『波伝谷に生きる人びと』の舞台を知る⑫~波伝谷という舞台~(終)
vol. 33 2015-02-24 0
こんばんは。プロジェクトマネージャーの野村です。
12回に及んだ「『波伝谷に生きる人びと』の舞台を知る」はいよいよ今日を残すだけです。どれだけ読んでいただいていたのかは分かりませんが、いかがでしたでしょうか。最初に見た「あらすじ」のイメージそのままでしたでしょうか、意外と違ったでしょうか。最終的にその判断は映画を観てからしていただくことになるかと思います。そこで今日は、波伝谷という舞台を描いた『波伝谷に生きる人びと』の魅力をお話してシリーズの終わりとさせていただきます。
厳しくも豊かな海と山に囲まれ、その自然を活かしたくらしの中に、部落が一体となるお獅子様をはじめ「講」や「結」といった伝統的な人と人とのつながりを維持していた波伝谷。現代社会では少なくなった濃厚な人間関係は、生きるために人と人とが協力し合わなければいけなかったかつてのくらしの残像ともいえます。
そんな波伝谷のくらしは、そこで生活する人びとにとっては当たり前のことですが、外部の人にとっては説明されないと馴染みのないことが多くあります。今回のシリーズも『波伝谷に生きる人びと』を観たお客さんの感想から、いきなり「講」や「結」が出てきて理解するまで戸惑った人たちの疑問に答える意味も込められています。読んでから映画を観てもらってもいいですし、映画を観てから読んでもらってもいいように書いたつもりです。
監督自身も映画の中でいくつかの「?」にでくわしながら、波伝谷の人たちと付き合っていくわけですが、それだけ波伝谷の人たちが独自に築いてきたくらし方や人間関係は、魅力的ながらも難しいもののようです。けれど、波伝谷の人びとはそれを当り前のくらしとして悩みや葛藤を抱えながらも続けていこうとします。それは何のことはないありふれた日常なのです。そのありのままの生活の営みを、そこに描かれる空気とともに感じていただくのが『波伝谷に生きる人びと』という映画なのかもしれません。
映画を観たお客さんの感想に「このシーンに何の意味があるんだろうと思うシーンも多かったが、生活感を感じる為には必要な要素なんだなと思って、それからはただ感じるように見ることができた。」というものがあります。『波伝谷に生きる人びと』は、その134分の時間の流れとともに、肩の力を抜いて、何かを読み取ろうと力をこめずに観ていただければ、きっとその魅力に気づいていただけることでしょう。波伝谷という舞台とそこに生きる人びとのくらしはそれだけ魅力にあふれているのです。ぜひ、その魅力と空気をスクリーンをとおして感じてみてはいかがでしょうか。