智頭町フィールドワークのご報告(満天星チーム)
vol. 13 2021-12-03 0
「智頭町の美味しさと笑顔と智慧を明日へつなごう!つくろう!つながろう!プロジェクト」コレクターの皆さま
皆さまからいただいた応援額を活用して、2021年10月に、智頭町でのフィールドワークのため、学生3名が現地を訪問いたしました。応援額は現地までの旅費および現地での活動費に使わせていただきました。応援していただきましたこと、心より御礼申し上げます。訪問した学生が作成したレポートを掲載させていただきます。
智頭町フィールドワーク報告書~満天星チーム~
1. 調査目的
智頭町観光マップづくりのための現地調査および画像・動画素材収集
2. 調査日程
〇1日目:2021年10月29日(金)
10:31 智頭駅着
12:00~14:30 みたき園(山菜料理ランチ)
15:00~16:30 旧山形小学校、あすなろ手芸店
16:40~17:00 恋山形駅
17:30~19:30 楽之(取材+晩御飯)
〇2日目:2021年10月30日(土)
9:30~12:00 智頭宿(観光ガイド)
12:30~14:00 タルマーリー(ランチ)
14:10~15:00 山のブラン(カフェ)
15:20~16:20 明日の家
16:30~ 観光協会(お土産など)
17:30~ 真菜板(夕食)
19:08 智頭駅発
3. 訪問先レポート
〇 みたき園
みたき園では、お食事をいただいた後に、園主さんから直接お話を伺う機会がありました。
まず、お食事に関しては、コース料理はすべて前日までの予約制であり、「桧」「杉」「竹」の三種類のコース料理が選べます。それぞれのコースの違いとしては、「桧」コースはみたき園の季節をまるごと味わうご馳走感のあるコースであり、「杉」コースは山里の恵みを堪能できるコースであり、「竹」コースは山菜を中心にしたベーシックなコースであるという違いがあります。その中で私たちは「竹」コースを選びました。具体的な料理としては、山菜の三種盛り、手作り豆腐、手搾りのおからなど、素朴な味付けのみたき園の定番料理をいただきました。きれいな水を泳いでいた山女魚は、こんがりと焼かれた串焼きの状態で提供されました。また、これらのお食事を頂く場所にも工夫が凝らされていました。みたき園では、個性ある「かずら」を始めとした食事処が設けられており、食事中は終始、森とせせらぎに囲まれた中で、気持ちのよい時間を過ごすことができました。
続いて、園主さんからのお話では、今のみたき園が観光客で溢れ、このような素晴らしい空間が出来上がった背景には、かつての智頭町長であった寺谷誠一郎さんの「想い」が原点としてあったというお話を伺いました。また、寺谷誠一郎元町長が若かりし頃、ゼロからコツコツと智頭の原風景に磨きをかけて創り上げたのが「みたき園」であり、その姿を寺谷氏の奥様である現在の園主さんが守り続けているというお話も伺いました。実際に、料理はすべて手作りであり、滝も人工で作られており、さらに食事処にはあえて団扇のみが用意されており、扇風機やエアコンといった現代設備は用意されていなかったため、隅々まで、自然や昔の原風景へのこだわりを持たれていることを実感しました。また、食後には、囲炉裏の一つに案内されたのですが、そこでは自家製のとち餅をいただきました。実物の囲炉裏で暖を取るという貴重な経験をさせていただきました。
最後に、全体を通して、「みたき園」は都会の喧騒からは完全に別の時間軸が流れている素敵な空間であると感じました。
〇 旧山形小学校
旧山形小学校では、直接お話を伺う機会はなかったのですが、私たちが自ら旧山形小学校の中を見学することで、事前に視聴したバーチャルツアーからは感じることのできなかった魅力を自らの目と肌で感じることができました。私たちが旧山形小学校から感じた一番の魅力は「懐かしさ」です。実際に小学校の中を歩く中で木の温もりを終始感じることができ、心が安らぎました。また、自らの小学生時代や児童館に通っていた頃の匂いや雰囲気が頭の中によぎりました。視覚的には、80mもある長い廊下やツヤツヤになった木目、幅の広い階段や子どもたちのかわいい作品がそのままの形で残っていたため、時間の流れを忘れ、ノスタルジックな気持ちになりました。
〇ASNARO(旧あすなろ手芸店)
