智頭町フィールドワークのご報告(Cheeseチーム)その1
vol. 14 2021-12-10 0
「智頭町の美味しさと笑顔と智慧を明日へつなごう!つくろう!つながろう!プロジェクト」コレクターの皆さま
皆さまからいただいた応援額を活用して、2021年11月に、智頭町でのフィールドワークのため、学生2名が現地を訪問いたしました。応援額は現地までの旅費および現地での活動費に使わせていただきました。応援していただきましたこと、心より御礼申し上げます。訪問した学生が作成したレポートを掲載させていただきます。
智頭町フィールドワーク報告書~Cheeseチーム~(1/2)
1.調査目的
活動でPRしていく智頭町の林業が持つ魅力を現地で体験し、肌で感じること
2.訪問日程
〇1日目(2021年11月6日)
10:31 智頭駅 着
10:45~13:30 智頭宿散策
13:40~14:00 楽之(ランチ)
14:30~16:30 クレコ・ラボ智頭研究所
16:35~18:00 旧山形小学校
18:30~ 楽之(夕食+宿泊)
〇2日目(2021年11月7日)
9:00~11:30 株式会社皐月屋
13:00~14:00 タルマーリー(ランチ)
14:10~15:45 智頭町内自然散策(芦津渓など)
16:00~17:30 株式会社サカモト
17:50~18:30 智頭町観光協会(お土産購入など)
19:08 智頭駅 発
3.訪問先の活動報告
〇智頭宿
西河克己映画記念館の投影機
梶屋(諏訪酒造)の入口と杉玉
石谷家住宅の庭園
ガイドさんに案内していただきながら智頭宿全体を散策しました。主に立ち寄った場所は西河克己映画記念館、梶屋(諏訪酒造)、石谷家住宅の3カ所です。また、散策した日にはハイカラ市という大正ロマンをテーマにしたイベントが開催されていて、ワークショップや着物の着付けなどが行われていました。今年は新型コロナウィルスの影響で内容が一部変更されていましたが、例年はたくさんのレトロカーの展示や出店が行われて多くの人でにぎわうそうです。智頭宿内の建物の壁にはそうした楽しそうな様子の写真が貼られていました。
西河克己映画記念館は、智頭町が買い取り国登録有形文化財とした建物の活用として、智頭町出身の映画監督である西河克己氏の資料が展示された観光スポットです。館内にはたくさんの昔の映画のポスターや映写機が展示されていました。また建物は現在のものにはない瓦などを使用したクラシックな雰囲気で素敵でした。
梶屋(諏訪酒造)に向かう途中、智頭の多くの家の玄関前に木でできた球体の飾りがあることに気づき、ガイドさんがそれについて説明してくださいました。その飾りは杉玉といって、針金で作った玉に杉の葉や枝を詰めて作られるそうです。そして杉玉の緑から茶色という色の変化から日本酒の熟成度合いを知ることができます。智頭町では杉玉を町興しの象徴としていて、酒屋さんを中心に多くの住民が作って飾っているそうです。梶屋(諏訪酒造)の前には智頭町内で最大サイズの杉玉があり、何本分もの杉の葉が使われているのだと聞き驚きました。お店の中にはたくさんの種類の日本酒や藍染めの商品などが売られていて、「夏子の酒」という漫画のイラストが展示されていました。今回は車を運転する予定があったので残念ながらできませんでしたが、日本酒の試飲も行っているそうです。
石谷家住宅は国の重要文化財にも指定されている近代和風建築で、建物の一部が観光用として開放され、そうでない場所では現在も家主の方が使っています。40以上ある部屋のほとんどは来客を迎えるために使われていたそうで、ここを中心として江戸時代に智頭宿は宿場町となっていました。入ってすぐにある土間は、天井がとても高くなっている吹き抜けとなっていて圧巻でした。また土間にある大黒柱の角が飛び火による火事を防止するために面取りされていることなど、建築のポイントについてもガイドさんに教えていただきました。客間として使われていた部屋はそれぞれ松、杉、桜、欅、柿と異なる種類の木材を使用していて、部屋ごとに色味や天井の模様が異なっており、やってきた客一人一人に合った部屋を提供していたそうです。おもてなしのこだわりを感じ、素材ごとの雰囲気の違いの勉強になりました。庭園は紅葉も入り混じった様々な色の木や鯉のいる池、滝のすべてが一望でき、いつまででも居たくなるようなとてもリラックスできる空間でした。
