助監督と監督 〜Vo5〜
vol. 6 2020-01-24 0
映画『僕らは春がくる前に』も残り9日!
今回は助監督(サード)との話です。
個性豊かなスタッフだったなと思い返します…。
仕事のため羽田空港に向かい、助監督の井上に電話をしました。
彼は僕の大学の3つ下の後輩で一言でいうと「闇を持った弟」です。なぜ羽田空港に井上が来たかというと撮影で貸していたカチンコを急遽返しに来てくれました。
彼は映画『僕らは春が来る前に』の助監督(サード)です。
井上と合流すると髪を散髪しスッキリとしていて、
「あけましておめでとうございます。撮影頑張ってくだせえ」と相変わらずふざけた口調でカチンコを渡してました。
「髪切ったんだ。似合ってるね」というと
「撮影頑張ってくだせえ」
「それさっきも聞いたよ」と照れ臭そうに僕の言葉を無視してボケてきました。
懐かしいな…撮影が終わってから4日しかたっていないのに遠い昔のことのようで、井上とは作業がひと段落するとUNOをしたり、よくふざけ合ったりしたことを思い出します。
初めて彼に会ったのは、僕が卒業間際の春。
ある映画製作の授業で、僕は学生のサポートという立場で参加しており、井上はその時の生徒でした。
最初の印象は控えめな大学生一年生の男の子。しかしただの一年生の男の子ではなく、4年の僕よりも映画を見ていて詳しいです。そしていざ実習になっても活発的に行動していました。
しかし、彼には欲というものがなく、監督になりたいという欲など全くありませんでした。
そしてそんな彼を僕は理解できませんでした。
11月、オムジが脚本を書いてる最中、僕とプロデューサーの川嶋はスタッフを集めを開始しました。
井上は助監督サードというポジションでお願いをし、「まあ、仕方ないっすね」と生意気に了承してくれました。
こうして井上が『僕らは春が来る前に』に合流しました。
今いるスタッフとは全員、初対面だった井上に対して大丈夫かなと心配していましたが彼は根っからの弟気質ですぐにチームに溶け込み、その必要はありませんでした。
特に川嶋は井上に甘かったです。自分の弟のように可愛がっていました。
羨ましいなあ、ずるいなと思い川嶋に「俺にも優しくしてくれ」というと
「何言ってるんですか。早く仕事してください」とあっけなく返されました。
そんな僕を見た井上がニヤケながら
「尾崎さん、ドンマイっす。落ち込まないでください。頑張りましょう」
「うん。頑張ります」
惨めになった僕でした。
↓帽子をかぶっているのが監督。その隣が井上です。
監督 尾﨑優一