『七変化狸御殿』
vol. 8 2021-03-28 0
本書『近衛十四郎十番勝負』は、カラー&モノクロの図版頁を別にすると、評伝と主要作品総覧の二つの部分で構成されていて、すでに原稿は出来上がっています。その主要作品総覧の中で、番外編として「珍作・怪作五番勝負」として五本の作品を紹介しているのですが、その中の一本として、松竹時代のオールスター物の娯楽作品『七変化狸御殿』(大曽根辰夫監督、1955)という作品を挙げています。
これは、いわゆる狸御殿ものの中でも大変に面白い一編で、美空ひばり演じる狸のお花と、堺俊二(言わずと知れた堺正章のお父さん)演じるポン吉とが、カチカチ王国の若殿包鼓太郎(宮城千賀子)を救うために大冒険を繰り広げるというお話です。途中で、都鳥吉兵衛が持っているという白珊瑚の賽を手に入れなくてはならず、二人(二匹)は木の葉を小判に化けさせて千両箱に入れてまんまと珊瑚の賽を手に入れます。ところが、吉兵衛は森の石松を殺した悪党で、そこへ現れた清水次郎長一家が、石松の仇として吉兵衛を成敗するのですが、そのシーンで次郎長親分として登場するのが近衛十四郎です。森の石松も幽霊として現れて、自らが騙されて殺された涙の物語を浪曲で語るのですが、その石松の幽霊を廣澤虎造が演じていて十八番の浪曲「清水次郎長伝」で語るという趣向です。
さて、この『七変化狸御殿』なのですが、昔のVHSビデオや、プレスシートのコピーは持っているのですが、先ごろ池袋の古本市に行ったときに、劇場パンフレットを見つけたのでつい買ってしまいました。
実際には、パンフレットには近衛十四郎の写真は一枚も載ってはいないのですが、まあ値段が500円だったので持っていても損はないだろうと思い、購入した次第です。それにしても、表紙に載っている高田幸吉の写真(森の精)は何度見てもシュールで笑ってしまいます。