初心
vol. 6 2021-11-18 0
先日は、花雪と開墾した田んぼの秋起こしの作業をしました。
秋起こしは、稲刈りが終わった田んぼを粗く起こし
刈り残った藁が分解されるようにする、来年の田んぼの準備です。
普段、馬のいないところで会う人との会話の中で
「何か作業するときには見てみたい」ということがあって
今回は作業の前に声をかけて一緒に体験してもらいました。
馬と一緒に息が上がる作業、泥んこになりながらも
馬の美しさに心が動き、穏やかな時間が流れます。
一緒にお酒を飲みながら、馬についての話を興味津々で聞いてくれていた友人が
馬と作業するところをぜひ見たいと言って来てくれて
ひとしきり作業を見ていたのですが
「言葉が出ない」と一言。
「馬力って何なのか、今まで知らなかった。これが馬力なのか。」
それで思い出したのです。
はじめて馬搬の作業を見たときのこと。
これは2018年5月の自分の記録です。
実際に山で働く馬と人の姿をはじめて見て私は足がすくんで震えが止まりませんでした。
地の底から湧き上がるような重低音を漏らしながら重くて大きな丸太を引きずり出す馬に
山の神の姿を見ました。
そして山の神を導く人の仕事に、圧倒されました。
一瞬一瞬を判断し道筋を選び馬を導いて、馬がそれに応える。
山から降りると、目の前にいる馬はまたいつもの姿に戻って目の前の草を夢中で食んでいて、
まるで夢から覚めたようで何度もあの時間を思い出そうとするのですが
なかなか再現することができません。
畏怖の念から身体が震える、神と人と馬が交差する特別な時間でした。
かつて馬と働くことが一般的だった時代、人はこうして馬を通して神と会い、
馬を活かし、山や土地を活かし、そしてそれにより人もまた生かされていたのだと思います。
働く馬は大切にされます。
ペットでもなく使役動物でもなく 敬意と愛情をもって大切にされます。
馬が癒しの対象になって久しいですが、腹の底から馬と関われたとき、
人は本当に健やかに満たされるのだと思います。
そうだ、そうだったよ!と嬉しくなりました。
この感覚が原点です。
そこにすっかり魅せられて私たちの馬の旅ははじまりました。
人と時間が交差して私自身もまた学び直すことができる、
新鮮さを保ちながら互いに学びを深めていくことができる、
そうやって、また次の人、次の人につながっていく。
そういう場がひつようなんだ、とあらためて思いました。
ぜひ、働く馬に、会いに来てください。
馬力を、体験してください。
それができる農場を、私たちはつくるのです。
初心に触れて、決意を新たに。