『波伝谷に生きる人びと』の舞台を知る⑨~家々を見分けるヤゴウ~
vol. 27 2015-02-18 0
こんばんは。プロジェクトマネージャーの野村です。
いよいよ『波伝谷に生きる人びと』の舞台を知るシリーズも終わりにさしかかってきました。今日は波伝谷の人が苗字に代わって部落内の家を呼ぶときに使うヤゴウ(屋号)についてご紹介します。
波伝谷には同姓の家が多く、苗字で呼ぶのでは紛らわしいことから家毎にヤゴウ(屋号)を決め、それ用いて家を呼び合うことがあります。ヤゴウはどの家でも名乗ることができ、契約講総会などで公表して周囲に知らせます。ヤゴウの決め方や由来はそれぞれですが、いくつかの例を見てみたいと思います。
①家の立地や周囲の環境に由来するもの
宮之前、一枚田、沼川、田中、下道、上、高屋敷、川向、川端、端、坂下など
②カコイなど古い地名に由来するもの
戸倉、さご沢、入平、出土平、荒屋敷、山崎、坂本など
③家業に由来するもの
米屋、下駄屋、郵便屋、搗屋など
④家屋敷の形状に由来するもの
柴屋、曲屋など
⑤新居であることを示すもの
荒敷、新屋、新家など
苗字が本分家関係など家と一族の関係を示すとすれば、ヤゴウはその中の個々の家を識別するためのものですから、立地や地名、家業などさまざまな特徴をつかんでヤゴウとされています。映画では新築祝いの時計にヤゴウを入れている事例が出てきますが、苗字よりむしろ普段慣れ親しんでいるヤゴウの方が分かりやすいこともあったのです。
(参考資料『波伝谷の民俗ー宮城県南三陸沿岸の村落における暮らしの諸相ー』)