JIM-NET シリア人スタッフ リームからのメッセージ
vol. 6 2021-02-09 0
クラウドファンディングで応援いただいている皆様、ありがとうございます!
今日は当団体のシリア人スタッフで、今回シリア現地に支援に行く予定のリーム・アッバースのメッセージをお届けします。
リームは、シリアからイラクへ難民として逃れ、難民キャンプでJIM-NETと出会い、スタッフになりました。リームが紛争下のシリアでどんな時間を過ごしていたのか、また今回のプロジェクトにどんな想いを抱いているのか… 長文となりますが、ぜひお読みいただければ幸いです。
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日本のみなさんこんにちは。リーム・アッバースといいます。27歳のシリア人です。
現在、イラクのクルド自治区アルビルに家族と暮らしており、JIM-NETのスタッフとして働いています。
私はシリア北東部カミシリの郊外の村で生まれ、11人の姉妹と1人の兄という大家族で育ちました。私には看護師になるという夢があり、そのために勉強を頑張っていました。
▼幼い頃の貴重な写真。赤い服を着ているのがリーム。
しかし大切な高校の期末試験の時期の直前、ちょうどダラアとダマスカス市内で民主化デモが始まり、卒業試験を終わった時には、当時家族で住んでいたダマスカスの治安がかなり悪化し、爆発事件なども多発するようになりました。兄や姉妹たちは一緒に故郷の村に帰りましたが、私はダマスカスの医学専門学校に入学する予定だったため、一人ダマスカスに残りました。
2012年、専門学校に入学してまもなく、ダマスカスだけでなくホムスとダラアでも戦闘が増していきました。電話通信が停止されたせいで家族と4ヶ月も連絡できませんでした。
そして、その年の学期末くらいから、学校に行けない程に治安が悪化しました。ダマスカス市民が数千人単位で市外への避難を開始しました。市内は交通渋滞が酷くなり、移動手段もなくなりました。
私も、学期末試験を受けるのは諦め、姉と一緒にカミシリに帰ることにしましたが、私たちもトラックの荷台に乗って、17時間かけてやっと村に帰ることができました。
故郷の村には1ヵ月ほど滞在しましたが、その後、私は再びダマスカスの学校に戻りました。
しかしダマスカスでの生活環境は悪いままで、政府軍と反政府軍の間の戦闘も日に日にも悪化していきました。市内は死臭で溢れ、ダマスカスからの道路が閉じられたために村にも帰れなくなってしまいました。
市内は混乱状態にあり、爆発音があっちこっちで聞こえていたのを覚えています。戦闘で破壊された建物や、死者、火傷をした人たちを目にし、毎日泣いていました。ただ1ヵ月も経てば死臭にも慣れてしまいます。同時に、「私もいつか爆弾で亡くなるのかな」と考えるようになりました。
私は専門学校と病院で、戦闘や爆撃で運ばれてきたたくさんの怪我人を診療しました。まだ研修中だったのですが、人手が足りないということから私も現場に入らせてもらっていたのです。
▼看護学生ながら、病院に次から次へと運ばれてくる兵士の看護にあたっていた頃。
しかし戦闘が続くと専門学校のある地区の治安も悪化し、爆発や誘拐事件も多発しました。同級生の1人と同僚2人が誘拐され、私も非常に不安になりました。
しばらく経ってから封鎖されていた道路が開放され、校長先生が手伝ってくれたお陰でダマスカスから村に帰ることができました。無事に帰れた時は嬉しさと安心感で、涙が溢れました。
しかしその安心も束の間でした。まもなく私たちの村にも反政府軍が入るようになってしまったのです。私たち家族はついに、シリアを離れ、イラクのクルド自治区に移動することを決意しました。シリアとイラクの国境では4回も入国拒否をされましたが、2013年8月15日、クルド自治区がシリア人に対して国境を開くことを決定してくれ、イラクに逃れることができました。
イラクのアルビルに到着した後は、色んなキャンプを転々としましたが、2013年末頃からダラシャクラン難民キャンプで暮らしはじめました。看護師になるために勉強していた経験を活かして、キャンプにある医療センターでユニセフのボランティアとしても働きはじめました。そこで、支援に入っていたJIM-NETと出会いました。大学も卒業してないし英語も下手な私を、JIM-NETは雇ってくれたことがとても嬉しかったです。この仕事を得たおかげで、難民キャンプに暮らしている同胞たちを支援できるようになりました。
▼JIM-NET入職直後のリーム
JIM-NETでは2016年から、シリア国内の避難民支援活動も始めました。シリアを離れて以来一度も帰れていなかった国内の支援活動に参加するのは、夢が叶ったような嬉しい機会でした。
その一環で久しぶりにダマスカスも訪ねましたが、町中にバリケードがたくさん設置してあり、未だに混乱状態でした。生まれ育ったシリアと今回訪ねたシリアはまるで別の場所でしたが、街中に香るジャスミンが当時の生活を思い出させてくれました。
2019年と2020年にも、JIM-NETを通してシリア国内の支援を行いました。支援先のキャンプでの生活はもちろん大変ですが、みんなが未来への希望をもって暮らしています。子どもたちもキャンプ内で元気に遊びまわっています。
▼難民の家庭で聞き取りをするリーム
今回の支援先であるサリカニ難民キャンプで出会ったある男性が、故郷から持って来たオリーブの苗を植えて成長を見守っていました。木が毎日少しずつ成長するとともに、彼の希望が大きくなるように、そしていつか私たちの生まれ育った故郷に帰れますように、と願いを込めているそうです。
▼今回の支援先でもあるサリカニキャンプでの様子(2020年9月撮影)
ほんの少しの支援でも、大変ありがたいです。シリアを忘れないでください。私は今、シリア人として、シリアの人たちを支援できていることにとても感謝していますし、それを可能にしてくださっている日本の皆さまに、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。クラウドファンディングへのご支援、どうぞよろしくお願いいたします。
▼リームと娘のサービーン
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みなさま、ぜひ3月1日まで引き続き応援をよろしくお願いいたします!