あすなろ手芸店では、代表の小畑明日香さんにお話を伺う機会をいただきました。あすなろ手芸店は、エシカルマテリアル専門の手芸屋さんで、国産材を使ったウッドパーツを製造・販売しているお店です。実際に、私たちが小畑さんにいただいた名刺も、智頭の間伐林を使用したお手製のネームプレートでした。小畑さんは、最近出張に行かれる機会が多く、最近は特に忙しいとのことでした。というのも、今後は、2021年11月19日より、社名を「あすなろ手芸店」から「ASNARO」へと変更し、また、webサイトの大幅リニューアルに取り組まれるそうで、今後もさらにプロモーション活動にも力を入れていきたいとおっしゃられており、今まさにご活躍されている方であるという印象でした。今回、このような形で貴重なお話を聞くことができてとても勉強になりました。
〇 楽之
楽之では、オーナーの竹内麻紀さんに案内していただきました。楽之は、かつて金物屋を営んでいた築135年の古民家であり、もともと解体を依頼されていたところを、オーナーの竹内ご夫妻が、智頭に住む人や智頭を訪れた人など様々な人が気軽に立ち寄れる居場所にしたいと改装されたゲストハウスです。食堂やリビング、蔵など、人々が集うコミュニティスペースとなっています。ちょうど訪問した翌日からイベントが開催されるということで、準備中の蔵の様子も見させていただきました。智頭の方々は多趣味であり、その趣味を外に発信するためにイベント場所となることが多いそうです。この蔵もとても温かい雰囲気で、この場所を通じて、智頭の方々や観光客など、様々な人のつながりが生まれるのだと実感しました。食堂やリビングは、何気なく人が座りご飯を食べているテーブルをよく見てみると金物屋時代に使われていた扉であったり、箪笥の裏側に張られていた当時の張り紙をそのまま残しインテリアとして活かされていたり・・・。また、他にも入り口の扉の取っ手や照明などに、かつて金物屋であったからこそ残されている道具が使われており、細部までこだわりつつ、まるで当時の家主さんの想いを受け継いでいらっしゃるような温かさを感じました。私たちが昨年参加したバーチャルプレゼン大会で目にした鎌のランプなどを、この目で直に見ることができた際は感動しました。2階には、ドミトリータイプのベッドと、屋根裏部屋のような空間である個室がありました。年月を重ねた大きな梁と比較的新しい木の両方が用いられており、木の香りと温かさに包まれゆったりとした雰囲気が魅力的でした。
案内していただいた後、「みんなの食堂」で夕食をいただきました。ここでも地元の旬の食材を使ったメニューがあり、タルマーリーのビールを飲むこともできるそうです。竹内さんだけではなく、明日の家オーナーの村尾さん、智頭町役場の西永さんも同席してくださり、1日目の活動を振り返りました。智頭で林業をされている大谷さんなどにもお目にかかることができ、智頭の方々とたくさん対話し、智頭の魅力や智頭の人々の想いなどをより深く知るきっかけとなりました。みなさん、本当に親切で私たちを歓迎してくださっていたことがとても嬉しかったです。約束をしていないのに自然とみんなが「楽之」に集まってくる様子を見ることができ、改めて「楽之」という場所があることの魅力を実感しました。
〇 智頭宿
智頭宿全体を歩いて散策しました。ガイドさんが歩いている道中や、各スポットでもお話をたくさんしてくださいました。昔の建物や細い道が残っていて、そこで芸能人の写真撮影が行われたこともあるようです。
克巳映画記念館は、元々使われていた建物を智頭町が買い取って映画記念館として観光スポットにしたそうです。昔の映画のポスターや写真などがたくさん飾られていました。映写機もあり、あまり馴染みのないものではありましたが興味深かったです。
石谷家住宅は想像以上に広くて驚きました。敷地面積は3,000坪もあり、現在は一部に家主さんが住んでおり、他は全て見学用に解放されていました。土間は吹き抜けで天井がとても高く、炊事場やいろりは馴染みがないので新鮮でした。部屋数がとても多いので、ボタンみたいなものがあって、そこで主人がどこで呼んでいるかわかるようになっていました。玄関には繋ぎ合わせていない天然の欅の木が使ってあり、かなり貴重だそうです。木目が綺麗で手触りも良かったです。欄間は、部屋ごとにデザインが異なっていて、どれも素敵でした。特に石谷家住宅全体がデザインされたものが印象に残っています。他にも2階には小さな太鼓橋があったり、江戸時代に作られたピアノやレトロな電話があったりと貴重なものをたくさん見学できました。また、庭が広くて、とても綺麗で感動しました。たくさんの緑に囲まれ、池と小さな滝があり、庭を望む開放的な部屋で畳に座りながらゆったり会話をするのは、癒される時間でした。
