シェアキッチン『 c o n a t o|粉と 』インタビュー vol.3
vol. 4 2021-10-13 0
ライター 長尾芽生
菓子製造専門シェアキッチン「菓子河岸」の姉妹店として生まれたシェアキッチン「conato|粉と」のクラウドファウンディング企画の一環として、運営メンバーと菓子河岸利用者の皆さんでインスタライブを行いました。本記事はそのライブの様子をまとめたものになります。
今回は、グルテンフリーのお菓子とパンを提供している「かかしのかまど」のササヤマさんと、conatoのマネージャーである株式会社anova design 代表 宮地さんにお話を伺いました。
かかしのかまど:@kakashinokamado_glutenfree
ササヤマさんのお菓子はグルテンフリースイーツの領域を超えている!と宮地さんも絶賛。菓子河岸の初期メンバーであると共に、宮地さんが初めてマネージャーを務めた社員食堂Lab.からのお付き合い。グルテンフリーとの出会い、コロナ禍の苦労、そしてこれからの野望についてたくさんお伺いしました。
あんバター×わさび?!噂のバターサンド
――新しい種類のバターサンドが出るのを心待ちにしているファンが多いということですが、今作っているのはどんなバターサンドなんですか?
ササヤマ:モンブランクリームと栗をココアクッキーでサンドしたモンブランバターサンドです。大粒の栗を入れ、甘さを控えて栗自体の甘さが感じられるように工夫しました。
実は、普段は「あんバター×わさび」「パイナップル×酒粕×山椒」というひねった組み合わせを作ったりしています。
――驚!!でもすごく気になる!アイディアと形にするまでの過程は?
ササヤマ:アイディアは食べ歩きですかね。小麦で作られているものは、味だけ参考にして米粉で作ってみて、自分自身で人体実験して影響ができないかを確かめます。作り始めると早くて、2週間くらい。
モンブランバターサンドは栗の粒の有り無しなど6パターンくらい作りました。周りの人に食べてもらって、もうちょっと増やした方がいいとか、冷やしたほうがいいとか意見を聞きながら試作しています。
グルテンフリーとの出会い
ササヤマ:体調不良が少し続きまして、主に悩んだのは立ちくらみ。脳神経外科、循環器内科とか回りましたが、原因が分からなくて…。知人から、もしかしてアレルギーじゃないの?と。試しに検査したら、どうもグルテンが身体に合わないらしい。
小麦粉を辞めたらまず4日で体調が良くなって、悩んでいた湿疹も出なくなりました。1ヶ月後には凹んでいた爪が丸くカーブして貧血が改善して、いいリズムになったんです。
――ひとつひとつは小さな問題ですけど、同じ悩みを持つ方はいますよね。
ササヤマ:この生活を続けてみようかなと思ったときに、周りを見るとグルテンフリーの食品で食べたいものがなかった。マルチアレルギーをカバーするために、約28種類もの食材を制限する仕様のものもあって、全然おいしくないんですよ。小麦だけを制限して、自分でも美味しいと思えるものが食べたくて、お菓子づくり始めました。
――小麦はもちろん、ものによっては乳製品も使っていないんですよね?
ササヤマ:乳製品を使わなくてもおいしくできるときは使わないようにします。バターは体に負担がかかるのでグラスフェッドバター(広大な牧草地でストレスなく育った乳牛から作られたバター)を使うようにしています。
宮地:今は、グルテンフリーのお菓子がいっぱい出てきてると思うんですけど、当時はまだ米粉のパンってなんかもさもさして固い、クッキーもパサパサして食べにくいというイメージが強かった。そんな中、ササヤマさんはとにかく自分が食べられる最高においしいものを作りたいという想いが強かった!
