「所作台」ということばについて。
vol. 8 2024-06-02 0
詳しい先輩の方から「それは所作台ではなくて平台ではないですか?」というご質問と「もしそれをあえて所作台と呼ぶのであればコメントが必要なのでは?」というコメントを頂いておりましたので、こちらにあらためてなぜ今回「所作台」という言葉を選んだのかについて、私の方からご説明しておきたいと思います。
(念のため、先日Xにていただいていたコメントがこちらです。)
https://x.com/thinkhand/status/1792386932179357990
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たしかに今回私たちが製作しているものは平台とも呼べると思います。
今回製作したものは会場に合わせて設計したもので、舞台で広く使われているいわゆる定型の平台とは厚みや使用している木材が異なることから、単に「平台」と呼ぶことについての違和感がすこし私の中にありました。
また第一に俳優がこの場所で演技のために裸足で舞台上に立てるようにするということが最も大きな目的だったことから、単に「平台」というよりも「所作台」という名称を用いることがより望ましいかなと考えました。
たまたま利賀の野外舞台でも舞台面の床のことを「平台」とは呼ばずに「所作台」と呼んでいるのを聞いたことがあって「いいなぁ」と思ったこともあり、そこからも多分に影響を受けました(こちらもやはり定型の平台とは厚みや使われている木材、設計が多少異なります)。
単なる床に敷く板、というよりもむしろ積極的に舞台に立つ俳優の演技を後押しする舞台機構として、「平台」よりも「所作台」の方がより正しくイメージを伝えてくれるような気がしたからです。
たとえばこうしたシーンも、コンクリートの上ではなかなかできません。
Photo by Mikio Kitahara
塗装に関しまして、今回DIYでウッドデッキなどに使用するキシラデコールという塗料を使用しており、通常の舞台用の塗料よりも耐久性と防腐効果が期待できるようになっています。これは野外での長期間にわたる使用を想定して、舞台監督の斎藤さんが様々な塗料の中から検討してくれたものです。
(所作台使用の)料金設定に関しまして、今回私たちがこのような形で製作費を調達していますが、以降もし使いたい団体さんがいらした場合には無料でお使いいただけます。保管場所につきましても関係各所のご協力のもと「使いたい団体の方がいつでもすぐに取りに行ける場所」に保管できることになりました。保管や使用に関して、利用を希望する団体の方へそれほど大きなコストはかかりません。
貴重品の保管、運搬などで車両の調達(レンタカー)は必要になるかなと思いますが、たとえば戸山公園野外演劇祭の場合、照明用の高性能のポータブル電源などを無料で貸してもらうことができます。舞台用の照明機材ではなく、ホームセンターで買うことのできる作業灯や市販の電球などでも十分に演劇的な効果を上げることができます(ということを実際にご覧いただき、観に来て下さった方々とシェアをできるような上演形態、バックステージツアーを今回試みてみました)。
通常の劇場での公演でかかる劇場費や機材費、電気代と比べてもはるかにローコストで、実験的な演劇を上演できる、というのがこれから戸山公園で野外演劇を上演しようとするときの特徴になるかなと思います。
一般にご想像いただいているよりもはるかにローコストで野外劇が上演できるのだということを、(特に若い世代の方々に向けて)実際上演をご覧いただいた上で、バックステージツアーでも直接お伝えしたかったというのが私たちの今回の公演のひとつの目的でもありました。
また今回新たに野外劇用の客席も製作し、これもこれから上演を希望するすべての団体の方に自由に使っていただけるようにいたしました。数十席から100席弱の仮設の客席を、広場の斜面に置くだけで展開できるようになりました。これに関しても使用や保管に際して利用を希望する団体の方で一切のコストはかかりません。
もしよろしければ、どなた様もぜひ一度戸山公園にいらしてください。
実際に場所や機構を見てみていただき、もっとよくできるところがありましたらアイディアをいただければ幸いです。
コメントありがとうございました!どうぞよろしくお願いいたします。
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以上のような理由から、今回私たちは平台ではなく「所作台」という言葉を選びました。
戸山公園という場所柄、日本の方だけでなく海外の方も多く行き交う場所でもあります。
そうしたときに単に言葉だけではなくて、俳優やパフォーマーの身体がより多くを語ることができるように、この所作台がきっと役に立ってくれると考えています。
今回の挑戦も、残り6日となりました。
目標達成まであとほんの一息です。
最後まで応援よろしくお願いいたします!
平泳ぎ本店 主宰
松本一歩