FOOCOメンバーインタビューVol.2/osmo coffee roaster
vol. 2 2022-08-25 0
「サラリーマンから、コーヒーの道へ。やるからには、好きな場所で」
FOOCO メンバーインタビュー Vol.2/osmo coffee roaster 石山さん
「シェアキッチンを使っているのは、どんなひとで、どんなふうに活動しているんだろう」
シェアキッチンという選択肢を考えた時、まず思い浮かぶそんな疑問。
実際にFOOCOを利用しているメンバーに、シェアキッチンを使い始めたきっかけや、“シェア”ならではの良さ、これからの展望をお聞きしました。
今回お話を聞いたのは、バリスタの石山さん。シェアキッチンにはじめて出来た「コーヒースタンド」の利用第一号となるメンバーです。お店をはじめてまだ日が浅いものの、シェアキッチンのメンバーにも、阿佐ヶ谷の街にも、すっと溶け込んでいる姿が印象的。
「口下手なので、きちんとお話できなかったらすみません」と言いながら、コーヒーへの想いを丁寧に語ってくれた。
文・写真=炭田友望、写真=宮地洋
【お話を聞いたひと】 osmo coffee roaster(オスモコーヒーロースター)/石山さん https://www.instagram.com/osmocoffee/ しみじみと浸透していくような、やさしい味わいのコーヒー店。毎日でも飲み飽きない“デイリーな味”を意識して焙煎・抽出しているというコーヒーは、豆の個性を感じながらもするすると体中に染み渡るおいしさ。スペシャルティコーヒーだからといって構えず飲める、まさに毎日に寄り添う味。 |
■「なにか特別なものが入ってるんですか?」
思わず聞いてしまう、味との出逢い。
『FOOCO』が迎え入れる、はじめてのバリスタとなる石山さん。まずは、コーヒーを好きになったきっかけをたずねてみました。
「もともと、コーヒーを淹れて飲む家で育ったんです。こうして話を聞かれるまで、特に意識したことがないくらい身近な存在で。それもあって、学生時代からよくカフェや純喫茶巡りをしていました。その時は、どちらかと言えばコーヒーより雰囲気を楽しむ方がメインでしたね」
そう振り返る、石山さん。当たり前の存在だったコーヒーにのめり込むきっかけは、なんだったのだろう。
「五年前、地元である北海道に帰った時に新しくできたコーヒー屋さんに行ったんです。そこで飲んだ、浅煎りの水出しコーヒーに衝撃を受けて。『これ、なにか特別なものが入ってるんですか?』と聞いてしまうくらい、それまでに飲んだコーヒーとは全く違う味でした」
その時は、ブランデーが入っていると思ったそう。
「洋酒のような、飲んだ瞬間に鼻からフワッと抜けていく味が、まさかコーヒーだけとは思わなくて……(笑)。それから都内にある浅めの焙煎をしているロースターを回って飲むようになり、その味わいを引き出してみたくなり、自分でも焙煎や抽出をするようになりました」
こうしてコーヒーの世界に引き込まれていったそうですが、その時は就職のために上京してきたばかり。「ごくふつうのサラリーマンでした」と、照れくさそうに笑う。
だが、サラリーマンをしつつも“衝撃の味”が忘れられない石山さんはやがて、会社には内緒で《osmo coffee roaster》をはじめる。
「でも《osmo coffee roaster》をはじめたことで、コーヒーを毎日淹れたい気持ちが大きくなって、会社は四年勤めて辞めました。それからはコーヒー店で働きながら、ポップアップやイベント、ECサイトでの焙煎豆の販売などを通して自分の活動にも力を入れています」
落ち着いたトーンで話す石山さんだが、不安はあったはずだ。それでもサラリーマン時代に《osmo coffee roaster》をはじめたことで、自分の進みたい道が明確になったという。
