が孫の手トラベルのFoodCampを推すか?」より~
§ 本気なのは、生産者だけじゃない
昨年は、より本格的にFoodCampのチームメンバーとして関わることになりました。Web制作や取材、当日の企画からサービスまで孫の手トラベルの社員のみなさんと一緒に、ああでもない、こうでもないと格闘する日々です。
生産者は、本当にいいものを作りたいと気骨のある人達ばかり。普段なら畑になんて近づかせません。そこをご協力いただけるように何度も通い、話をして、最終的に了解を得てくるのです。生産者が決まれば、次はシェフとのマッチング。これは生産者よりさらに難航を極めます。
回を重ねるたびに、店は小さいものの、これまた素晴らしいシェフがたくさんいることもわかってきました。しかし、多くの個店の場合、FoodCampに参加するには店を休まなければなりません。また自分たちでツアー客分の食器を準備することも大きな負担でした。それなりに従業員を抱え、大人数の対応に慣れているホテルであれば、ものともしません。自前で食器から何まで準備もできます。そういったこともあり、スタート当初は地元のホテルさんに大変お世話になりました。
そこで、それらの課題をクリアすべく食器も揃え、いよいよこれぞと思うシェフへアプローチを始めました。しかし、各回ごとに、しかも一人一人説明してお願いするには時間がかかり過ぎる。それを見兼ねたあるシェフが、料理人仲間に声をかけてFoodCampの説明会を開いてくれました。
こうして1つずつ1つずつ、周囲の人々に助けてもらいながら、課題をクリアしてきたのです。今では、シェフが生産者を推薦してくれたり、生産者があのシェフとやってみたいと自発的に希望を言ってくれるようになりました。
こうなったら、料理人も生産者も真剣勝負です。そんな緊張感が小気味良く、みんながベストを尽くそうという意気込がその「場」を作り上げるのだと思います。
そして、最も本気の人たち。それがFoodCampチームのメンバーです。ここはあえて、私は外部のスタッフとして少し客観的に語らせてください。
FoodCampの当日の設営に関わるようになってから知ったことですが、朝早くから現地へ赴き、テントを張り、ダイニングテーブルを設置し、企画の段取りを行います。お客様をお迎えし、料理をサーブし、そしてお見送りに後片付け。昼間のツアーですが、片付けがすべて終わるのは、だいたい午後7時過ぎ。体はクタクタだけど、誰一人文句を言うことも、不満気なそぶりもありません。ただ、ただ、今日のツアーはどうだったか。本当にお客様に満足いただけたか、生産者の魅力を伝えられたか、シェフの持ち味を活かせたか・・・etc. そんなことしか会話にならないのです。
私は、これまでどちらかといえば、モーレツ型社員でした。でも、私以上にみんなモーレツ。私は長時間労働にも耐えるだけの丈夫なモーレツタイプでしたが、FoodCampのメンバーは、心から楽しんで、結果的にモーレツになるタイプ。ここに嘘はありません。
自然相手のツアーですから、予測もしないアクシデントに見舞われることもあります。そんな時だって、笑顔です。昨年、鈴木農場さんで行った11月のFoodCampは冷たい雨が降り出し、突風が吹く厳しいコンディション。完全野外はやめて、代替え案である農業倉庫の軒下にダイニングを設けました。テントの横幕がダイレクトに風を受け、時々ずれそうになっても、「テントが歩いてきちゃいますね」と余裕の笑み。シェフの繊細でフェアリーな世界観を壊すまいと、機転を利かせる振る舞いです。
また別の現場では、行き違いでダイニングの設営場所が変わっても、それならそうと、当初の案よりよくなるかも?くらいに前向きな気持ちで対処します。もちろん、うまくいかない事もあります。でも下を向かない。下を向いている暇なんてないのです。とにかく、みんなが同じ方向を向いていること。それがとても素晴らしいチームだと思っています。
§ FoodCampを本にしたい!
