「DryDryTry」MV公開しました!
vol. 19 2017-11-18 0
こんにちは。監督の松浦です。
11月15日より、youtubeで作品のテーマ音楽であるUQiYOさんの「DryDryTry」のミュージックビデオ(MV)の公開を開始しました。皆さん、ご覧になって頂けましたでしょうか?
こちらのURLから視聴できますので、是非ともご覧になってください!
このMVの完成に至るまでは、本当に語り尽くせないエピソードがたくさんあるのですが、今回は、僕が映像の演出面で考えていたことなどを少しお話ししようかな、と思います。
MVの「あるべき役割」としては、「映像の力で音楽の魅力をより引き立てる」ことに始まり、その中には音楽アーティストの存在感を全面に打ち出したものもあれば、CGやイラストのグラフィックスをたっぷり使い、刺激的な視覚体験を与えるものなど、様々です。
「火づくり」という作品と、UQiYOさんの関係は、僕から楽曲制作の依頼をさせてもらったことを発端にしていますが、単純に「映像につける音楽を作ってもらった」ということに止まりません。
もっともっと深い部分の価値観や、世界観、更に大げさに言えば「これから先の地球の未来で、どんな風に生きていくのか」といった生命観みたいな部分まで、僕はUQiYOさんが発信するメッセージを通じて、日々、共鳴をしていました。それは「火づくり」というアニメーションの世界観にも通じるものです。
MV制作初期のイメージコンテ(2017年8月)
そうして産まれた「DryDryTry」という音楽は、「とあるアニメーション作品用に作られた、とある楽曲」という意味づけを超えて、僕自身や、作品の世界観に、鋭く、深く、絶え間なく、温かいエネルギーを与え続けてくれました。
アニメーションの世界に流れる時間と空間に、より身体的な実感のある「手ざわり」のようなものを、UQiYOさんの音楽は、僕に与えてくれたのです。
そのような感覚を抱いていたので、このMVは単純に「視聴者の消費行動を促すだけのようなものにするのは勿体無い」と思っていました。
実現可能な映像の内容を日々模索していく過程、5分のMVの中で、主人公の少年が抱いている感情を感じてもらい、「鋏鍛治の職人がいる異国の地へ行く」というあらすじを紹介しつつ、本編へ向けた作品の紹介にもなればいいな、、、と、なんとも欲張りな企画意図が出来上がり(笑)今回のような映像になりました。
なので、主人公以外の人物の存在はなるべく感じないようにして(本編では色んな人物が登場します!)、ラストシーンで登場する佐助さんの印象を際立たせたいと考えていました。
タイトルにも掲げているように、「火」を象徴的なモチーフとして扱っています。それは「命」を表す火だったり、情熱や欲望を表す火だったり、、、そして主人公が見失ってしまっている「自分自身の存在」という意味の火だったりします。
佐助さんが灯す火に照らされて、凍っていた氷がゆっくり溶けるように、主人公の心にも、少しずつ温かい気持ちが生まれて、そっと微笑むようなカットをラストの方に持ってきています。
MVの絵コンテの一部(2017年9月)
それと、意識していたのは、世界観の中で描く「物体のスケール感」です。前半で登場する、都市を浮遊する機械の船は、主人公が住む世界では日常的に目にするものです。
「空中に浮かんでいて触ることができないもの」と対比して、「小さな箱に入った鋏」を描いています。鋏の方は、自分の手で持つことができる距離感にあり、大きさは、船よりもずっと小さい。
どちらが良いとか悪い、ではなく、主人公である彼の身体感覚を通じて、作品の世界観を、見ている人にも感じて欲しいな、と思い、このようなモチーフを配置しました。
加えて、主人公が住む街と、佐助さんが住む街も、大きく異なる意図で構築されています。前者は「重力コントロールされた機械製の多層都市」で後者は「風力発電による自然の地理を生かした港町」です。こういった都市の構築の仕方からも「そこに住む人たち」がどんなことを考えて、世界を認識し、日々の暮らしを送っているかを表現できる、というのが、アニメーション制作の醍醐味でもあります。実写でやろうとしたら大規模なセットを作らないといけませんし、CGで作ろうとしても莫大な予算が必要になります・・・(笑)
アニメーションが実写やCGと比べて安価に作れる、という意味ではなく、「手で描くことができれば、人に見せることが可能」という利点を最大限に活かせる、ということが、やっぱり強味なんですね。(そして「火づくり」はキャラクターの作画も、背景の美術も、カット毎の撮影も、僕が信頼できる最高の仲間たちが一生懸命に作り上げてくれました・・・泣 みんな本当にありがとう)
アニメーションと実写の相違点をここで論じると、また長くなってしまうので、多くは語りませんが、僕がアニメーションに惹かれ続けているのは、やっぱり「頭のイメージをそのまま映像として絵にできる」という部分が大きいと思っています。
そして、そこに「感情」や「物語」を投影できるので、作っていて本当に飽きることがありません(笑)
そんな感じのことを日々、考え、感じながら、「火づくり」の制作は進んでおります。今回のMVは僕にとって大きなターニングポイントになりました。ここから、本編の完成に向けて、スタッフ一同、より強固な結束力で、制作に邁進したいと思います。
支援者の方々にプレゼントするMVのDL映像は、現在準備中ですので少々お待ちください!(今月末までに再度、お知らせをお送り致します)
今後とも、皆さんのご声援、よろしくお願い致します!
最後までお読み頂き、どうもありがとうございました。
「火づくり」監督/松浦直紀