『FOOCO』の利用を悩んでいるひとは、石山さんのように“まずははじめる”ことで、見えてくる道があるかもしれません。
■街歩きで偶然見つけた『FOOCO』の存在。
はじめて作る「コーヒースタンド」には、どんなひとが来るのか。ドキドキしながらオープンを控えていた『FOOCO』に、はじめて声を掛けてくれたのが石山さんでした。
「阿佐ヶ谷が好きで、古着屋の『cana』や古本屋の『コンコ堂』に行ったり、スターロードでお酒を飲んだり、よく来ていた街だったんです。散歩していたら偶然『FOOCO』を見つけて、ご連絡しました」
その時はまだオープン前。なんと、シャッターの「シェアコーヒースタンド」という文字と、InstagramのQRコードを頼りに連絡をくださったのだ。
▲誰も営業していない時は、閉まっているシャッター。近付くと「シェアコーヒースタンド」の文字が。
「阿佐ヶ谷の街の雰囲気や、周りのお店が好きだったので、出逢えてラッキーでした。どこでもいいからやりたいわけではなく、やはり雰囲気を大切にしたかったので」
石山さんをはじめ、内覧会に足を運んでくださったバリスタの方たちは、口を揃えて「シェアコーヒースタンドは中々ない」と言う。
いま『FOOCO』の存在に気付いた方は、チャンスだと思って是非声を掛けてほしい。「コーヒーを淹れるスペースも広すぎず、はじめてやるにもちょうどいいですよ」とやさしく笑う石山さんと共に、お待ちしています。
■「コーヒーでアートをやりたい訳じゃないんです」
じわじわ広がる、osmo coffee roasterの魅力。
石山さんがコーヒーに目覚めたきっかけが浅煎りのコーヒーだったこともあり、《osmo coffee roaster》もやさしく染みわたるような味わいが特長。改めてその想いを伺ってみたところ「事前に質問をいただいていたので、考えてきました」と、メモを見ながら語ってくれた。
「しみじみとおいしいと思ってもらえるような、やさしい味わいを意識して焙煎と抽出をしています。『豆の個性は感じられるけど、飲みやすい』というバランスを大切に、毎日でも飲みたくなるようなコーヒーを淹れています」
石山さんと話していると、たびたび出てくる『飲みやすさ』という言葉。なぜ、こだわっているのだろうか。
「自分がおいしいと思ってスペシャルティコーヒーをお出ししているんですけど、あんまり特別感を謳いたくないんです。せっかく飲んでくれたお客さんも引いてしまう気がして……。
コーヒーを、アートみたいな“わかる人だけわかる”敷居の高い存在とは思ってほしくないんです。もちろん“おいしさ”はわかりやすい方がいいけど、わかりやす過ぎるとつまらないから、そのバランスを僕がとって、飲んだ方が『これなら毎日飲みたい』と自然に思ってもらえる味が理想です」
まだ『FOOCO』での営業をはじめてひと月半だが、嬉しい出来事があったそう。
「ここで飲んだアイスコーヒーを気に入った方が、ご自分でも水出しコーヒーのキットを購入されたんです。僕のコーヒーがきっかけとなったのも嬉しいですし、週一回の営業なのにそれを知らせてくださったのも嬉しかったです」
その方は「この味を自宅でも楽しみたいから」と、豆も購入してくださったらしい。インタビューに際してメモを用意してくれたように、丁寧に向き合う石山さんの姿勢がコーヒーの味にも現れ、その魅力がじわじわと広がっているようだ。
■インタビューを終えて
『FOOCO』が考える“つながり”が生まれる様子を見聞きして、私たちにとっても嬉しいインタビューとなった。
聞けば、お客さんの半分はリピーターだそう。
接客中の石山さんを見ていると、相手の言葉を一つひとつ受け止めながら、自分の言葉で丁寧に返しており、心地よい空間ができあがっていた。
新たにどんなひとが来て、どんな空間ができあがっていくのか、ますます楽しみだ。