感動屋の私は、いつも取材にいっては、感極まって涙したり、童心に帰ってしまいアホな質問を投げかけてみたり。とにかく毎回といっていいほど生産者や料理人のみなさんの話はとても興味深く、その人らしさが滲み出るような記事にするために。いつも知恵熱をだしながらツアー詳細ページを作成しています。
そして、料理オタクの私は、技術的なことも知りたいし、食材の特徴も大きな関心事項です。しかし、最終的に人なんです。この人が作り出す世界、哲学、パッション.etc それを素直に感じられた時、美味しいとか美味しくないとか、何が入っていたとか、何を食べたとかではなく、ただただ「おいしかった」という記憶しか残らない。アタマで食べるのではなく、ハートで食べる料理。そんな時は余計なものがなく「無」になるのです。ハートが動いた瞬間ともいえるような。恐らく、FoodCampはそういうものじゃないかと思うのです。
昨年のFoodCampでは、そんな瞬間に遭遇しました。玉川村でさるなしを長年作っている生産者の畑をお借りしてのこと。さるなしの木の下に誂えたダイニングは木漏れ日が差し込み、キラキラと輝いていました。もう、それだけで別世界なのですが、同じ玉川村の出身のシェフが工夫を凝らしたさるなしのコース料理を提供してくださいました。文字通り、手を変え品を変え登場するさるなし料理に、みんな驚いたり、感心したり。どのテーブルからも歓声が沸き上がっていました。
やがて、デザートをサーブし終え、シェフが挨拶回りにやってきたとき、生産者さんがすっと席を立ち、シェフに握手を求め、深々と頭を下げたのです。この姿をファインダー越しにみていた私の涙腺は、もう完全決壊。せっかくのシャッターチャンスなのに、うまく撮れません。
大事に大事に育て続けてきたさるなしを、みんながこうして喜んで食べてくれている。これまでの間、こんなことを続けても何になると非難を浴びた日も、作付けがうまくいかなくて落ち込んだ日もあったはずです。しかし、今日は畑にたくさんの人が来て、笑顔でいっぱいにしてくれている。その何とも言えない光景は、当事者でない私でも、感動ものでした。生産者にとって、今日という日が特別になった瞬間だと思いました。
こうした感動が、毎回といっていいほどFoodCampにはあります。
福島は震災以降、第一次産業は大きな打撃を受けました。今なおその爪痕は残ったままです。しかし、そんなことを真っ向から乗り越えていこうとする生産者、料理人、そして孫の手トラベルの人たちを本にしたいと思いました。
なぜなら、これが、今の福島を生きる人たちの姿だと思うからです。
§ 身近な人を幸せにしてくれたFoodCamp
最初は、本を作るためにクラウドファンディングをやりませんかと持ちかけました。しかし、その時はまだ準備が不十分でメンバーの理解を得ることも、プロジェクトのスタートを切ることもできませんでした。
結果的にそれでよかったと思っています。それから約半年、今年度の復興庁のクラウドファンディングプロジェクトへエントリーすることになりました。それを決めた矢先、応募していた環境省のグッドライフアワードの環境大臣優秀賞をいただきました。これは大きな弾みになりました。また、喜ばしいことではありませんが、台風19号の被害によりフードカードも大変なダメージを受け、修繕しなければならない状況に陥りました。そうした背景もあり、俄然、クラウドファンディングの機運が高まりました。
私は、もう身内みたいなものですから、当然、やるべきことはやるだけですが、そんな私を見ていた主人がこういうのです。
「楽しそうだね」
朝早かったり、寒かったり、暑かったりするみたいだけど、いつもFoodCampの話をするときは楽しそうだというのです。そして、
「福島に帰って来て、良かったんじゃない」と。
一番に私を理解し、私の可能性を信じ、応援してくれているのは紛れもなく主人でした。ですから、私が単身で横浜にいても、私が自分を信じて一所懸命やっていることなら応援したい、そんな気持ちでいてくれたんだと思います。
家庭をある意味顧みず、ただ突き進む私をずっと待っていたくれた主人。福島に私が戻ることは私が望むことなのか、迷う気持ちもあったでしょう。でも、今はお互いの故郷・福島で、それぞれの両親とも近い距離にいながら、好きなこと、夢中になれることを見つけた私を、誰よりも喜んでくれました。
私が笑顔でいると、主人はたいていゴキゲンです。私が幸せになることを、自分の幸せのように感じてくれる人です。
だから私がFoodCampを推す理由は、「身近な人を幸せにしてくれた」からなんです。たったそれだけです。
(おわり)
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