オルフェオ物語について
vol. 4 2018-11-24 0
オルフェオ物語とは?
妻エウリディーチェを失ったオルフェオが、彼女を取り戻すべく冥界に下るが、その竪琴の美しい調べに心動かされた冥界の神々はエウリディーチェを連れ帰ることを許す。しかし地上に出るまで振り返ってはいけない、という。はてさて、地上の光が見えてあと数歩、というところでとうとうオルフェオは振り返ってしまう…
カミーユ・コロー「黄泉の国からエウリュディケを連れ出すオルフェウス」
大変有名なギリシャ神話ですが、この「オルフェオ」は、最も多くオペラとして作曲されている題材です。(オルフェウス、オルペウス、オルフェ 国によって読み方が違います)
ギリシャ神話の再興から始まったオペラですから、ギリシャ神話が題材になるのは当然ですが、「オルフェオ」人気はオルフェオが音楽の神アポロンの息子で、竪琴の名手であることが大きな要因であること間違いないでしょう。
ところで「オルフェオ」のもとのお話、その結末を皆さんご存知でしょうか?
あともう少しで地上、という所でとうとう振り返ってしまい、エウリディーチェは黄泉の国に戻されてしまうところまではご存知の通りです。
妻を失ったオルフェオは女を遠ざけ、その誘いに見向きもしませんでした。ディオニソス(バッカス)の祭りの日に女たちが興奮し、「私たちを侮辱した男」オルフェオの身体を八つ裂きにして、頭と竪琴を河に投げ入れました。頭だけになっても彼は歌っていたそうです。ミューズ達がその身体を集め葬り、竪琴はゼウスの手により星となりました。
ギュスターヴ・モロー「オルフェウスの首を運ぶトラキアの娘」
今回はこの物語がオペラとして書かれた際、台本によって様々な結末を辿りますが、そのいくつかの例を挙げてみたいと思います。
◆ダ・ヴィンチプロデュース「オルフェオ」の場合◆
台本: アンジェロ・ポリツィアーノ
ダ・ヴィンチ、ポリツィアーノ
ギリシャ神話のままです。
◆ペーリ&カッチーニ「エウリディーチェ」の場合◆
台本:オッターヴィオ・リヌッチーニ
初演:1600年フィレンツェピッティ宮殿
(フランス王アンリ4世とマリーア・デ・メディチの婚礼の催し物として)
ペーリ、カッチーニ、リヌッチーニ
なんと!「振り返ったらアウト」の設定がない・・・なぜって、婚礼行事の為に書かれたからハッピーエンドで終わらなきゃ。オルフェオの涙と歌に感動した冥界の住人たち、冥王プルトーネによりエウリディーチェは地上に戻り、幸せに暮らしたとさ。
◆モンテヴェルディ「オルフェオ」の場合◆
台本:アレッサンドロ・ストリッジョ
初演:1607年マントヴァ宮廷
モンテヴェルディ
妻を振り返ってしまったオルフェオ、エウリディーチェは再び黄泉の国へ戻り嘆き悲しむオルフェオ。そこへオルフェオの父・太陽神アポロが現れ彼を天上へと導き、羊飼いたちの祝福の歌で幕を閉じる。美しく格調高いお話です。
◆グルック「オルフェオとエウリディーチェ」の場合◆
台本:ラニエーリ・カルツァビージ
初演:1762年ウィーンブルク劇場 / パリ版 1774年オペラ座
グルック、カルツァビージ
妻を振り返ってしまったオルフェオ、エウリディーチェは倒れ息絶える。嘆き悲しむオルフェオ、絶望のあまり自殺を図ろうとしたとき、アモーレ登場!「お前の愛と誠は十分示された」としてエウリディーチェが息を吹き返す。皆が愛を讃えて幕を閉じる。
因みにこのオペラ、森鴎外の訳詩版がありますが、その歌詞はドイツ語並みに難解です(ニホンゴナノニワカラナイ)。
◆オッフェンバック「地獄のオルフェ」の場合◆
台本:エクトル・クレミュー、ルドヴィック・アレヴィ
初演:1858年ブフ・パリジャン座
オッフェンバック、クレミュー、アレヴィ
これはパロディーです。なのでここに並べてよいものか・・・しかし最も上演回数が多い作品で、それはもう抱腹絶倒ものです。
音楽院の院長オルフェオと妻エウリディーチェの仲は冷めきっていて、お互い浮気相手がいる始末。オルフェオが妻の浮気相手を殺そうと仕掛けた毒蛇にエウリディーチェが噛まれ死んでしまう。せいせいしているオルフェオの許に『世論』がやって来て、『世論』に押される形で地獄へ降りていく。
エウリディーチェを気に入ったジュピターが彼女を地獄から天国へ連れて行こうとした時にオルフェオが現れる。「振り返らないこと」を条件に返してやるが、本当になかなか振り返らないのでジュピターが雷を落とす。驚いたオルフェオが後ろを振り向くと、エウリディーチェは天国に昇りみんなハッピーエンド。
=早見表=