寄稿者からのコメントを紹介します
vol. 3 2024-04-29 0
こんにちは。風音です。
寄稿者の一人、食用菜っぱさんがアンソロジー刊行にあたってのコメントを寄せてくれました。
食用菜っぱさんは茨城在住の大学生で、私と同じく日記zineを作っている方です。数年前にたまたま私の投稿を見かけたことから東京・下北沢の日記専門店「日記屋 月日()」さんで私の1冊目の日記zineを購入し、長野を訪れてくれました。その際に彼女の日記zineを読ませてもらい、今回の企画のアイディアが生まれました。
プロジェクトページでは私の思いを綴っていますが、参加者側の人たちがどんな気持ちで文章を書いてくれたのかご紹介したく、食用菜っぱさんのinstagramの投稿文の一部をご紹介します。
風音
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この二月、SNS、さまざまな記事、そして日記本を通して知った風音さんというひとに会ってみたくて、長野市を訪れました。
ZINEには茨城に帰ってきた夜から始まる数日分の日記(「牛乳ください。」)を寄稿しています。
タイトルは大好きな絵本のひとつ、『はじめてのおつかい』(作・筒井頼子、絵・林明子)にちなんでつけました。
この言葉がたぶん今の私にぴったりで、ほぼ迷わずにつけました。
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書いているとき、手直しをしているとき、あまりに濃密な自分の日記を前に、正直目がくらむ思いでした。心の声をスピーカーで大音量に流して聴いているみたいな。
私にとっては積み重なっていく日々のひとつでしかないもの、それが本という形になることで、何かが切り落とされたりあるはずもない意味が生じたり、あるいは、その「意味」が誰かを刺したり、するのかもしれない。それが怖くて、なかなか原稿が完成しませんでした。
踏ん切りをつけさせてくれたのは、締切の当日に風音さんから届いたメッセージでした。
「私もまだ書ききれてなくて手直ししてるんだけど、」
「いま書き上げないと違うものになってしまう……!てなってる」
「それらしい」記録にするために、日記をなめらかに加工しようとしてたのは私自身だったと気づきました。
最初に風音さんから送られてきた企画書には「今のあなたがどんな暮らしをして、何を考えているのか、今の言葉を聞いてみたいです」と書かれていて、じゃあ私の「今」は、もうこれ以上でも以下でもありえないはずなんじゃないの? そこでようやく腹を括れた気がします。
結末なんてないからこそ私は日記を好きだったはずで、「春のすこし前」の自分を残すために、この方法を選んだんだった。日ごとに書いたものからできるだけ遠ざからない形にして、原稿を提出しました。おもしろい日記になったと思っています。
たぶん私が一番楽しみにしているのは、次の春にこれを読んで何を思うのか、それを確かめることなんだと思う。混沌とした日常から逃げも隠れもできなかった過去の自分の記録を、いくら喚いてももう絶対に戻れない場所から読みつつ、過去の自分とおしゃべりすること。それって結構覚悟のいることだとも思う。「今」を直視することができなければ、残せるものなんて初めからないわけで。
その覚悟と意志を、風音さんとこのZINEに引き出してもらえた気がします。
風音さん。すばらしい本を作ってくださって、それに参加させてくださって、ありがとうございます。他の参加者のみなさんの作品を読むのも待ち切れないです。このアンソロジーがきっと私の花束になります。
より多くの方に届きますように。
どうぞよろしくお願いします。