ドキュメンタリー写真家 鈴木雄介さんより応援メッセージが届きました!
vol. 9 2021-02-16 0
戦争そのものと、戦争が人々や社会に与える影響をテーマに、アフガニスタン、イラク、シリアやその周辺国で取材を続けているドキュメンタリー写真家・鈴木雄介さんから、本プロジェクトへの応援メッセージが届きました!
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シリアの平和的な民主化運動が戦争に発展してからもう10年が経ちます。
その間、僕自身も戦闘の激しいアレッポで取材をしたり、海を渡ってヨーロッパに逃げる人々を追ったりもしました。
近隣諸国では戦争で負った傷と将来に絶望する若者や家族たちをたくさん見ました。戦争の混乱に乗じて現れたISとの熾烈な戦いも、それに抵抗し続ける少数民族の悲劇的な歴史も目の当たりにしました。
資源と利権を求める大国のパワーゲームに翻弄され続ける土地の宿命的な姿に、何千年もの昔から変わらない人間の本質を見ました。
一人の写真家として、目の前にあるあまりにも大きな問題に対して自分の力の小ささを実感させられる10年でもあったように思います。
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今でもシリアのアレッポで住人の男性が言った一言を僕は忘れられません。
「何よりも、世界から自分たちの存在が忘れられるのが悲しいんだ」
厳しい状況にあっても、誰かが自分たちのことを気にかけてくれている、見てくれている。それを知るだけでも人間、不思議と希望や生きる力が湧いてきます。
人々や世界がその話題を口にしなくなった時、その物語の存在はこの世から消えてしまいます。たとえそのストーリーが今も続いていたとしてもです。
それが人々の命に関わる事だったら、彼・彼女たちはどんなに悲しい気持ちになるでしょうか。見捨てられてしまったんだと希望を失い、生きていく気力を失ってしまうかもしれません。
失うものがもうこれ以上無くなって、怒りや恨み、悲しみに支配されてしまった人間は、周りの人々を無差別に傷つける存在に変貌してしまうこともあります。
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一番大事なのは、細々とでも良いから心を寄せ続けること。
「忘れていないよ、気にかけているよ」その姿勢を見せ続けること。
直接現地を訪れられなくても、今の時代だからこそネットを使ってリモートで出来ることもあります。
気持ちを表す方法として、自分の出来る範囲で支援をサポートする。そうすれば自分の中でも、相手との関わり合いができて、興味が湧くきっかけになるかもしれません。
別に崇高な意志なんて必要ありません。自分では何の気なしにとった行動が、相手にとっては物凄い救いの手で救われた、という事はよくあります。
皆さんの気持ちを少しだけでいいから、人懐っこくて情に厚いシリアの人々のために分けてもらえたらと思います。
鈴木雄介
ドキュメンタリー写真家。戦争そのものと、戦争が人々や社会に与える影響をテーマにアフガニスタン、イラク、シリアなどやその周辺国で取材を続ける。名取洋之助写真賞、APA賞、IPA賞、ベルリンフォトビエンナーレ新人賞など国内外で受賞多数。
Instagram: @ysuzukifoto