シェアキッチン『 c o n a t o|粉と 』インタビュー vol.1
vol. 2 2021-10-10 0
ライター 長尾芽生
conatoの外観
菓子製造専門シェアキッチン「菓子河岸」の姉妹店として生まれたシェアキッチン「conato|粉と」のクラウドファウンディング企画の一環として、運営メンバーと菓子河岸利用者の皆さんでインスタライブを行いました。本記事はそのライブの様子をまとめたものになります。
【各回の映像アーカイヴはこちら】
conato店内利用時の様子
今回は、conatoのマネージャーである株式会社anova design 代表 宮地さんと、運営チームであさくさ食たび主宰 岩瀬さんにお話を伺いました。
お二人の話を聞いていて見えてきたのは、シェアキッチンの根幹は“コミュニティ”にあるということ。ルールを守りながらコミュニティを築くための工夫や気遣い、この先のお二人の野望などを伺います。
社員食堂Lab.での出会い
日本橋にある社員食堂Lab.
私が宮地さんと知り合ったのは建築学生時代。当時から、常に自分のアイディアを言葉にして発信し、ぐいぐいと周りを巻き込んで形にしていくパワーあふれる人という印象でした。
その後、宮地さんは建築設計事務所に勤務し、独立。
自身の設計業の傍ら、日本橋にある社員食堂Lab.というシェアキッチンのマネージャーをやることに。その社員食堂Lab.のウェブサイトを制作していたのが岩瀬さんでした。
菓子河岸マネージャーの宮地さん
——お二人の出会いについて教えてください。
宮地:僕、岩瀬さんが男の人だと思ってたんです(笑)
岩瀬:えっ(笑)私は主人が転勤族なので、日本全国転々としていて東京にいないときもあって。たまたま東京にいたのが浅草橋にある「基地キッチン」を宮地さんが立ち上げるタイミングで、そのときに声をかけてもらったんですよね。
宮地:岩瀬さんは自分でもシェアキッチンをいつか立ち上げたいということだったので、志もちょうどマッチしました。
宮地:岩瀬さんはお家を自分で建てられるんですよ。笑
岩瀬:なんか色々やってみたくなっちゃって。主人の転勤先の北海道で大工の職業訓練校に通っていました。笑 でも本当に食べることが大好きなので、シェアキッチン以外にも北海道の「札幌大球」という種類のキャベツを広めるイベントや、「あさくさ食たび」というサイト運営もやっています。
ーー岩瀬さんとお会いするのはこの日が初めてでしたが、経歴を聞いて驚くことばかり!
元々は法律関係の仕事をしていたそうですが、10年間の主婦生活を経てウェブサイト制作のアルバイトを開始。それ以降WEBデザイナーとして色々な企業を見るうちに、チームワークの持つ力に気付かされ、クリエイターが作業場をシェアして活動する「シェアアトリエ」をつくることを考え始めたそうです。
“シェア”するのは場所だけじゃない?!
conatoのキッチン
——そもそも”シェアキッチン”とはなんでしょうか?
岩瀬:それこそ10年前にはシェアキッチンという呼び方はなくて、コミュニティキッチンと呼んでました。それより前にはレンタルキッチンという呼び方もありました。
宮地:シェアオフィスやシェアハウスなどが一般的になってきて、シェアキッチンという呼び方が広がっていきましたね。
運営チームの岩瀬さん
岩瀬: でも、シェアハウスには共有スペースがあったりするけど、シェアキッチンて利用時間帯もかぶっちゃいけないし、利用者同士が出会えないんですよね。そのため、基地キッチン、菓子河岸、conatoは月に1回メンバーミーティングをやっています。
宮地:どのくらいの量をつくるとどのくらい売れるかとか、お菓子に貼る表示シールの作り方とか、リアルな情報をメンバーミーティングで共有していますね。
当たり前ですけど、お菓子をつくっていたけど販売したことがない方もいるので、わからないことが聞ける環境があるというのはシェアキッチンの1番の魅力だと思います。
僕自身、社員食堂Lab.に携わったときにシェアキッチンの核となるのは“コミュニティ”だと思って、それは今も変わらずにいます。
ーー実際に菓子河岸利用メンバーのオープンチャットを見せてもらいました。他のメンバーさんの店頭販売の様子を報告したり、お菓子の製造方法や宅配方法のアドバイスをしたり...。
ただ場所を共有するのではなく、情報や、悩み、喜びなどをシェアしてお互いに高め合っていける場所、それが“シェアキッチン”なのだと思います。
少しずつこういう場所を増やしていきたい
——シェアキッチンの中には、菓子製造許可と飲食店営業許可がおりている施設と、おりていない施設があります。この2つはどういうものなんですか?