ガイドさんからはたくさんのお話を聞くことができました。足が悪くなってきているとおっしゃっていましたが、求めてくれる人がいるから喜んでもらうために続けているそうです。ガイドさん手作りの木のペンダントやお土産もくださいました。智頭宿が智頭を観光地として発展させようという取り組みのスタートだったとおっしゃっていました。今はコロナ禍で観光客は少なくなってしまっているようですが、その前は道にずらっと人がたくさん並ぶくらい多くの方が訪れていたそうです。また、リピーターが多いとのことだったので、おせっかいという言葉を使っているように丁寧で親しみやすく楽しいガイドでギブ&ギブの心が反映されているからだろうと思いました。
〇 タルマーリー
タルマーリーさんは、元保育園を改装して作られており、思ったよりも広かったです。庭に遊具が置いてあったり、内装も保育園の手洗い場や教室がそのまま残っていたりして、懐かしい気分になりました。家具もテーブルごとに異なっていて、こだわりを感じました。カフェではイノシシ肉のハンバーガーを食べたのですが、イノシシの肉に臭みがなく、パンの生地もすごく柔らかくて美味しかったです。ランチの後、渡邉麻里子さんに工房を案内して頂けました。パン屋さんでも小麦を見たことがないという人がいる中で、タルマーリーでは、自家製粉をしており、製粉機がとても高さがあり大きくて驚きました。ビール工房は元給食室を活かして作られており、大きな樽や冷蔵庫などを見せていただきながら作る過程を説明して頂きました。忙しい中最後に記念撮影もして頂き、とても感謝しています。
〇 明日の家
明日の家では、オーナーの村尾朋子さんにお話を伺いながら中を案内していただきました。明日の家は、築150年の古民家をリノベーション、令和元年度にオープンした一棟貸しのゲストハウスです。山の麓にあるため、とても自然豊かで静かに過ごせる空間でした。晴れた日の夜には、ウッドデッキで横になりながら満天の星空を眺めることができるそうです。また、農業体験や、薪割り・火起こし・薪で炊く釜ご飯、田植え・稲刈り、はた織り体験、漆塗り体験など、智頭ならではの体験ができる素敵な場でもあるそうです。私たちはあいにく訪問時間が短く、かつ夕方に差しかかる時間帯であり、体験をしたり、星空を眺めたりすることはできませんでしたが、ぜひ今度はプライベートで滞在し、たっぷりと癒やしの時間を過ごしたいと感じました。部屋数も多く、玄関を入ると、代々受け継がれてきた日本刀が飾られた床の間があり、畳の香りに包まれ、どこか懐かしい気持ちになりました。また、入って右手にある和室はウッドデッキにつながっており、日当たりがとても良く、暖かい空間の中で民俗工芸や智頭の歴史に関する本にも触れることができます。京都大学を卒業した後、智頭に移住し、林業に携わりながら移動本屋をしていらっしゃる加藤翼さんの「アカゲラブックス」も、この和室の一角に置かれており、ここでも智頭の方々の素敵なつながりを感じることができました。そして、床の間を抜けた先にある大部屋では、高い天井が広がり、佐治和紙を使って作られた照明から灯されるやさしい灯りと、立派な梁が特に印象的でした。古道具やカゴを再利用した昔ながらのものも揃う立派なキッチンまで完備されており、智頭で採れた野菜やジビエなどの食材を使って料理される方も多いそうです。
約2年前に先輩方が智頭プロジェクトの一環で訪問したことがあり、その時の思い出話も伺うことができ、改めてこの機会に訪問させていただけた私たちにとって感慨深いものがありました。オーナーの村尾朋子さんは、私たちの住む横浜でWEB製作会社を姉妹で経営されており、横浜と智頭の2拠点を行き来しながら、明日の家の運営をされています。とても明るくパワフルで素敵な女性であり、今回の現地調査においてもたくさんお世話になりました。
4. フィールドワーク全体を通しての感想
