制作日誌⑧
vol. 10 2025-07-18 0
クラウドファンディングもいよいよあと2週間となりました!
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さて制作日誌。
映画の中でどうしても取り入れたい光景があります。
ちょうど一年前の夏。役場の人にお誘いいただき、エイサーの練習風景を見学させていただいた。
エイサーとは、旧盆の期間中に行われる沖縄の伝統的な盆踊りのことで、地域ごとに異なる踊りや衣装、太鼓の演奏で、先祖の霊を供養し、無病息災や家内安全を祈る行事のこと。
イベントなどで見たことはあったけど、練習風景となるとナイチャー(沖縄県外出身の人)の自分にとっては
そうそう見れる機会はないので、ありがたい。
薄暮、またはマジックアワーとも呼ばれる、日が沈んでから暗闇になるまでの、薄暗い時間。木製の電柱の街灯が灯る。山の稜線だけがかすかに明るい。
さとうきび畑に囲まれた、古い公民館の前の広場。遅れて自転車でやってきたおじいは三線を取り出し、すでにエイサーの練習を始めていた大人たちに加わる。子供たちはそれよりもキャッチボールに夢中で、とり損ねたボールを拾いに辺りを駆け回る。
母親は太鼓の代わりに赤ちゃんを片手で抱え、異国からの移住者は慣れない独特の節に悪戦苦闘して、覚束ないステップを踏む。
そこにいる人々が、皆違うペース、違う事情でその場にいる。それなのに完璧なまでに調和がとれた美しい光景。
「ダイバーシティってこれやん!インクルージョンってこれよこれ!」と覚えたてのカタカナを心の中で叫んでみた。
そこには、過去から受け継がれてきた人間の営みが凝縮され、きっとこの先の未来も変わることなく受け継がれていくのだろうと予感させるような何かに満ち溢れていた。
あの光景をこの目で体感できたことはなんと幸福なことか。
とか偉そうなことを言っておきながら、告白すると、私は最初記録のためにiPhonのカメラアプリ越しにその光景を眺めていた。どこがデジタルデトックスやねん!と突っ込まれそうではありますが、仕事のために記録は残さないといけないので堪忍してください。
でも、途中から「この光景は目で見なあかん!あきません!スマホを閉じなはれ」と心の声が聞こえたので、撮影するのをやめて目に焼き付けようと思った。しばらく黙って見ていると、自然と涙が溢れてきた。
ふと横を見ると、日に焼けた平田理も涙を流していた。
あの涙はいったい何だったんだろうか。美しい光景に感動したと言えばそうなんだけど、そんなシンプルなものではない気もする。初めての体験だった。
当人たちにとっては、何でもない日常のほんのひと時であろうが、その日常の美しさをちゃんと描くことができたら、きっと素敵な映画になるだろうなと、そんなことを思いながら、シナリオを加筆するのでした。