残り30日。柳美里からのメッセージ
vol. 3 2019-05-30 0
本屋フルハウスのブックカフェ増築への応援、ありがとうございます。
クラウドファンディングの募集期間が残り30日となりました。
現在、柳美里の暮らす、福島県の地方紙「福島民報」の連載「南相馬にて」で、ブックカフェを増築する理由、その思いを綴りました。
同紙の了承を得て、柳美里のメッセージとして紹介したいと思います。
(2019年5月28日、福島民報掲載)
南相馬にて(47) 柳美里
「時めく」時間求め
いま、わたしは、クラウドファンディングで本屋「フルハウス」の増築資金を集めています。
わたしが、南相馬市小高区の中古住宅を購入して転居したのは二〇一七年七月――、東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴い南相馬市小高区に出されていた避難指示が解除されて一年が経った頃のことでした。
引っ越しの目的は、本屋を開くためです。
当初から、カフェ併設の本屋を計画していたのですが、増築するためには、既存の中古住宅の離れ部分の構造計算を行い、相双建設事務所に許可をもらえる形に改築しなければならない、という問題が発覚しました。とりあえず、自宅の二部屋(十坪)に書棚を並べて開店したのが、二〇一八年四月九日のことです。
常連客の中心は、相双地区の住民のみなさんなのですが、県内外から車や電車や飛行機を乗り継いで、フルハウスを目指して小高にやってきてくださるお客様も少なくありません。
おかげさまで、フルハウスは一周年を迎えることができました。
ようやく、フルハウスのカフェスペースの増築工事のスケジュールが見えてきたので、クラウドファンディングをスタートしたのです。
一ヶ月ほど前に、地元の設計士の橘正之さんが離れ改築のための構造計算書を相双建設事務所に提出してくださいました。そろそろ許可が下りるのではないかと関係者一同首を長くして待っているところです。橘さんからは許可が下り次第、工事に入るとご連絡いただいているため、現在フルハウスは休業しています。工事自体は二ヶ月半で完了するということなので、九月に始まる新学期にはリニューアルオープン出来ます。
設計デザインは、二〇一四年に、建設界のノーベル賞とも呼ばれているプリツカー賞を受賞し、二〇一七年にマザー・テレサ社会正義賞を日本人初受賞した坂茂さんが、無報酬で引き受けてくださいました。昨年末から「慶応義塾大学SFC坂茂研究室」の大学生たちが地元の大工さんと共に書棚製作を進めてくださっています。
福島県(特に相双地区)は、放射能による「汚染地」のレッテルを貼られ、被害者でありながら、そのレッテルを剥がすための努力を強いられています。
除染土壌等が入った黒いフレコンバッグが積まれた仮置場は、福島県内に約千三百箇所もあり、中間貯蔵施設や仮設焼却施設等への輸送に一体どれくらいの年数がかかるのかわかりません。
中間貯蔵施設の除染廃棄物は福島県外で最終処分されると発表されていますが、それがどこになるのかも決定されていません。
そして、原発の廃炉までには、四十年かかる――。
事故原発や黒いフレコンバッグは、醜いものです。
でも、人間の目は、醜いものよりも、美しいものを選択して見ます。
わたしにとって美しいものとは、自分とは異なる生き方や感じ方をしている他者と触れ合い、交わる場所、他者と出遭うことによって自分の今が「時めく」時間です。
それは、本屋、小劇場、芝居の舞台です。まずは、本屋フルハウスを完成させて、それから小劇場に取り掛かります。
クラウドファンディングは、六月二十八日に終了します。目標金額は千七百万円、現在二百四十万円集まり、百十八人の方が参加してくださっています。三千円から受け付けています。
ご協力をお願いいたします。
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5月30日現在、2,664,758円、125人の皆さんにご協力いただいています。(達成率15%)
6月9日には、東京の日比谷図書文化館でトークイベントを行い、より多くの方に本屋フルハウスのことをお伝えできればと考えております。
(SNS上の告知のみで定員に達してしまい、受け付けは終了しています。動画等含め、様々な形でレポートを予定しています)
引き続き、応援をよろしくお願いいたします。
フルハウスプロジェクト