私が今回の現地調査を通じて実感した智頭町の魅力は「ヒト」です。具体的には、今ある魅力的な智頭の姿を後世の人たちにも伝えるために、頭の中に抱いている素敵なアイデアを実際に行動に移し続けている魅力的な方々が大勢いるところが智頭町の魅力であると感じました。今回様々なスポットを訪問させていただいたのですが、その中で智頭の方々と直接お話させていただく機会が多々ありました。今回お話させていただいた方々が共通しておっしゃっていたことは、智頭の様々な人のアイデアが融合した上で、それらのスポットが完成しているということです。そして、今の智頭を形作ってこれられた偉人の方々に対しての尊敬の気持ちを決して忘れることなく、その上で、智頭の方々は短期的な視点ではなく、長期的な視点で智頭のことを考えていらっしゃることもわかりました。それがゆえに、私は智頭町の魅力は「ヒト」であると感じました。また、実際に智頭の方々とお話しさせていただく際に、自分が抱いている「アタリマエ」と智頭の方々が抱いている「アタリマエ」は何だろうという視点を常に抱きながら現地調査を行っていたのですが、その中で、私が現地で感じた最も印象に残っている”アタリマエ”の違いは、挨拶という観点です。智頭の方々は私たちが町中を歩いている際や買い物をする際に、「こんにちは」や「こんばんは」といって声をかけてくれることが多かったのですが、それが私にとってはとても新鮮でした。なぜなら、私は横浜に住んでいて、人とすれ違った際にそのような挨拶をかけたり、逆にかけられるといったことは経験したことがないからです。このように、今回の現地調査を通じて、実際に現地に赴き、自分の目と肌で「智頭」を体感する中で気づいた新たな発見がたくさんありました。今回の現地調査に協力してくださった智頭の方々には感謝の気持ちでいっぱいです。
今までずっと智頭に行ったことがないながら関係人口を増やすための取り組みを行っていて、実際どんな感じなのかと気になることが多かったし、難しさを感じることがありました。今回このように現地に訪問し、言葉や画像だけではわからない雰囲気や人の温かさを体感することができとても良い経験になりましたし、プロジェクトを進めるにあたってのイメージが膨らみました。山奥の方は空気が新鮮で全然違ったし、みたき園は想像以上に綺麗です。智頭はとにかく温かい人が多く、プロジェクトに協力してくださってる方々が到着早々迎え入れてくださったり、慣れない土地で不安な私たちを何かと助けてくださったりしました。一日目の夜にゆっくりお話する機会があったのですが、堅苦しい話ではなく、ラフに話してくださって、家族の話とか本当にたわいのない話もしてくださってとても楽しかったです。他にもみたき園の女将さん、観光ガイドの方、レンタカー屋の方も大変親切にしてくださいました。町全体で一体感のような雰囲気を感じ、田舎の良いところだなと思いました。本を読むだけではあまりピンと来なかったのですが、これが多分かやなんだろうなと感じています。今回現地で実感した智頭の魅力をできるだけ伝えられるようなマップを作れるよう励みます。
今回の現地調査を通じて、「人びと」と「環境」の2つに、多くの魅力があると感じました。私の中で印象的なことの一つとして、「また帰っておいで」とみたき園の女将さんが見送ってくださったことがあります。もちろん、他にも書き切れないほどのエピソードがありますが・・この言葉のように、智頭に到着したときから、違和感なく過ごすことができたこと、初めての訪問であるにもかかわらずどこか懐かしさがあるように感じたことは、すべて智頭の「人々」の温かさのおかげであり、この『温かさ』が智頭の「人びと」の魅力の一つだと感じています。また、楽之さんでご飯をいただいた際に、知り合いが自然と集まって輪ができていく光景を見させていただきました。これも、自分自身の持っている力や魅力を最大限に活かし、何かをカタチにする行動力、他者の活動を尊重し発信機会を提供し合う姿勢を持って、日々交流が行われているからこそ、生まれる『つながり』であり、智頭町の「人びと」だからこその魅力だと感じました。さらに、自然など、もとからある場所やものを最大限に活かして、細部までこだわりながら作られているんだなと感じるような場面が多くありました。このような「環境」があることももちろん魅力の一つであり、地域全体でそれらを『観光』というカタチで外へと発信していく『一体性』も智頭の「環境」の魅力だと考えています。智頭町を訪問するにあたり、計画段階から実際の現地調査まで、多くの方々からのお力添えがあって実現することができたと感じています。協力してくださった方々には本当に感謝しております。今回の現地調査で得られたことを一切無駄にせず、今後の活動に活かしていきたいと思います。