FOOCOメンバーインタビュー Vol.1/Petit Lavan りささん
vol. 1 2022-08-16 0
「パティシエを辞めても、お菓子は絶対に作り続けたい」
FOOCO メンバーインタビュー Vol.1/Petit Lavan りささん
「シェアキッチンを使っているのは、どんなひとで、どんなふうに活動しているんだろう」
シェアキッチンという選択肢を考えた時、まず思い浮かぶそんな疑問。
実際にFOOCOを利用しているメンバーに、シェアキッチンを使い始めたきっかけや、“シェア”ならではの良さ、これからの展望をお聞きしました。
トップバッターは、焼き菓子とアイシングクッキー《Petit Lavan》のりささん。相方のちるさんと二人で活動中です。「お菓子の写真は撮るけど、自分が撮られるのは苦手です」とはにかみながら、パティシエ時代の生活や大好きな旅のこと、海を飛び越え台湾のマルシェに出店したことなどを語ってくださいました。
文=炭田友望、写真=宮地洋
【お話を聞いたひと】 Petit Lavan(プティ ラブァン)/りささん https://www.instagram.com/petitlavan/?hl=ja 国産小麦をつかった、やさしい甘さの焼き菓子とアイシングクッキーのお店。 看板商品の「かめさんクッキー」は、そのおいしさもさることながら、ジブリ映画「となりのトトロ」を思わせるラッピングが、見るひとの心を掴む一品。一日で600匹以上焼いたこともあるんだとか。ちるりさ(ちづる&りさ)の二人組で活動中。 |
■体力が持たない、でもお菓子は絶対に作りたい。
製菓学校を卒業されてから、ずっとパティシエをされていたりささん。
「個人経営のパティスリーやレストラン、カフェなど飲食の仕事をずっとしていました。お菓子を作るのは大好きだったんですけど、とにかく体力面が厳しくて」
語り口は穏やかだが、お話を聞く限り飲食店勤務時代の生活は過酷。アルバイトから正社員になった際、残業代がつかないため給料が下がってしまったのだとか。
「その時は、飲食の世界しか知らないからそれが“ふつう”だと思ってたんです。特に冬はクリスマスとバレンタインがあるから日付が変わるまで働いて、休みもほぼなくて。上も下もどんどん辞めていくので、担当以外のお菓子はまったく作れませんでした」
この頃を「本当に何も知らなかった」と振り返る、りささん。そこから一念発起し、OLをしながらお菓子づくりを続けよう!と、勤めていたお店を辞めます。未経験の分野に飛び込む不安はなかったのでしょうか。
「派遣会社に、片っ端から登録しました。でも『事務未経験の方、大歓迎』って書いてあるのに、全然歓迎されないんですよ……(笑)。それでもお菓子は絶対に作り続ける!と思って、一年ほど飲食のアルバイトをしつつ、お菓子を作りながらOLをさせてくれる会社を探しました。今は、週四で事務、週一でお菓子づくり、週末にいろんなマルシェにお邪魔しています」
事務の仕事がなかなか見つからず、心が折れそうになった日もあったそう。それでも「私はお菓子を作る!」という熱い気持ちを持ち続けたことが、今のりささんにつながっています。
■「お菓子で旅行できたら、最高だなって」
マルシェから縁を紡ぎ、海の彼方・台湾まで。
OLをしながら、大好きなお菓子づくりをする生活を歩み始めたりささん。どのようにして、相方のちるさんと二人で活動するようになったのだろう。
聞けば、ちるさんの元・勤め先はパティスリーではなく結婚式場。得意分野が違うお二人だから一緒に活動しているのかと思いきや、そうでもないらしい。
「一緒にはじめたきっかけ、全然覚えてないんです(笑)。性格も、私と彼女は真逆で。でも好きなものが一緒で、洋服は相談したわけじゃないのにかぶっちゃう。あとは旅行が大好きなので、よく二人で出掛けてました」
