【ルンタWEB通信008】ネパール大地震から3年、助け合う被災者たち
vol. 10 2018-04-27 0
ルンタプロジェクト代表:中原一博
「ウックウック、アンアンハ。アンアンハ、ウックウック」。満面の笑みと手振りで会話するカビタさん。39歳という彼女は7年前に事故で声帯を損傷し、全く声が出なくなった。最初は泣いてばかりだった。夫は懸命に彼女の治療のために病院を回ってくれた。おかげで、いくつかの音は出せるようになった。
それでも彼女はとにかく明るく、なぜかほとんどの会話は問題なく成立する。名前とか数字になるとすぐに紙とボールペンを出し文字を書く。高校まで行った彼女にとって読み書きは問題ないのだ。
カビタさんの家は建設が始まった「ルンタナーサリー」の隣にある。私たちはカビタさんの畑に水タンクを置かせてもらい、工具や資材も置かせてもらい、昼食を作ってもらったりと彼女に大変お世話になっている。
ネパール中部を襲い、1万人近い犠牲者をだした大地震からちょうど3年目の今週25日、カビタさんに地震のときの話を聞いた。
カビタさんはその当時、道沿いで雑貨店を家族と一緒に開いていた。そこにいるとき大きな揺れを感じ道に飛び出した。店はむちゃくちゃになったが、その建物は倒れなかった。すぐに家族のいる家に帰ったが、家は壊れ、村ごと壊れ、土煙の中で村の女性たちが泣き叫ぶ声があちこちから聞こえて来たという。幸い家族は全員無事だった。
それから1ヶ月間テントで暮らし、その後トタンが配られ、屋根も壁もトタンだけの仮設小屋を建てた。そしてなんと現在に至るまで3年間そこに住み続けている。冬はとても寒く、夏は暑さと蚊で生活は大変だという。
でも、今やっとちゃんとした家を建て始めた。村人が一斉に家を建て始めている。政府が7月始めまでに建て始めた世帯にのみ、まず10万ルピー(約10万円)をやると言ってるからだそうだ。でも、カビタさんの家族に家を建てるお金はないので80万ルピーを年利24%で借りるしかなかったという。利子を払うのがこれから大変になるのは目に見えている。被災者の多くが追い詰められる状況にある。
カビタさんはシェルターができるのを心待ちにしているという。「仕事がほしいから」という。「なんでもやるから私を使ってください」という。働き者の彼女を雇う余裕があれば、必ず雇いたいと思っている。
最後に私はカビタさんに話した。「カビタさんは気の毒に一生治らないかもしれない障害をもってしまっている。今度シェルターに入るHIVの女性や子供も一生治らないであろう病気を抱えてしまっている。そのような人同士が助け合うのは素晴らしいことだと思いませんか?」というと「ウックウック」と言いながら声を詰まらせ、涙を浮かべた。
私は大変すばらしい隣人を持ったものだと思っている。