〇クレコ・ラボ智頭研究所
「木の紙」を製造するプレス機
オフィスの一部
クレコ・ラボは智頭杉をはじめとした日本各地の木材を活かした製品を作っている会社で、商品として「木のストロー」「木のマスクケース」「木の紙」などがあります。研究所の一部は旧山形小学校の教室を使っていて、とても雰囲気の良いオフィスでした。今回の訪問では木の紙、ストローを製造する工程を見学した後に作っている製品、杉やヒノキなど木の素材の特性について教えていただきました。
木の紙の製造工程では専用のプレス機や木の紙の文字の印刷機が使われていて、今年の3月に参加した智頭バーチャルツアーなどで見た、杉でできた名刺やはがきはどのようにして作られているのかが明らかになり、とても面白かったです。また使用する素材を変更したらどのように製品の仕様が変わるのかなどたくさんの質問をしたのですが、一つ一つ丁寧にお答えいただきありがたかったです。
素材の特性について、杉にはその香りにリラックス効果があるといわれていることや、ヒノキには抗菌作用があることが科学的に実証されていることなど、使う木の種類によって期待できる役割が変わってくることを知りました。実際に売っている製品や今後販売を予定している商品で使っている素材の採用理由がわかり、非常に勉強になりました。
〇旧山形小学校
智頭林業資料展示室入口
展示されている杉の断面
旧山形小学校では、主に校舎内にある智頭林業資料展示室でお話を伺いました。ここにはノコギリや連尺(切り出した木材を運ぶのに使われた肩紐)といった近現代の林業で使われる道具や智頭の林業で活躍する方々の言葉が書かれた張り紙など、林業に関係する様々な資料が展示してあります。チェーンソーを実際に持たせていただきましたが、想像していたよりもずっと重く、わずかではありますが実際に現場で木の伐採をする従事者の方の大変さを感じました。
また、スタッフの方から本物の杉の木の断面を見ながら木材について様々なことを教えていただけました。年輪の幅からその木がどのような環境で過ごし成長してきたのかがわかるということや、理想的な木材の年輪は広すぎても狭すぎてもならず幅は均一でなければならないということ、そうした木材を生産するために従事者の方が行っている作業などとても興味深いお話を聞けました。今までの生活で何気なく使っている木にも一本一本ストーリーがあるのだと知り、林業の面白さにより気づくことができました。
〇楽之
楽之の外観
薪ストーブ
夕食でいただいた鹿肉料理
宿泊した部屋
楽之では1日目にランチ、夕食をいただき、宿泊もさせていただいて大変お世話になりました。楽之は智頭町で最初にできたゲストハウスで、1階が食堂とコミュニティスペース、2階が寝泊まりをするスペースとなっています。金物屋を営んでいた古屋をリフォームして作られていて、2階へと続く階段の手すりには畑を耕すくわの木の部分が、照明器具の飾りにはその鉄の部分が使われていたりと、再利用で作られたインテリアがたくさんあり、それらを見つけるだけでも面白いです。また食堂のところには薪ストーブがあり、そこにくべるための薪を割る体験もできました。建物は全体的にきれいな木目調の落ち着く空間で、とてもリラックスして泊まることができました。
食堂では、地元の旬の食材を使ったメニューやタルマーリーのビールをはじめとしたドリンクをいただくことができます。鹿肉など普段ではあまり食べることのない食材も使われていて、その美味しさに感動しました。また夕食の際にはオーナーの竹内さんと、同じく智頭町にあるゲストハウス明日の家のオーナーである村尾さんが同席してくださったのですがお二人とも気さくな方でお話していてとても楽しかったです。1日目は一人での活動で心細さがあったのですが楽之の方々に温かく迎えていただけて来てよかったと心から思いました。普段旅行で利用するホテル以上に人の優しさに触れることができるとても魅力的な場所です。
〇株式会社皐月屋
間伐され日当たりが良好な様子
木々が密集していて日があまり差し込んでいない様子
