塚原重義×成田良悟スペシャル対談 後編が公開!
vol. 5 2020-06-05 0
『デュラララ!!』・『バッカーノ!』など数々の名作を送り届けてきた小説家・成田良悟さんと『クラユカバ』塚原重義監督の対談インタビューが実現!
※ 対談前編はコチラにて公開中!
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
■アニメーション監督・塚原重義 × 小説家・成田良悟スペシャル対談 後編■
――成田さんは最近創作のためにやっていることはありますか?
成田 ルーティーンというわけではないですが、必ず友人の作家さんたちとチャットをしながらゲームをやるっていうのはあるんですけど、シューティングゲームとか。そのなかの何気ないシーンや会話から妄想を膨らませていますね。あと、ここ十年くらいは……「ほんとにあった呪いのビデオ」とか投稿系のホラービデオってあるじゃないですか?
塚原 おわかりいただけただろうか(声真似で)
成田 あ、そうですそうですそうです!その「ほんとにあった! 呪いのビデオ」や「封印映像」などをエンドレスで仕事をしながら見ています。なんでそういった物を観ているかというと「デュラララ!!」なども現実の中にふわっと出てくる現実ではないものが出てきたりとか、今書かせていただいている漫画原作の方でも「リアルな新宿の街に異世界の能力者が出てきたらどうなるか」とかのテーマで書くことが多いので、現実の中で幽霊的なものが出た時の人の反応が参考になったり、イマジネーションが刺激されたりしますね。
塚原 やっぱりモキュメンタリー的なリアル感がお好きな感じですかね
成田 そうですそうです!白石晃士監督の「戦慄怪奇ファイルコワすぎ!」シリーズをはじめとして、ホラー映画のジャンルではモキュメンタリーが一番好きです。ドキュメンタリーも結構見たりしますけど。「現実は小説より奇なり」がドキュメンタリーだと多々あるので。ニュースでもドキュメンタリーでも「自分が作ったキャラがその場にいたらどうなるんだろうな」とか想像すると、自分の中でキャラクターの肉付けになるんですよね。そうすると、小説の中で何も考えなくてもキャラクターが活き活きと動いてくれるというか。やっぱりゲーム、ホラービデオ、映画でもアニメでも創作物を見るとテンション上がりますよね。お恥ずかしい話ですが、小学生のころから「ジョジョの奇妙な冒険」を読んで「僕の考えたオリジナルのスタンド」とかついつい考えたり(笑)。いまだにそういうところがあるんですけど。そういうところが積み重なって、今の作家人生がなんだかんだ運よく行って、食べさせてもらっているので、ありがたい話というか。
――お二人とも「遊びの中で」っていうのがキーワードになっていると思いますが、とくに印象に残っているご友人とかいらっしゃいますか?
成田 ものすごく卑怯な真似をゲームでやってくる作家さんとか(笑)。対抗戦じゃなくてチーム戦なのに、憎めないくらい正々堂々と裏切って自分一人で生き残るんですよ。ちゃんと逃げるときに「自分の身を犠牲にしてでも俺に生き残って欲しいというお前達の無言の願いは聞き届けた、じゃあな」とか言って(笑)。ゲーム一つとっても人によってたくさんの性格の人がいるのが面白いなと。それと昔、PBMという物をやっていまして、千人規模の手紙でやるTRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)と言いますか。例えば、ゲームの中で都市ごとに、ファンタジー世界に飛ばされるという設定のゲームがありまして。千人とか多くて一万人とかの規模で自分たちのキャラを作ってファンタジー世界でどう立ち回っていくかを手紙で送り、それを運営会社の作家さん達が判定した結果を一つの小説にして参加者全員に送り返すというゲームでして。そういうゲームだけあって、創作好きな人など印象に残る人が多かったんですよね。自分の作ったキャラクターとそういった相手の作ったキャラクターが相対するわけで、その中で自分のキャラが勝つにはどうしたらいいか、負けてもいいからどうやったらかっこよく自分のキャラを演出をするかを本気で考えていました。それが今のキャラづくりの基礎になっていると思います。
塚原 さっきの話の中学時代の友人は「警察24時」的なものが好きな仲間同士で、勝手に変な裏社会を妄想して楽しむということをよくやってましたね。今回の「クラユカバ」の街の下にもう一つの社会があるというのもそこから来てますね。もう一人上げられるとするなら、高校の時からの友人で、職業が刑務官なんです。たまに会って食事したりするんですけど。聞く話が自分の全く知らない世界の話をしてくれるんですが、同世代で、同じ東京で生まれ育ったのに全く住む世界が違って、毎回衝撃を受けます。主観でとらえることの面白さというのかな、人によって見える世界はこんなに違うんだというのを感じられて、主人公にとって世界がどう見えるかを重視している傾向はそこから来ているのではないでしょうかね。
――今回は成田さんにはショートショートでノベルを書いていただくというご依頼をさせていただきましたが、本文を書いての所感や感じた事はありますか?
