「火づくり」制作レポート(2018年12月号)
vol. 26 2018-12-02 0
皆さん、こんにちは。「火づくり」の監督の松浦です。
前回のアップデート記事から間が空いてしまい、申し訳ございません!
すっかり、朝の冷え込みが厳しくなってきましたが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか?
「火づくり」は着々と制作を進めております。毎月一回、行なっている定例会議で
チェックしている撮影上がりのカットも、ようやく60カットを超えてきました。
全部で190カットの予定なので、三分の一以上は進んでいるかな、という進捗です。
支援者の方に向けた「中間報告」でもお伝えしましたが、完成予定を、
2019年に延長させて頂くことになりました。
改めて、お待たせしたままの状況に深くお詫び致します。申し訳ございません。
逐一、こちらのアップデート記事や、SNSなどで状況のご報告をさせて頂きますので、
どうかご容赦頂きたいと思います。
・・・と、完成予定の延長などで、お詫びのご報告ばかりになってしまったので、
これからは、不定期になりますが、もう少し、読み物として、読み応えや、読む価値の
ある文章を書いていこうかな、と思います。
毎回、自分で作品制作に関わるテーマを一つ取り上げて、それについて、
アレコレ考えていることなどを書き連ねてみたいと思います。
企画立ち上げの経緯などは、クラウドファンディングのページなどで
公開しておりますので、今日はその次の段階である「シナリオ」について、
お話ししたいと思います。
●「火づくり」のシナリオについて
シナリオは2017年の1月に書き終えました。
すでに「あらすじ」等で書いている通り、「火づくり」は、
「主人公の少年が他界した父の遺品から鋏を見つけ、壊れてしまっている
その鋏を直してもらうために、鋏鍛治の職人に会いに行く」
というものです。
シナリオやストーリーテリングに関しては、僕自身、完全に独学ですが、
確か、何かの本で読んだ、こんな考え方があったのを覚えていて、今回はそれを実践しています。
「全ての物語はA→Bという流れか、A→B→Aという流れしかない」というものです。
つまり、「A」という状態が、「B」という状態に変化・移行する。
もしくは、「A」が「B」になって、再び、「A」に戻ってくる、というものです。
これを知った時、「ああ、なるほどー、、、確かにそれも一理ありそうだなぁ」と
思ったんですね。
どちらに優劣があるわけではなく、男と女、みたいな性質の話です。
A→Bのパターンを(1)として、A→B→Aのパターンを(2)とすると、
「火づくり」は(2)のパターンですね。
主人公が自分の住んでいる街から出て、佐助さんに会いに行き、また自分の
住む街へ戻ってくる、という流れです。
一方で、この考え方は、もう一つ、異なる視点から、捉えることができます。
「物理的な行動や現象」として捉えれば、「火づくり」はパターン(2)に
該当しますが、「感情や精神」として捉えると、パターン(1)に該当します。
つまり、この考え方は、「登場人物の内面世界」と「登場人物の外面世界」の
二つを区分けして捉える必要があります。
「メンタル」と「フィジカル」と対比しても分かりやすいと思います。
「フィジカル」としての行動・現象としては、パターン(2)に該当しますが、
「メンタル」の視点で言えば、「火づくり」の主人公は、パターン(1)の変化を遂げます。
つまり「父との関係がうまくいっていない」状態(A)から「関係性が改善される」(B)
というものです。
・・・と、こんな風に、作品を構造的に分析しながら、シナリオを作っていきました。
それと、大学の卒業制作の作品は、遊牧民を題材にしたお話だったのですが、
「フィジカル要素」としては、ずっと同じ景色(世界)の中を移動していくだけ
だったので、人物が「移動」していくことで、周りの世界(背景)が「変化」していく様子を、
描いてみたかった、というのも、シナリオの構成に大きな影響を与えました。
描く要素や世界が増える分、当然、アニメーションの作業量としては、増大していきますが、
大胆な「移動」に伴う空間の「変化」は、一度、挑戦してみたいアプローチでもあったので、
思い切ってそちらに踏み込んだ、という感じです。
・・・と、今回はこの辺で!
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
またメイキングや裏話的なエピソードがあれば、お披露目していきたいと思います。
今後とも、短編アニメーション「火づくり」を、どうぞよろしくお願い致します!
「火づくり」監督/松浦直紀