バターサンドの種類がどんどん増えていくのも、単純に既存の小麦粉を使ったお菓子の真似ではなくて、グルテンフリーのお菓子として新しく、おいしいものを考えて実践していますよね。かかしのかまどの米粉スイーツはただのグルテンフリースイーツじゃないなと思っています。
とにかくこういう場所があったのが嬉しかった
――宮地さんが初めてマネージャーを務めた社員食堂Lab.の利用メンバーさんがササヤマさんですよね。
宮地:最初に僕がマネージャーをやっていた社員食堂Lab.は元々コミュニティキッチンで食を中心としたシェアスペースでした。利用いただける方の幅を広げるために菓子製造許可をとって、メンバーを募集したところ、予想以上に反響がありました。
ササヤマ:ネットで「菓子製造許可 レンタルキッチン」で調べたら社員食堂Lab.を見つけて、とにかくその場所があったのが嬉しくて、とりあえず貸してください!と。笑
料理教室からスタートしたんですが、最初は人が集まらなくて苦労しました。その後、少しずつ人が増えて、教室の場所を浅草橋の基地キッチンに移動したり、今の菓子河岸に移動したりしても皆さんがついてきてくれて…。本当に社員食堂Lab.で出会った方達のおかげで今支えられています。
宮地:社員食堂Lab.での初めてのお菓子作りメンバーは、糖質オフスコーンを作っていて、今は埼玉県川越にご自身でスペースを作っている森さんでした。その次がササヤマさん。森さんは、知人の方が糖質制限になってしまって、その方のために糖質オフのスコーンを開発したというのがきっかけでした。
最初に僕が出会ったお二人とも、自分じゃなきゃ出来ないことをしなくてはいけないから、その場所(菓子製造許可付きシェアキッチン)が必要なんだということをすごく感じました。シェアキッチンを利用するメンバーに共通することかもしれません。
そういうことが、すごい印象として残っていて、その後、菓子製造メンバーがすごく増えてきたので、浅草橋、人形町、清澄白河と少しずつアップデートして場所をつくっていきました。
メンバーと共に成長する場でありたい
――当初に比べて場所も機材もかなり充実してきたとお伺いしました。
ササヤマ:持ち運びをするものがかなり多くなるので、それを少しずつ置いておけるロッカーを用意してくれたのが助かりました。社員食堂Lab.は階段で3階まであがるのが大変だったんですけど、路面店やエレベーター付きの物件になると機材や材料を運びながらの移動が楽になって嬉しいです。あと、宮地さんが色々買ってくれます。笑
宮地さん: 笑
僕はお菓子の専門家ではないので、ササヤマさん含め利用者の皆さんにどういうものが必要ですか?と聞いているんです。メンバーの皆さんの活動の幅が広がるものに関しては、誰か1人から要望が出たら、こういうものだったらみんなで使えますかねと他のメンバーとも相談して購入するようにしています。
ササヤマ:新型コロナの感染拡大の影響で、集まることができなくなったのでお菓子作り教室の運営が難しくなりました。そのタイミングで(菓子河岸では)路面店での販売ができたのが本当に助かりました。
菓子河岸に移動したからこそ、続けられているなと思います。私はオンラインレッスンが得意ではないので、対面レッスンしか収入源がなかったら、今はやめていたかもしれないですね。それくらい当時は追い込まれていました。
いろんな思いを抱えている方がいらっしゃると思うんですけど、どうしようかなと悩んでいる方は、ぜひ飛び込んでやってみて頂ければと思います。
お菓子のオンラインマーケットを作りたい
――かかしのかまどのHPは、宮地さんが昨年立ち上げたシェアキッチンメンバーを対象としたHP制作サービスで初めて制作したHPだとお伺いしました。
宮地:今まで、メンバーさんからECサイトの立ち上げが大変だという話をよく聞いていました。今はBASEやminneなど、自分の販売サイトを0円で作成できるECサイトプラットフォームで、お菓子を売ることが一般化してきました。
ただウェブサイトを作ってもそのサイトを知ってもらって、アクセスしてもらって、さらに購入してもらうのは、ものすごいハードルが高いんですよね。
僕としては、やっぱりおいしいお菓子を作ることに専念して欲しい。その良さをどうやって伝えられるかとか、ECサイトのマーケティング、SNSを運用してのサイト誘導などは、ウェブサイトの製作・運営チームと組んでサポートできるサービスを昨年から始めています。
かかしのかまどのウェブサイトを見てもらうとわかる通り、米粉のスイーツとは?ではなくて、かかしのかまどのお菓子とは?そもそもなぜ作っているのか?という部分をしっかり伝えられるような構成にしています。
――各メンバーのサイトが集うお菓子のマーケットサイトを立ち上げる計画もあるんですよね?
宮地: ECサイトを立ち上げたけど、なかなか買ってもらえない、リピートしてもらえない、という課題を解決していきたいと思っています。僕が運営しているシェアキッチンが現在5箇所あり、その5箇所を利用するメンバーさんが一同に集まると30〜50店舗が集まるお菓子のマーケットプレイスが出来上がるんです。
訪れる人も楽しいし、新しく入ったメンバーも既にビューアーを確保しているプラットフォームなので集客のハードルが下がります。「今日新しく入りました!」みたいな表示で新人紹介ができたり。
お菓子だけが並んでいるんじゃなくて、どういうお菓子屋さんかというのがしっかり見られるようなウェブサイトを作っていきたいと制作チームと話しているのですが、夢が膨らみすぎて…。まだ時間はかかるかもしれませんが、僕自身ワクワクしています。楽しみにしていてください!
かかしのかまどの野望
ササヤマ:グルテンフリーと米粉の分野がかなり広がってきているので、グルテンの制限をしている方はもちろん、小麦を食べる方も、米粉のスイーツ・パンおいしいよねと思って頂けるようなものを作っていきたいです!
あとはECサイトで、全国の方から注文を頂けるようにアイディアを出しながら頑張っていきたいと思います。
混じりっけなしの甘さと情熱
バターサンドと同じく人気商品のくるみアンパン。
ローストしたくるみが生地にたくさん入っていて、小豆ときび砂糖だけで炊いたシンプルなあんこが魅力です。余計なものは一切はいっていなくて、店頭に並んだ焼きたてを熱いうちにガブっと食べるのもおすすめ。
ササヤマさんの、本当においしいものを食べたいという情熱は、他人の目や社会の目を気にせずに、ただ自分らしく生きることへのメッセージのように感じられました。
自分の気持ちにシンプルに向き合うこと。おいしいものを心から味わって食べること。
そんな気持ちを思い出させてくれるお菓子だと思います。