成田 かなり緊張しています(笑)。キャラクターの大半は私のオリジナルですが、塚原さんの作品の最大の主役は街そのものと捉えていまして。私がノベライズするときに一番気を付ける事として「キャラクターを崩さないようにしよう「キャラクターがしない行動はとらせないようにしよう」ということを意識しているのですが、壮大な大帝都の舞台をキャラとしてとらえたときに、「こういった側面はこの街らしくない」と読者に思わせてはいけないと考えているので、本編と齟齬がないように調整していけたらなと思ってやっています。
――塚原さんはご自身の作品のサイドストーリーを書いてもらうのは初めてだと思うのですけれど、それについて感想などはございますか?
塚原 まだプロットを見せていただいた段階ではありますが、非常にワクワクしています。自分で世界を構築しきりたいという欲求もあるのですが、雑多にいろんな意思が介在していたほうが生きた世界だとも思っていて、自分の意思をちょっと外れて街が膨張していくのを眺めていく楽しさですね。今回は後者の方で、是非とも眺めさせていただきたいなぁと思っています。
――成田さんがこれからのアニメーション作品に求めているものなどあったらお聞かせいただけますでしょうか?
成田 「ウシガエル」のファンというところから始まって、クラウドファンディングに出資させていただいたという形ですけども、その結果お金を出して仕事を買うという本末転倒な感じになってしまい、世の中面白いなぁとなっていますけども(笑)。
「クラユカバ」は仕事を抜きにしても、今までの塚原さんの築き上げてきた世界の核心に向かって切り込んでいく楽しみと言いますか。「端ノ向フ」で垣間見せていたダークな部分をさらに切り開くことで「これだけ広がっている世界をさらに掘っていくのか」という一大叙事詩を目撃する楽しみがあります。加えて、斬新な形で色々自由にやるクラウドファンディングならではの所はあると思いますので、新しい作家さん、既存の作家さんたちが新しい自分の表現に挑戦することが出来るのはこの時代の大きな利点だと思っているので、もっと多くの人々がこういった機会に恵まれるようになればと考えています。
――塚原監督が小説に求めるものなどあれば、ぜひお聞かせいただきますでしょうか?
塚原 小説に求めるもの……。うーん、なんですかねぇ。自分は映像を作っているので、映像は時間軸で進むものじゃないですか。対して、言葉を紡ぐというか……。この質問は考えてなかったなぁ(笑)。
成田 なんか今日、不意打ちの質問が多いですよね(笑)。
――失礼しました(笑)。
塚原 そうですねぇ。自分の場合、小説読むときは映像を思い浮かべながら読むんですよね。そのためディテールがしっかりしている小説が好きです。ディテール全部を書き込むわけではなくて、言葉の雰囲気でイメージさせる。それっておそらく、書く側がしっかりとイメージしていると思うんです。そういう空間とか空気感がしっかりと感じさせる小説が読みたいなぁと思っています。
成田 頑張ります(笑)。
塚原 いやいや!成田さんはそれがすごくできてらっしゃる作家さんなので!
成田 ありがとうございます。
塚原 さっき「モキュメンタリーがお好きなんですか?」という話になりましたが、「デュラララ!!」は雰囲気がモキュメンタリー的で面白いなぁと思いました、現実の池袋の雰囲気の様な文章の肌触りというか。
成田 私もアニメーションとか映像作品を見たときに、映像に映っていない所の作りこみが分かると、裏側でどんな物語が起こっているのか想像して、より深く世界に入っていけますね。その点の作りこみが塚原監督の作品はすごくて、例えば「キネマ大路」の通行人たちも一人一人が別のドラマにつながっているんだろうなと。街の雰囲気の完成度が高いのはそれだけで素晴らしいので、「クラユカバ」でさらに完成度が高くなるのが楽しみな今日この頃です。
――最後に「クラユカバ」を待っている視聴者の皆様に一言ずつお願いします
成田 仕事として関わらせていただく形になりましたが、根っことしてはクラウドファンディングで出資させていただきまして、この仕事もいわば、出資の一部と考えていて、ぶっちゃけた話、今回の報酬もクラウドファンディングに突っ込むことになるだろうなと思っております(笑)。これからも一ファンとして「クラユカバ」という作品を楽しんでいきたいと思っています。もし私のファンで、塚原さんの作品に興味があるという方がいますならば、塚原さんのホームページで過去の作品を見て、監督の生み出す世界観にはまっていただけたら、一緒に楽しむ人が増えるということで、それほど幸いなことはございません!
塚原 本日お話を聞かせてもらって、だいぶハードルが上がったなというのはあるんですけど……(笑)。今回の「クラユカバ」がこれまでの作家活動の中で一番大きいプロジェクトで、自分自身新しいことが多いので、周辺の皆様にはご迷惑をおかすると思いますが、なんとか最後まで作り切れたらなと思っていますので、今しばらく応援をしていただけたらと思います。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
成田良悟さん書き下ろしのSSノベルが手に入る、「クラユカバ」リターン情報はコチラから!