マザリングベル
vol. 8 2023-08-23 0
publicoパブリコは現在ここまで工事が進みました。
酷暑の中、ポタポタどころではない位の汗を垂らしながら作業していた奈良本さんでしたが、ようやく空調が入って涼しい現場となり、わたし達もほっとしました。
手作り感のある気持ちのいいキッチンが出来上がりつつあります。
このキッチンでは、まちのみんなで一緒に食べる食事を作ったり、食事づくりを中心とした産前産後訪問支援「マザリングベル」のサポーターの研修を予定しています。
「マザリングベル」は、amigoが活動をはじめた頃から続く事業です。
お母さんになった女性に、ウェデイングベルならぬマザリング(母になったこと)への「おめでとう!」のベルを鳴らします。
簡単に言うと家族が数日食べる食事の作りおきですが、大切にしていることが幾つかあります。産後のからだにやさしい消化のよい食事、産婦やパートナーがからだを休める時間、赤ちゃんのいる暮らしのちょっとした分からないことを誰かに訊ける機会、お産を労う時間をつくることです。赤ちゃんを抱っこしたり、世話する様子を目にする機会のないままに自分の赤ちゃんを迎える夫婦が増えていると言われています。お世話や関わりに戸惑うことや、緊張や不安に見舞われることも多いのが産後の暮らしの現実です。
マザリングベルでは、助産師をはじめamigoの研修を受けたサポーターが訪問します。赤ちゃんのいる暮らしのリズムや生活動線、家にある食材をやりくりする名もなきご飯をつくりおきします。昨晩赤ちゃんの夜泣きがひどくて…と伺えばちょっとお昼寝の時間をとっていただくこともあったりします。
マザリングベルが始まったきっかけは、amigo顧問の大坪助産師の新生児訪問等での気付きからです。これまで仕事が忙しくて家でご飯を作らなかった方が赤ちゃんを迎えた時に困るのは食事づくりだったりすること、実家が遠方でサポートの当てがないため夫婦2人で産後を乗り切らなければと考えているカップルも少なくありません。
赤ちゃんの世話だけでなくままならない家事によってもストレスがかかったり、栄養や休息が取れずに産後の回復が遅れたりすることで引き起こされる産後の心身の不調こそ、助産師のような専門家ではなく、地域で同じように子育てをしてきた先輩ママたちがサポートできるのでは?という考えから、トライアルが始まったのは20年前のこと。
産院からの退院日に一緒に荷物をほどくこともありますし、きょうだいの遊び相手がメインになる日があったりもします。お母さん1人でやるのは大変だけど、誰かいてくれることで余裕ができましたという声や、からだを休めてる間にキッチンからの音や匂いが安心や労いになるという声を受け、このサポートが必要とされていることを感じながら続けています。第一子の産後が大変だったと経験から第二子以降の産後に向けて依頼を受けることもありますし、第一子の産後にマザリングベルを利用したからもう一度という方、お友達の出産に向けてご紹介いただくことも少なくありません。
訪問するたびに赤ちゃんの成長だけでなく、戸惑いや不安でいっぱいだったお母さんが、「この前の、あのおかずの作り方を教えてほしい」とキッチンの傍らでずっとお喋りするほど元気を取り戻す姿は、とても眩しいものです。
マザリングベルは、訪問する側のサポーターのチカラにもなります!毎日している家事が誰かの支えになることや、自分の家事や育児について見つめ直す時間になったりもします。フルタイムで働くことは難しいけれど、社会につながりを持ちたいと考えている方にとってもちょうどいいシゴトなのです。サポーター同士の交流やレシピ交換のための研修もとっても楽しい時間です。マザリングベルのサポートを受けた方がサポーターになったりもしているほどです。
赤ちゃんのいる暮らしがいい塩梅に整ってくる時期(これも必ずやってきます)まで伴走するサポートは、次のおでかけ先を紹介しながら、やがて卒業を迎えます。訪問したご家族にまちでバッタリ会った時には親戚に会ったような気持ちにもなるような不思議な絆が育まれ、まさに「あの子もこの子もみんなの子」という具合なのです。お子さんには「この人だれ?」と毎回言われるのも嬉しいものです。
コロナ禍を経て人とのつながりがますます希薄になったことが危惧されていること、そして仕事をもつ女性が増えたことで、産後間もない時期からの支援やまちとのつながりの必要性をより一層感じています。publicoのキッチンで、産後のお家に訪問してくださる方をもっと増やしたいと考えています。事業をはじめて間もない頃からサポーターをしてくださっている三浦さんのご飯は、amigoのメンバーも大好きです。ご家族だけでなく、何人の産婦さんとご家族の食事を作ってこられたことでしょう。ストレッチゴールが叶えば、三浦さんの「ランチ会」や「おすそわけ」などもできるとワクワクしています。