宮地:菓子製造許可がないと、お菓子をつくるのは自由だけど対外的に販売することができません。飲食店営業許可がないと、つくった料理をその場でお客さんに提供できない。
ちなみによく重飲食、軽飲食という言い方をしますが、正式な保健所の区分ではなく油をがっつり使う中華屋さんもコーヒーショップも同じ許可が必要になります。コーヒー1杯出すのにも保健所のルールのもと衛生管理をきちんとしていないと許可がもらえません。
個人事業者としてお菓子販売をしたいと思った時に、この手続きに加えて、設備機器の購入、場所の確保など、必要な費用と手間がかなりの負担になってしまうんです。
——「シェアキッチン」をインターネットで調べると、全国で約5500件ヒットしますが、その中でも菓子製造許可と飲食店営業許可を取得しているスペースはたった106件でした。
宮地:少しずつ増えてきてはいますが、まだまだ少ないと思います。ただ、僕たちも広いフロアのところをいきなり借り上げることもできない。できるところで、できる限りのことをやっていき、少しずつこういう場所を増やしていけたらと思っています。
絶対に店舗付きのシェアキッチンにしたかった
conato店内。左奥は利用者用の大型ロッカー。
——これまで菓子河岸をはじめとした複数のシェアキッチンの運営をしている中で、conatoオープンに至ったと聞きました。
宮地:これまで4つのシェアキッチンを運営してきた中での課題は2つあって、1つは店舗を併設したいということ。
菓子河岸では店舗併設型にしたことで、今まで事業者としてお菓子づくりをしていなかった人たちも場所があるだけで「まずはやってみる→地域の人がきてくれる→売上があがる→その繰り返し」みたいな感じで、それまでは知り合いやご家族につくっていたお菓子がいつの間にか全くの他人にも売れていくんですよね。
その状況を目の当たりにしてきたので、これはすごい発見でconatoも店舗併設型にしたいというのがありました。
2つ目はさっきも言った通り、ひとつのキッチンを同じ時間帯に2組使えないので、会員数が増えてくると予約がとりづらくなるという状況を解決すること。conatoではキッチンを2区画に分けて、同時に使えるようにしました。
キッチンから店内を覗く
——全てのシェアキッチンでこうできたらいいですね。
宮地:各施設、建物の構造や内装、設備などできることが限られてしまいます。ただ、その中でもこういうルールがあれば、もっとこういうことができるの、次のキッチンではこうしようとかアイディアをストックしてきました。シェアキッチンを新しくつくるときは少しでもその場所の可能性を広げられるように心がけています。
conatoの野望
岩瀬:私は食べるの専門なんですけど、本当に食べることが大好きなので、これからもメンバーの皆さんに美味しいお菓子をどんどんつくっていただけるのを楽しみにしています。自分自身の活動でも浅草で飲食店応援のためにいろいろ活動しているんですが、“食”と“デザイン”と“地域”をつないでいけたらと思っています。
宮地:さっきも2名内覧に来た方を案内したんですけど「まさに探していました!」と。笑
ここにいるシェアキッチンメンバーさん達がつくるお菓子って本当に個性的で、誰かに届けたいという想いが詰まっているので、これからもそういうお菓子に出会える場を増やしていきたいなと思います。
それと、結婚や子育てで菓子製造の現場から離れてしまったり、製菓専門学校を出たけど就職は全然関係ないところに勤めたりした人が、そんな人たちがもう1回チャレンジできる場所が増えていくことってすごく魅力的だと思うんですよね。
もちろんお菓子づくり以外でも。そういうプレイヤーが増えていくことで、その場所がある商店街や地域自体の魅力にも繋がるかなと思っています。
シェアキッチンはみんなの夢が集まる場所
お二人の語る未来には、そんな夢をもった多くの仲間への期待もこめられています。
私たちの生活に欠かせない“食”を通じて、あと一歩踏み出したい人、そんな人を応援したい人。
ぜひ一度遊びに来てみませんか?