【ルンタWEB通信 No.002】 14歳のリティカ 〜 HIV感染者の未来〜
vol. 2 2018-03-16 0
14歳のリティカ ~ HIV感染者の未来~
ルンタプロジェクト代表:中原一博
施設に来たばかりのリティカ・ナート(14歳)。痩せて弱々しいが、笑顔が特徴的でとても可愛い。カトマンドゥに来て、HIV感染者のための新しい薬を飲み始めたが、副作用で下痢や発熱が続く。「いまは体は大丈夫」という彼女に話を聞いた。
リティカはネパールの極西端にあるドティ郡の出身。丘陵地帯が広がり村人は泥や木で造った簡素な家を建て、牛などの家畜を飼って暮らしている。電気や水、トイレなどの基本的なインフラさえ整っていない村も多い。カトマンドゥからはるかに離れた地域から、3ヶ月前にリティカはHIVに感染した父親に連れられて施設にやって来た。
彼女が7歳の時、お母さんは病気で亡くなった。末期の母を検診した医師は、症状からもAIDSを発症しているのではないかと疑っていた。検査結果は、やはり〝陽性〟。家族全員の検査をすると父親は陰性だったが、3人兄妹のうち兄とリティカっがHIVに感染していた。医師には「薬を飲めば大丈夫」と言われたので、その言葉を信じ、感染を隠して学校に通い続けた。
母の死から1年後、父は知らない女性と再婚した。義理の母は、「畑仕事もせず、いつも家を空け、食事も用意しない日が多かった」とリティカはいう。薬の副作用で体がきつい時もあったが、面倒もみてくれなかった。
父親は医者からHIV感染の子供を預かってくれるシャクティミランサマージュのことを教えられ、あまり幸せな境遇ではなかった彼女を施設に連れて来たのだ。
(中原)家にかえりたい?
(リティカ)家よりここの方がずっと楽しい。お母さんがいた時には楽しかったけど、お母さんが亡くなって、病気がわかってから家は楽しくなかったから。
(中原)でも、学校の友達とかのことは思いだすんじゃない?
(リティカ)うん、最初のころはよく思い出して会いたいと思ったけど、今はそうでもない。でもまた早く学校に行きたいと思う。
といつもの笑顔で答える 。
(中原)大きくなったら何になりたい?
(リティカ)看護師になりたいわ!
(中原)どうしてなの?
(リティカ)病院でやさしい看護師さんがいたから。
(中原)勉強が好きなら、医者になればいい。
施設から家に帰りながら、「HIVのリティカが頑張って、果たして看護師になれるだろうか?」「そして結婚できるだろうか?」とHIV感染者が社会で生きる困難さのことを考えた。