自伐型林業を営む株式会社皐月屋の大谷さんから、智頭町における林業を肌身で体験させていただきました。集合場所に到着後はすぐには林道へと向かわずに、従業員の方々のDIYで建てられたという小屋の中で、薪ストーブを炊き、コーヒーを飲みながらゆっくり会話をしました。まるで小さなCaféのような小屋にはゆったりとした時間が流れ、心身ともに非常にリラックスした状態で大谷さんのお話を聞かせていただくことが出来ました。
小屋の中では、大谷さんが行っている地域内循環についてお話を聞かせていただきました。その例として大谷さんがビールのホップを作り、タルマーリーさんとそのホップとビールを交換する。そのようなやり取りを行っていることを聞いて、地域に根差し、資源や人が持続的に循環していく智頭の空間全体に強い魅力を感じ、人も資源も一緒に交流し、循環していくことの重要性を実感しました。
小屋で一時間ほど過ごした後、車に乗せていただき、林道へと向かいました。実際に林道を歩いた感じたのは、適度に間伐された杉林から差し込まれる日の光、少しぬかるんだ土、澄んだ空気でした。美しく管理の行き届いた林道は、歩いているだけで気持ちが落ち着くようでした。
大谷さんから未だ管理されていないエリアを見せて頂いたところ、さきほどの管理された林道とは打って変わり光がほとんど差し込んでおらず雰囲気も鬱蒼としていました。いかに山林に人の手で管理されることが重要かということが、実際に見ることで非常によくわかりました。智頭町内における杉の木は200年、400年と膨大な月日を経て佇む木も多くあり、そうした環境下で働く方との対話を通して心の中にもゆったりとしたときの流れを感じました。時間に追われ生活する毎日に、時間のゆとりの大切さを実感できるとても貴重な体験となりました。
〇タルマーリー
タルマーリーの外観
タルマーリーのパン
タルマーリーのパン
2日目のランチを食べにタルマーリーさんに行きました。訪問した日が日曜日だったこともあり、列がレジから店の外にまで行列になっていました。パンをホールで買われる方も多く、現に注文の際には売り切れてとなっているパンもありました。ランチはタルマーリーのパン食べ比べセットを注文し、店内でいただくことにしました。店の中に入っていくと左右に入り口がある廊下があり、元保育園という面影を感じました。またイートインができる部屋からはジャングルジム等の遊具が見え、懐かしさに浸りつつパンを食べました。パン自体がすごく美味しく、食べ比べのほとんどのパンをそのままで食べてしまうほど美味しかったです。
〇智頭町自然散策
川と紅葉
滝と紅葉
山と紅葉
芦津方面へと車を走らせ自然の景色を見に行きました。芦津渓谷の風景はどこを切り取っても美しく、また景色が開け、山がよく見える場所では山が紅葉していたこともあり、多くの人が車を路肩に止め景色を撮影していました。芦津渓谷の道中にはススキが生えていたり滝が流れている場所があったりと、芦津渓谷全体が美しく、車を止めて見たくなる景色が多くありました。
〇株式会社サカモト
木の皮を剥く機械
木を乾燥させる専用の機械
木を乾燥させる専用の機械
主に製材業、木材加工業を営む株式会社サカモトの坂本さんからは、主に木の加工法を学ばせていただきました。会社の敷地内に入るとかなり大きな倉庫が二棟と、車の大きさを超えるほどの木材乾燥機があり、それぞれを見学させていただきました。木材乾燥器は扉を開けると暑さと共にかなりの湿気を含んだ風が扉の隙間から出てきました。木材から出る湿気が凄く、カメラを近づけるとすぐにレンズが曇ってしまうほどでした。倉庫内では木材を切断する機械、接着する機械、スライスする機械、どれも人の背丈を優に超える機械ばかりでした。実際に木の加工手段を目にすることができる、非常に貴重な体験をさせていただきました。
見学が終わってからは事務所内で木の製品や加工法を見せていただいたり、今後のチーム活動についての相談をさせていただきました。木の加工法の一つに、木材を圧縮する事によって木材が水を通さず腐りにくくなるという加工法を教えていただきました。木は塗料を上から塗る以外に腐食を防ぐことが出来ないと考えていたため、この加工法は従来抱いていた木の製品のイメージを大きく変えることとなりました。(続く)