《Petit Lavan》のInstagramを見ると、全国津々浦々のマルシェに出店している。東京は荻窪を中心に、池袋や練馬、板橋、渋谷に上野、日本橋に浅草橋。千葉、埼玉はもちろん、関東を飛び出し、岩手に名古屋まで。こんなところにも、お二人の旅好きが現れているのかもしれない。
「マルシェは学びも多いんです。はじめの頃は食品表示シールの書き方もわからないから、ほかの方のお菓子を見て研究して。参加されている方に別のイベントを紹介されたり、主催者の方がご挨拶に来てくださるので連絡先を交換したりして、どんどん輪が広がっていきました」
そんな《Petit Lavan》のお二人に、台湾で開催されるマルシェ出店のお誘いが。
▲《Petit Lavab》Instagramより/台湾のマルシェの様子
「相方と『行きます!』って、即答です。言葉の壁や焼き菓子の輸送のことは考えず、とにかく行ってみたくて。「お菓子で旅行できたら最高だね」と言っていたので、夢がひとつ叶った瞬間でした」
FOOCOにも『マルシェ出店サポート』がありますが、現場のことはりささんに聞くのがいちばんかもしれません。メンバーになった方は、りささんに色々とたずねてみてはいかがでしょう。きっと親切に教えてくれるはずです。
■コロナを機に、シェアキッチンへ。
四つ目の拠点となるFOOCOから、独立を目指す。
初期の頃の活動拠点はシェアキッチンではなく、りささんのおばあさまが経営していた喫茶店だったそう。
「定休日にせっせと焼いていました。おばあちゃんには感謝です。少しずつ売れるようになって、お客様が増えたタイミングで、本八幡にあるキッチン付き物件に移りました。気に入ってたんですけど、コロナになって『あ、まずいかも』って。その時相方も出産したばかりだったので、身の振り方を考えました」
▲《Petit Lavan》のロゴにいる女の子は、真っ赤な口紅で喫茶店を切り盛りしていたおばあさまがモデル。
そこで辿り着いた答えが、シェアキッチンの利用。《Petit Lavan》三つ目の拠点として、菓子河岸の姉妹店である浅草橋の『基地キッチン』を選びます。その後、販売スペースを備えた『FOOCO』へ再び移動。
「これまで二人っきりだったので、ほかにも仲間がいるのが新鮮でした。私たちは相談しながらやっているけど、一人ではじめる方にとってシェアキッチンは心強いと思います」
と、ここで、なんだか苦笑いのりささん。「実は私たち、はじめの頃は食品表示シールをぜんぶ手書きで作っていて」という、驚きの告白。原材料名や製造場所など、記載項目は多岐にわたりますが……。
「二人とも飲食しかやってこなかったから、パソコンが使えなくて。一人が書いて、一人が梱包して、腱鞘炎になりそうな日々でした。でもOLをしたことで知識もついて、今ではちゃんとパソコンで作ってます」
そう微笑む、りささん。「手書きをするひとは流石にいないと思うんですけど、シェアキッチンなら困った時に相談できる仲間がいるので安心です!」と、太鼓判を押してくれた。
最後に、今後の展望についてたずねてみた。
「一年後の独立を目指しています。事務の仕事が満期を迎えるので、そこで踏ん切りをつけたいなって。お菓子づくりを続けたい気持ちは絶対なので、次はお菓子を中心にほかの仕事でバランスを取りたいです」
パティシエからOLに転身しつつ、お菓子づくりを諦めなかったりささんなら、また自分にとって良い“バランス”を見つけられそうです。
■インタビューを終えて
なによりも驚いたのは、りささんのフットワークの軽やかさ。
背中を押されるお話ばかりで、好きなことを諦めない気持ちの大切さを実感しました。
「お菓子やコーヒーで何か……」と思っている方は、FOOCOではじめの一歩を踏み出してみませんか?
りささんのように軽やかに踏み出せば、その一歩はきっと大きな一歩となるはずです。
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