【ネタバレ企画】まえがき全文公開!
vol. 21 2021-09-03 0
この本がどんな本なのか? まえがき全文公開して、お伝えしちゃいます!
(すでに実本リターン購入されたコレクターのみなさん、ちょっとだけネタバレ、ごめんなさい。でも楽しみは減りませんよ! 逆にまえがきをお読みいただいて、本作を楽しみにお待ちいただけたら幸いです)
この本をお手にとってくださるあなたへ(…まえがき)
『木こりになって良かったよ』…というタイトルを見て、これから林業を始めたい方、もうやってらっしゃる方は、どんな内容を期待されるのでしょうか。
林業現場の仕事。地拵えから始まって、苗植え、下刈り、つる切り、除伐、枝打ち、間伐、主伐…そのやり方や技術。この本はそれについて語る本じゃないです。そうゆうことは、林業を始めればきっと手にすることになる講習テキストに載ってるし、より専門的な本もたくさん出てるし、なにより現場で先輩たちがちゃんと教えてくれます。現場に入る前からいくら知識を蓄えても、現場に入ってから身に付く知恵以上には役立たない。
この本でお伝えしたいことはそうゆう林業の入口で役立つことではなくて、むしろその先で、山の奥のほうに足を踏み入れてから出逢うであろうこと。林業技術の中身じゃなくて、林業生活の中身。田舎で林業の現場と暮らしに身を置いてから、いつか感じるかもしれないこと、役に立つかもしれないこと。林業という仕事をしながら田舎に生きるときにきっと出逢うことになる歓びとかブルースとか、なんていうか…境地…みたいなもの。きっとそこに、いまの時代に生きる俺たちが求める、ささやかだけど、しあわせみたいなもの…そうゆうものが、隠れてると思うんです。そうゆうものを、世にたくさんいる林業労働者の一人、俺という名も無き木こりが、足のくたびれと手ざわりと皮膚感覚で味わった、僅かばかりの経験からお伝えしたい…そんな思いで、素人ながらに筆を執りました。
デジタル化が進むいまの時代、本は売れません。ちょっと検索すれば林業の情報なんていくらでも出てきますし、入口には玉石混交、情報があり過ぎるくらい溢れてます。世の中に林業従事者は多くいますが、その人数が全産業労働者数に占める割合は、ほんの僅かです。したがって林業の本は商業成立しません。そもそも木こりって、本なんて読みます? しかも電子書籍なんて。だからクラウドファンディングを募って紙の本を自費出版することにしました。事実上の合資出版頒布です。
なんとかして読んでいただきたい。それを必要としている方、これから必要になるであろう方に、読んで欲しいのです。だから出版の目的の一つは各道府県林業学校への寄贈です。俺はこんな時代に林業を続ける俺たちに必要なことを書いたつもりです。
ちょっと重いですか?(笑) でも、回し読みでいいので、お仲間と笑い合って軽く読み飛ばしてみてください! そうしたらきっと、読んでいただいた方それぞれの、俺も私も『木こりになって良かったよ』が紡ぎ出されるんじゃないかな?☆
ちなみに俺は、特別体力があるほうでもないし、運動神経もよくないし、読者のみなさんと同じ、たぶんフツーの人です。変わり者だとたまに言われますが、少なくとも俺自身は自分をフツーの感覚を持った人間だと、そう思ってます。あ、そっか。なにがフツーかは人それぞれですよね。でもね、俺がヒーローじゃなくて、不器用なモブの一人だってことは、確かです。
そんな俺は十年前、無鉄砲に林業の世界に飛び込みました。たぶん頭も悪いのです(笑)
飛び込んでみて、毎日大変でした。いまもです。少しだけ、丈夫にはなりました。相変わらず貧乏で、不自由もあります。でも後悔はありません。いま、しあわせです。
毎晩掌が痛いです。昼間は感じませんが、夜になると感じます。それを先輩に打ち明けました。先輩は膝と肘が毎晩痛いそうです。先輩は言いました。
「みんなどこかかんか痛い。ただ弱音吐くのが恥ずかしいで言わんだけや」…俺はそのときハッとして、それ以後掌の痛みのことを言うのやめました。いまではその痛みにも慣れて、気にならなくなりました。たまに痛いときあるけどそんなときは、生きてるなぁ…って思います。
しばしば、これから林業したいという方から「林業って、どうですか?」って、相談を受けることがあります。ありのままをお話し出来ますが、決めるのはご本人。その後もご本人次第。持ち合わせている情報をお伝えすることと、背中を押すことはいくらでも出来ますが、決めるのはご本人です。
事前の情報収集に余念のない方もおられますし、難しく考えずに「やったれぇ~っ!」て始めちゃう人もいます。結果どっちのタイプが長続きしてるかは統計の専門じゃない俺にはわかりません。でも数字や金額や危険についての情報に敏感な人よりも、夢とか楽しさとか、なりたい自分をイメージした人のほうが林業界と田舎界に飛び込んで来てるのは確かだと思います。
この本は、いちばんはそうゆう人の背中を押したくて書いた本です。もうひとつは、すでにやってる人たちと「そうだよね」って、現場のリアルを共感したくて書いた本です。ほんとはまだまだ半人前の俺なんかに言えるようなことじゃないんだけど(汗)
で、もう一つだけ、とても大事なことを一つだけ、ここで書いておきますね。それは、これから林業やろうというあなた、すでに林業をやってるあなたが、なにを大事にするか…ってこと。
例えば間伐ひとつとってもいろんなやり方があります。切り捨て間伐と収入間伐。定性間伐と定量間伐と列状間伐。いまなのか未来なのか。利益なのか環境なのか…とか。両方大事にしたい…じゃあそのバランスは…
どんなやり方にも一理があります。そして長所もあれば短所もある。メリットとデメリット。すべてが解決される万能な方法なんて、たぶん無い。一見万能に見えるものにも、思わぬ落とし穴があったりする。当たり前のことですけど。
大切なのは、あなたがなにを大事にするかということ。あなたがなにを犠牲にするかということ。そしてそのバランス。ジレンマだって当然あります。正直、悩みます。むしろ悩まない日なんて無いくらい。でも、「悩む」…それ自体に、すごく意味があるんだと思います。もちろん林業をやるか、やらないか…ってことも含めて。
繰り返します。
大切なのは、それをやる人がなにを大事にしたいかということ。なにを犠牲にしたくないかということ。答えは一つだけじゃないってこと。
出した答えがどんな形だっていいじゃない(笑) その答えにまだ納得出来てなくたっていいじゃない。一生懸命現場で地に足をついて考えて、悩んで出した、たった一つの答えなんだから。ちゃんと悩んで出した答えなら、死んだり事故ったりはしないから。失敗したっていいじゃない。必ず学びはあるから。とにかく、まずはそれを、やってみよう!
…俺はそんなふうに思います。