八百万(ヤオヨロズ)の可能性
vol. 5 2017-10-02 0
ダンスやオイリュトミーの大事な根拠は身体を動かしたいという意志だと思います。
人間は生まれて個人差はあるもののほぼ1年ほどで立ち上がります。
私は常々、生まれて初めて立ち上がった瞬間の記憶と体感をその時のまま追体験できたらどんなに面白いかとよく考えます。
それに近づきたくてオイリュトミーをやってると思うほどの憧れがあります。
私は介護の仕事をして10年ほど経ちますが、この、人が生まれて初めて立ち上がる感覚とは、
身体能力だけで言えば逆の境遇の方々と日々接する日常です。
寝たきりで全く自由に体が動かないといった方と過ごすことも少なくありません。以前、病院での勤務体験で興味深い体験がありました。
その頃は、全介助を必要とする病棟で働いていました。
ほとんどの患者さんが経管栄養、つまり胃に穴をあけ管によって高栄養剤を一日数回、定期的に体に注入することによって生命を維持する、寝たきりの状態です。
意志の疎通やコミュニケーションできる人、声を発することはできなくても意識ははっきりしてる人など様々でした。
そういう状態での日常は胸の詰まることの多いものです。
空間の空気も重いものでした。
しかし、ある日なんだか病棟全体に熱気が感じられる日がありました。
”今日はなんだか違うぞ” ”と思いやりながら、いつものようにフロアーをせっせと歩きまわるうちに明らかになってきたことは、
意識があってテレビのチャンネルを選ぶことのできる人は、ほぼ全員オリンピック中継を見ていたということです。
もしかしたら、職員が見たかったからなのかもしれない。とにかくなんの競技がったか選手の名も記憶が定かではありませんが、日本人選手が金メダルを取った日だったのです。
一番変化が見えたのは、
何度も自殺を試みてとうとう、脊椎損傷で下半身不随になってしまった、40代男性が
”嬉しいです” と自分のことのように頰を紅潮させて言ったのでした。
自分自身のカラダは不自由であっても内的に凄まじい動きを体験した様子でした。
この人は本当は生きたくて生きたくて仕方ないんだと思いました。
日本の神話に記されている八百万(ヤオヨロズ)の神というのは人間の身体には八百万の可能性があるという意味なのだそうです。
古代から祝祭や儀式の折には舞いや踊りがあったように、ダンスやオイリュトミーにその可能性が詰まってるいう説は真実なのだと思います。
介護現場での体験で得た実感です。
オイリュトミー公演”おしごとは呼吸すること”クラウドファンディングの特典にはオイリュトミーワークショップ全3回が含まれるコースもあります。
是非、情報や知識なしに身体を動かしてみませんか?
(清水靖恵)