【応援コメント1】作家、そして姉である川内有緒からの応援コメントをご紹介します
vol. 2 2024-10-11 0
クラウドファンディングのページですでにご紹介しているのですが、ノンフィクション作家であり、そして私の姉である川内有緒さんからの応援コメントをご紹介させていただきます。
2020年にgallery and shop 山小屋で開催した赤井都さんの個展で、有緒さんも豆本『航海記』と出会い、この限定本に心を持って行かれた人物のひとりです。
クラウドファンディングの前日に応援コメントが届き、なんども読み返し、涙があふれました。
クラファンの準備もたくさん応援してくれました。
背中を押してくれてありがとう。
ここからまた漕いでいきます! 遠くまで届けていきます。
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本というものは、遠くからやってくるお手紙にも似ています。
自分が知らない人が、自分にあてて書いてくれているような。
この物語は、私の物語だ、そんなふうに感じる本があります。
そのとき、本と自分の境界線が消え失せて、私は本になり、本もまた私になります。
私が本を書くことが好きな理由も、言葉がとても遠い誰かまで届くからでしょう。
文章を書く時、私は孤独で、誰にあてて書いているのかもわからないまま書いています。
しかし、ようやく書き終えられたとき、これはきっと誰かに届くんだろうと信じ、また遠くまで旅していけ、と願います。私がこの人生で出会える人は限られているけど、本を通じてならばとても遠くにいる人とも、なんならば、私が死んでしまった後に生まれてくる人にすら出会えるのです。
赤井都さんの『航海記』を復活させるというプロジェクトが始まったのは、いつのことだったでしょう。よく思い出せないくらい、前のことだったような気がします。
はじめは、限定された数で、考え抜かれた造形の本だけを作ろうと考えていた新谷サチコに、
「いや、『航海記』はもっと多くの人に読まれるべき本だと思う。全国の本屋さんに置いてもらって、ふと通りかかった誰かが気負わないで買い求めて、カバンにいれて持ち帰れる。そんな感じの本もあるといい」と説得したのは、私でした。
この「航海記」という本は、とても短い物語です。
その分、暗くて静かな海のように、「果て」が見えない魅力を持っています。
読んでみてください。
そして、ぜひ皆さんのお力を貸してあげてください。
届きますように。
岸辺の見えない海に浮かぶ舟を漕ぐ現代のわたしたちに。
流れていきますように。
一冊の本が、海を超えて遠くまで。
川内有緒
(ノンフィクション作家 そして、新谷サチコの姉)
photo by Harumichi Saito
映画監督を目指して日本大学芸術学部へ進学したものの、その道を断念。中南米のカルチャーに魅せられ、米国ジョージタウン大学の中南米地域研究学で修士号を取得。米国企業、日本のシンクタンク、仏のユネスコ本部などに勤務し、国際協力分野で12年間働く。2010年以降は東京を拠点に評伝、旅行記、エッセイなどの執筆を行う。
『バウルを探して 地球の片隅に伝わる秘密の歌』で新田次郎文学賞、『空をゆく巨人』で開高健ノンフィクション賞、『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』(集英社インターナショナル)でYahoo!ニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞を受賞。趣味は美術鑑賞とDIY小屋づくり。また東京でギャラリー「山小屋」(東京)を運営している。最新刊は『自由の丘に、小屋をつくる』(新潮社)。