制作の舞台裏を一部公開!
vol. 2 2018-11-08 0
今年8月に制作がスタートし、約3ヶ月が過ぎたショートアニメーションプロジェクト、『less - The Rain Garden』(Rain Garden)ですが、現在は絵コンテを元に、シーンごとに必要なオブジェクトを3D化している段階です。予告映像用に制作した部分以外は、まだアニメーションの工程まで進んでいないのが現状ですが、地道に進めております。
絵コンテの一部
かなりラフな絵コンテ、といいますかイメージボードなのですが、個人プロダクションなので、これでも結構充分な感じです。それぞれのカットについて説明する場合も、口頭でしたほうが良いですし、Rain Gardenでは表情のないロボットが主役ですから、ライティングの演出で感情を表現したく、光や色味だけはこだわってみました。
今日は、Rain Gardenの映像の「絵づくり」について制作工程をちょっとだけ紹介したいと思います。
まず、主に使用しているソフトはNewTekのLightWave3D、AdobeのAfter Effects、そしてPhotoshopの3つになります。色々使用してみて、経済面と実用性から3Dアニメーションの作成には上の3つが今は一番しっくりきていると感じています。
LightWaveは、たまたま最初に触れた3Dソフトで、モデラーが直感的で、建築物のベース構造などを作るときに比較的使いやすいという理由で使用しています。モデリング、テクスチャリング、リギング、アニメーション、ライティング、エフェクト作成など、3Dアニメーション制作に必要なすべての工程をこなせる統合型のソフトです。使い慣れると結構なんでもでき、かなり魅力的なツールです。
After Effectsは、各シーンの映像の合成や、エフェクトを作る際に使用しています。特に自分の制作過程では、各要素をバラバラにレンダーした後に、合成して細かな微調整をすることが多いので、その工程をAfter Effectsで行なっています。
Photoshopでは、マットペイントの作成、3Dオブジェクトに使用するテクスチャの作成などを行なっています。
『less』シリーズのアニメーションは、総称して3Dアニメーションと呼んでいるのですが、いわゆるフル3DCGとは違い、マットペイントという技術を上手く応用して、かなり効率的に2Dと3Dを組み合わせることで映像を構成しています。そうすることにより、レンダリングに掛かる時間を短縮できます。マットペイントは元々、実写映画などで、物理的に再現が難しいシーンや、プロダクションコストを抑えるため、シーンの一部を絵で描き足すといった方向で生み出されたテクニックです。
今回は、予告映像にも出てくる下のシーンを例に制作プロセスについて説明したいと思います。
予告映像から
まず、絵コンテをベースに制作プランを立てます。確認するところは、カメラの動きがあるかどうかと、映像を構成するために具体的にどんな素材が必要かという部分です。
絵コンテと絵コンテの一部にプランを加えたもの
シーンにカメラの動きがあり、その動きにパララックス(視差)がある場合は、ほぼ3Dで環境を作ってしまいます。この3Dというのも2.5Dみたいな感じのものと、フル3Dがあります。実際には、3D化が必要になる部分だけLightWaveでモデリングをして、必要がない部分は、マットペイントで埋めるなどして効率的に作成していきます。
このシーンでは、下から上にパンアップするカメラの動きがあったので、3Dで作ることにしました。
モデリング過程
絵コンテを参考にモデリングをしていきます。モデリングが完了すると、この段階でレイアウトとベースとなるライティングを施します。
レイアウト・ベースライティング
続いて、窓越しに見える背景画像なども含め、それぞれのオブジェクトのテクスチャ画像を作成します。テクスチャの作成では、フリー素材や、撮影した写真を応用して作成する方法と、一から描く方法があります。今回は、写真を何枚か組み合わせて作る方法で作成しています。作成した素材を3Dオブジェクトにマッピングし、ベースとなる色と質感を与え、ディフューズ、スペキュラリティ、リフレクション、トランスパレンシー、バンプなどで質感を調整します。またライティングも調整していきます。
テクスチャリング&ライティング過程
テクスチャリングとライティングが終わると、一旦静止画像を書き出し、Photoshopに読み込み、マットペイントで植物やキズなどのディテールを描き加えます。
マットペイントを加えた後の静止画像
ディテールに加え、調整レイヤーを利用し色味なども調整します。マットペイントを施す上で重要なのが、シーンに近い環境の素材(写真など)を探すということです。具体的には、カメラからの距離感とアングルがマッチしているもの、そしてライティングが合っているものです。なかなか思い描くものがないのが普通なので、基本的には、雰囲気やデザインは描き足したり、加工により作りこむことになります。
さらにマットペイントを終えたPhotoshopのデータをAfter Effectsで読み込み、マットペイントで作成した素材をカメラの動きに合わせてトラッキングさせます。その後、チンダル現象や、ダスト、フォグなどを加えたりします。チンダル現象は、Optical Flareというプラグインで作成し、ダストやフォグは実写映像を合成しています。必要に応じて、Sapphireのブラーエフェクトでボケ感などを調整します。そうすると、こんな感じでデプスや空気感のあるシーンに仕上がります。
After Effectsでの調整後
最近は良いフリーの実写映像素材が多く存在するので、それらを上手く組み合わせて、オリジナルな表現にすることも、素早く経済的にハイクオリティな映像を作る上では結構重要です。
最後に、カラーグレーディングですが、ほぼMagic Bulletのプリセットでザックリ雰囲気を調整し、色味を変える程度で仕上げています。
以上が、Rain Gardenの絵づくりについてです。今回は、技術的な部分に比重をおきましたが、技術的な部分も含め、コンセプトやデザイン、ストーリーなどの作り方について、より詳しくは特典のメイキング映像でお話しできればなと思っています。
次回は、映像の音づくりについて紹介したいと思います。