コラム09:平家正節の順番と巻通し
vol. 11 2023-09-20 0
皆様こんにちは、鈴木まどかです。
本日は、平曲の規範譜である平家正節(へいけまぶし)のお話です。
平家琵琶は早い時期から「一方(いちかた)流」と「八坂流」があり、
江戸時代の初期には「一方流」がさらに「前田流」と「波多野流」になりました。
「前田流」と「波多野流」の双方を修得していた荻野検校が
尾張藩に於いて、旋律理論や物語の構成を踏まえて譜を整備し教習順を定め、
安永五年(1776年)に「平家正節」を編纂しました。
平家正節では、平家物語の全章段を199句に分けています。
(「八坂流」とされる伝承句「訪月(つきみ)」を含めて全200句が伝承されています。)
この全章段の中から、重要な句38句を「伝授物」としました。
大小秘事5句、灌頂巻5句、読物13句、揃物5句、五句物5句、炎上物5句。
いずれも、皇族や宗教に関わることや、語りの技術を要するものです。
(八坂流訪月を加える場合は、39句が「伝授物」となります。)
※画像※平家物語の全章段一覧です。スペースの都合で2文字ずつの表示です。
「伝授物」に色をつけました。
残る161句を「平物(ひらもの)」として、語りやすい句から学び、
平物の中でも難易度の高いものが終わってから、伝授物を学ぶようにしました。
(「祇園精舎」は冒頭ですが「伝授物」しかも「小秘事」のため、
習うのは195番句めとなります。)
これによって、「平家正節」は「教習順に編纂された」「規範譜」となりました。
また「平家物語」は全十二巻構成ですが、「平物」については、
平家正節一之上:巻之一から巻之六まで、それぞれ最も易しいもの
平家正節一之下:巻之七から巻之十二まで、それぞれ最も易しいもの
平家正節二之上:巻之一から巻之六まで、それぞれ2番めに易しいもの
平家正節二之下:巻之七から巻之十二まで、それぞれ2番めに易しいもの
という教習順にしました。
※画像※平家物語の全章段です。前掲と同様、2文字ずつの表示です。
「平家正節一之上下」「平家正節二之上下」に色をつけました。
これによって、平家正節一之上下(全12句)は、
平家物語巻之一から巻之十二までを1句ずつ語る「巻通し」になりました。